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2050年まで、あと34年です。2010年と2050年を比較してみると、いろいろと恐ろしい事実が見えてきます。国土交通省の予測によれば、まず、現在人が住んでいる地域のうちの2割が、誰もいない無居住地になります。6割以上の地域の人口が、半分以下になります。人口が増えるのは、わずか2%の地域(現在の大都市)です。
34年後を考えると、かなり厳しいということが理解できるでしょう。とはいえ、34年後というのは、かなり先のことです。問題は、これが34年後ではなく、かなり近い未来になる可能性が否定できないということです。介護が、この流れを加速してしまうかもしれないのです。
介護事業者の撤退が、地域の人口減少に与えるインパクトは、まだよくわかっていません。介護業界の目線からすると、相当大きいインパクトになると考えられますが、それも杞憂(必要のない心配)かもしれません。そんな中、無視できない報道がありました。以下、信毎webの記事(2016年10月18日)より、一部引用します。
木曽地方の介護保険事業者のうち、訪問介護(ホームヘルプ)やケアプランを作る居宅介護支援から撤退、休業する事業者が相次いでいる。木曽郡6町村のうち4町村が、訪問介護は町村社会福祉協議会しか選べない状況。
介護の担い手不足や地理的に広いことが理由とみられる。人口減の中、高齢化が一足早く進み、高齢者人口が今後減少に向かう同地方。要介護者も増えないとみられ、将来の事業展開が見通せないことも一因との見方も出ている。
木曽農協の訪問介護事業所(木曽郡木曽町)は2月末で休業した。常勤者2人とパート職員で訪問介護を担っていたが、常勤1人が退職を希望し、代わりが見つからなかった。郡内6町村が対象でヘルパーの移動に時間がかかり、採算面も厳しかったという。同農協の漆平芳輝総務企画課長は「続けたいが、やむを得ない」と話す。
介護事業者の多くは、民間の営利企業です。民間の企業である限り、儲からなければ、事業の継続ができないのは当然のことです。国の財源か枯渇しつつある今、この影響が、過疎化が進む地域において、顕著になってきているようなのです。
過疎化が進んでいる地域には、もはや、若手と言えるような人が少なくなっています。それに加えて、高齢者の数も、減ってきているのです。そうしたところで、介護事業を行っても、そもそも顧客(利用者)になり得る高齢者も年々減っているため、ビジネスになりません。
こうした背景から、先の報道のように、介護サービスを提供している事業者がいなくなっています。そして、こうした介護サービスの真空地帯は、地域の人口減少を加速させる可能性があるのです。
要介護の度合いにもよりますが、高齢者の中には、介護サービスがなければ、日常生活が続けられない人も多数います。こうした人々は、介護サービスの真空状態では、生きることができません。そうなると、必要な介護サービスが存在している地域に引っ越すしか手がありません。
こうした引っ越しが増えると、その地域における高齢者の数も減ります。すると、ギリギリ存在できていた介護事業者も、その地域を撤退せざるをえません。こうした撤退は、さらにその地域における高齢者の人口を減らす圧力になります。
そもそも、民間の営利企業では担えない、公共性の高いサービスに責任を持つのが行政です。過疎化が進む地域にも自治体があり、公務員としての職員がいます。もはや、こうした職員が、介護の専門性を身につけた上で、過疎化する地域における介護を担うしかないところに来ているのではないでしょうか。
究極的には、そもそも介護というものが、民間の営利企業に担えるものなのかという問いに行き着きます。先にも述べたとおり、先の報道に見られるような人口減少は、日本全国で進んで行きます。すると、介護サービスの真空地帯が増えていきます。
これを放置しておくと、その地域は、国土交通省の予想よりも早く無居住地になっていくでしょう。無居住地には、地方自治体も存在できません。過疎化が進む地方自治体の職員が、自分たちの雇用を守るためには、おそらく、あらたに介護の専門性を獲得する必要が出てくるでしょう。
繰り返しになりますが、介護事業者の撤退が、地域の人口減少に与えるインパクトは、まだよくわかっていません。ただ、どういう角度から検討しても、このインパクトが無視できるほどに小さいようには思われないのです。
※参考文献
・国土交通省, 『新たな「国土のグランドデザイン」骨子参考資料』, 平成26年3月28日
・信毎web, 『木曽「居宅支援」撤退相次ぐ 訪問介護・ケアプラン作り』, 2016年10月18日
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