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ベーシックインカム試験導入(フィンランド)最低所得保障は月6万4千円(ニュースを考える)

ベーシックインカム試験導入(フィンランド)

フィンランドでベーシックインカム試験導入

フィンランドでベーシックインカムの試験導入が発表されました。ベーシックインカムとは、無条件で個人に給付される一定額の所得のことです。KAIGO LAB でも、このベーシックインカムについては、注目のテーマとして何度か記事にしてきています。

今回、フィンランドが導入するベーシックインカムは、労働年齢の国民から無作為に選ばれた2,000人に、月額約6万4,000円を給付するという計画です。AFPの記事(2016年8月26日付)より、以下、一部引用します。

フィンランド政府は25日、全国民に毎月一定額を支給する「ベーシック・インカム(最低所得保障)」制度を試験的に導入する方針を明らかにした。労働年齢の国民から無作為に選んだ2000人を対象に、月額560ユーロ(約6万4000円)を給付する計画だという。

政府によると給付額は、昨年5月に就任したユハ・シピラ(Juha Sipila)首相の公約に従って決定した。実業家出身のシピラ首相は、ベーシック・インカムの導入が雇用促進や社会福祉制度の簡素化につながるかどうかを検証したい考えだ。(以下省略)

世界で広がるベーシックインカムへの流れ

ベーシックインカムに関しては、ヨーロッパを中心に、世界でも多くの議論がなされています。スイスでは、今年の6月にベーシックインカムの導入の可否を問う国民投票が行われたばかりです。結果的に、反対が76.9%を占め、導入は否決されましたが、今後も導入に向けての推進派の動きは収まらないでしょう。

ベーシックインカムを導入することのメリットは、まず国民全員に、最低限度の生活を保障できることです。現在、生活保護を受給している人や、ワーキングプアと呼ばれるような人を救済することが期待できます。また、生活保護の不正受給問題についても、一律に全員に給付すれば、不公平感もなくなるでしょう。

また、ベーシックインカムの受け手としては、子供もその対象となることが多いのです。ここから、貧困による子供の教育格差も是正できることが期待されています。経済的な理由から、2人目の子供をあきらめている夫婦にとっても、救いになる制度なのです。

しかし、なかなか日本での導入への動きは見られません。厚生労働省によれば、日本で生活保護を受給している人(2015年7月現在)は約216万人です。高齢者の単独世帯での受給が増えているといいます。これは人口の約2%程度です。また、日本の完全失業率は3%前後です。

まだ、多くの人が仕事を持ち、生活がうまく回っている人が大半をしめる社会では、ベーシックインカムの必要性は感じられないのかもしれません。その点、フィンランドでは、失業率が9%を超えています。日本よりも危機感は高まっているということでしょう。

日本の社会保障行政は無駄だらけ?

日本では、社会保障に関わる行政の仕事が、縦割りの構造になっています。生活保護、年金、介護、医療、子育て、いずれもバラバラで、それぞれが独立して動いています。もちろん、個々の官僚は優秀で、一生懸命に働いています。しかし、どうしても縦割りの弊害は出てしまいます。

ベーシックインカムを導入すれば、こうした保障はすべて一本化され、行政の無駄はなくなります。ここではかなりのコストが削減できるでしょう。またベーシックインカムは一律に給付されるものなので、行政の担当者のさじ加減で支給に不公平が出ることもありません。

各家庭の収入いくらあるかなど、個人の情報を詳しく調べなければならない現状も変えることができます。こうした公平性を担保するためのコストが、ベーシックインカムには必要ありません。無駄が少なくなる分だけ、それを社会福祉の充実のほうに回すことが可能になります。

しかし、一番の問題は財源です。平均的な賃金で40年厚生年金に加入した民間の勤め人と、専業主婦の夫婦で、支給される年金の世帯合計は月に約24万円です。この額を参考に、国民一人当たり月額12万円のベーシックインカムを給付すると、年間で約180兆円が必要になります。

財務省によると、2013年の社会保障費は110兆円なので、そのままのスライドでは財源が足りません。生活水準をぐっと下げることを強いるのは現状難しいので、財源をいかに確保するかが、ベーシックインカム導入に向けた課題となります。

ベーシックインカムの導入には他にも大きな壁がたくさんあります。しかし、これが成功すれば、人間は食べるためだけに働く、という人生から解放されます。それは本当に幸せなことなのかという議論もありますが、子供や高齢者の貧困の現状を鑑みるに、そのようなことも言っていられません。

※参考文献
・AFP BB NEWS, 『月6万円強の最低所得保障、フィンランドが試験導入へ』, 2016年8月26日
・木村 富美子, 『社会保障とベーシック・インカム』, 通信教育部論集 第16号, 2013年8月

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