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介護殺人は2週間に1件起きている(NHK調査より)

介護殺人は2週間に1件起きている

介護殺人が増えているという実感

介護の負担を苦に、介護者(家族など)が、要介護者を殺害してしまうという介護殺人が、増えているように感じます。そもそも、要介護者の数が増えているので、それも当たり前のことかもしれませんが、それにしても介護殺人をニュースで聞かない日がないほどになってきているのは異常です。

そうした中、NHKスペシャル(2016年7月3日)において『私は家族を殺した”介護殺人”当事者たちの告白』という番組が放送されました。この番組では、以下4点の重要な事実が伝えられています。

(1)過去6年間で少なくとも138件の介護殺人が発生していた
(2)およそ2週間に1件の割合で介護殺人が発生しているという計算になる
(3)状況が判明している介護殺人では、その過半数が介護を始めて3年以内に発生していた
(4)4分の3がデイサービスを利用していたが、それだけでは負担は十分に軽減されなかった

ケアマネの55%が介護殺人のリスクを感じている

過去記事『「殺人や心中が起きてもおかしくない」ケアマネの55%が回答』でも取り上げていますが、日々、多数の介護現場を見ているケアマネは、介護殺人のリスクを常に感じているようです。

そもそも、日本の介護保険制度は、介護が必要な要介護者を支援する形になっており、介護をする家族などを支援することは想定していないのです。この点については、明らかに設計エラーであり、今後、早急なる介護者支援の法律整備や制度整備が求められます。

介護の現場に近いところにいると、こうした対策が求められているのは明白なのですが、なかなか実現してきません。その理由は、いったいどこにあるのでしょう。もう少し考えてみます。

自分が介護に関わっていない人には、介護は見えない

介護の辛さは、実際にそれをやっていない人からは、非常にわかりにくいものです。特に日本では、介護をしている、されているという事実は、世間でおおっぴらにすることではないという文化的な規範があるようで、さらに見えにくくなっている面もあります。

要介護者が増えてきたとはいえ、現在の要介護者の数は606万人(2014年)であり、日本の人口の5%にもなりません。この5%の人々を介護しながら支えている家族の中で、介護殺人のリスクがあるほどに深刻な状況にある人となると、さらに人数は減るでしょう。

過去6年間で138件もの介護殺人が起きているとはいえ、それも年間にすれば平均で23件です。今の日本では、年間に約1,000件~1,100件の殺人事件が起きていますが、介護殺人は、そのうちの2%程度ということになります。

介護殺人は、非常に深刻で恐ろしい問題です。しかしそれは、日本全体から見たとき、マイナーな問題ということになります。残念ですが、介護に直接関係していない人にとっては、自分の問題のようには感じられないのです。

たとえば、日本の失業率は3〜4%程度です。日本における子供の貧困も6人に1人という割合になっています。しかしこれらも、自分や自分の家族が直接経験していない人々にとっては、あまり関心のない問題になってしまうのです。

民主主義社会において、マイノリティーの問題を解決するのは難しい

介護殺人も、子供の貧困も、失業も、どれも深刻な日本の社会課題です。同時に、どれも日本全体からすると、過半数の人々にとっては直接の関係がない、マイナーな問題ということになってしまいます。

多数決を前提としている民主主義社会においては、過半数の人々の利益になる物事が優先的に処理されていきます。そうなると、介護殺人のような問題を解決するには、その問題が、過半数の人々にとってどのように関係してくるのかを「大きな声」で発信する必要が出てきます。

現代社会において「大きな声」とは、大手メディアのことです。大手メディアは、公共の電波を独占的に利用しているという責任から、本来であれば、もっとこうした、民主主義的な方法では先送りされてしまう社会課題を発信していくべきなのです。

日本の大手メディアには、いいかげん、中身のない番組を乱造して視聴率を稼ぐというところから脱却してもらわないとなりません。それができなければ、公共の電波は、入札によって、より多くの企業に解放しなければ、単なる独占禁止法違反ということになります。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『「介護殺人」 半数以上が介護始めて3年以内に発生』, 2016年7月1日
・R25, 『Nスペ「介護殺人」特集 “重すぎる内容”に絶望』, 2016年7月4日
・法務省, 『殺人事件の動向』, 法務総合研究所研究部報告50(2014年)
・厚生労働省, 『平成26年度 介護保険事業状況報告(年報)』, 平成26年度

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