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介護職の労働組合が活性化してきている

介護職の労働組合が活性化してきている

社会的にも意義深い仕事なのに、最悪の待遇

介護業界の大きな悩みは、介護職の待遇です。基本的に、日本の介護には税金が投入されており、介護職の給与は、間接的に、税金から支払われています。しかし、日本の社会福祉のための財源は枯渇しつつあり、介護業界に流れる税金にも限りがあります。

それにも関わらず、日本の高齢化は待ったなしで進んでいます。要介護者として、介護を必要とする高齢者も増加しています。ただでさえ足りない財源は、今後もさらに厳しくなっていくのです。

このしわ寄せが、介護職の待遇に向かってしまっています。年収ベースでは、全産業平均よりも100万円以上も安い状態にあり、毎月の手取りにすると、20万円を切るようなケースも多数あります。

以下、上場している介護サービス会社の平均年齢と平均年収を表にまとめてみます。平均年齢は40歳前後で、平均年収が400万円に届くか、届かないかというレベルです。

会社名
平均年齢
平均年収
ニチイ学館
43.7歳
341万円
ケアサービス
37.7歳
391万円
SOMPOケアメッセージ
38.7歳
373万円
ツクイ
41.8歳
403万円
シダー
42.5歳
400万円

これに対して、国家公務員の平均年収は666万5千円(平均年齢43.5歳)であり、来季からは、さらに5万円程度の年収増が決まっています。税金から給与が出ているのは同じなのに、介護業界の平均年収とは、かなりの差ができてしまっています。

デンマークなどの北欧の国々では、医療や介護の従事者の多くが公務員です。日本の介護職も、いっそ、公務員にしてしまうことも考えるべきではないでしょうか。しかし、今の日本で、介護職の公務員化についての議論が盛り上がっているイメージはありません。

介護職の労働組合結成

こうした背景を受けて、介護職が立ち上がりはじめています。介護職による労働組合の活動が、活性化しつつあるのです。以下、主に長野県のニュースを扱う信毎webの記事(2016年11月24日)より、一部引用します。

県内で介護職員が労働組合を結成し、事業者側に処遇の改善を求める動きが相次いでいる。県労連によると、2012年以降、個人加盟の組織を含め五つの労組が発足した。介護職員の労組の組織率は他産業より低いとされてきた。職員の負担感や不満が高まっていることが背景にあるとの指摘がある。

「賃金や労働条件の抜本的な改善、社会的地位の向上を目指してともに頑張ろう」。諏訪郡原村で13日に開かれた「八ケ岳ひなたぼっこ介護看護労組」の結成大会。原村と同郡富士見町でグループホームなどを運営する社会福祉法人「ひなたぼっこ」(富士見町)の正規の介護職員は約20人。うち5人が加入した。

この活動で、一つ考えておきたいのは、労働組合の交渉相手が、介護事業者になっているというところです。介護事業者の多くは、すでに経営難にあります。介護事業者の倒産件数も増えています。

労働組合が交渉しようとしても、もはや、介護事業者の多くには、お金がないというのが現実なのです。介護事業者に流れるお金の総量は、基本的に国が決めていることを考えれば、交渉相手は、国とすべきではないでしょうか。

介護業界が一つになって、介護職の公務員化を目指していくというのは、考え方としてあるでしょう。きちんと団体をつくり、国を相手として交渉を続けていけば、実現できる可能性もあると思います。

※参考文献
・信毎web, 『介護職の労組結成相次ぐ 賃金や労働条件に不満、重い負担感』, 2016年11月24日
・朝日新聞, 『国家公務員の給与引き上げを閣議決定 年収0.9%増に』, 2015年12月4日
・日経新聞, 『国家公務員、年収5万円増 改正給与法成立』, 2016年11月16日

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