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ノロウイルスが、年間で640億ドル(約7兆1,100億円)もの損失を、世界にもたらしているとする研究結果が発表されました。この論文は、米ジョンズ・ホプキンス大学の専門家らにより、米科学誌『プロスワン』に掲載されたものです。
論文によれば、世界では年間で7億人近くがノロウイルスに感染し、苦しんでいます。これは、世界の人口の約1割にもなる数(世界の10人に1人)です。このうち、年間で21万9,000人が死亡しているそうです。結果として、約42億ドル(約4,660億円)の医療費と、603億ドル(約6兆7,000億円)の社会的費用が発生していると試算されています。
ノロウイルスに感染すると、激しいおう吐や下痢を起こします。特に小さな子どもやお年寄りは脱水症状を起こして重症化したり、吐いたものをのどに詰まらせて死亡したりするおそれがあります。
現在、熊本地震で被災された方々が身を寄せている避難所では、衛生状態が悪くなっている地区もあります。そのため、ノロウイルスに感染する人が出始めているようです。特に、トイレの水を流すタイミング等での感染が増えていると考えられます。疲労やストレスから抵抗力が落ちている人も多いので、感染が広がらないよう注意が必要です。
普段の介護でも、特にトイレの処理に関しては、ノロウイルス対策が重要になります。より詳しくは、過去記事『特に汚物の処理に注意!ノロウイルスについて知ろう』を参照ください。動画紹介とともに、解説しています。
ウイルスは、もともとラテン語で「毒液」を意味する言葉です。古代ギリシアでは「病気を引きおこす毒」という意味の言葉として使われました。
ウイルスは非常に小さい構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなります。その特徴は、他の生物の細胞を利用して、自己を複製させる点です。ウイルス自体は生命の最小単位である細胞をもたないので、非生物とされることもあります。
一般的にウイルスによる感染症というと、インフルエンザや結核、肺炎などを思い浮かべるでしょう。1950年頃まで日本人の死因の第1位が結核、2位が肺炎だったので、我々にはなじみの深い病気でもあります(現在でも肺炎は日本人の死因第3位)。
インフルエンザについては、毎年のようにワクチンが作られ、予防接種を受ける意識も高くなっています。インフルエンザウイルスは、定期的に突然変異を繰り返すので、ワクチンの開発とのイタチごっこになっていますが、予防接種とともに、感染源や感染経路への対策をすれば(比較的)避けやすい感染症です。
一般にはあまり知られていませんが、研究者によっては、肥満や認知症も、ウイルスによる感染症ではないかと疑っている人もいます。それぞれ、研究成果が積み上がりつつあります。
メタボ(メタボリックシンドローム)という言葉の浸透とともに、肥満に対する意識が高まりました。肥満になると、骨や関節への負担が大きくなり、腰痛や膝痛につながり、関節障害にもつながります。介護予防にとっても、メタボは天敵なのです。
そこで、肥満にならないようにと、多くの人が運動不足や食事のとり方を気にしています。それはそれでとても大事なことです。しかし、たくさん食べてもなかなか太らない人がいることも事実です。ということは、肥満には運動と食事の他にも、何か原因がありそうだと考えられ始めたのです。
ルイジアナ州立大学による研究では、特定のウイルスに感染した動物が、肥満になることが示されました。人間でも、肥満の人の30%が、これと同種のウイルスに対する抗体を持っている(過去に感染していることを示す)のに対して、肥満でない人では10%でした。
もし、このウイルスが本当に肥満の原因の一つならば、ワクチンや、抗ウイルス剤を投与することが肥満の予防になる可能性があります。とはいえ、今のところ肥満のウイルス説はまだまだ証拠不十分で、専門家の意見としては、やはり過食を防ぎ、運動を十分することが肥満対策の中心です。
肥満以外にも、認知症(アルツハイマー病)の原因をウイルスだとする研究はたくさん報告されています。実際に、認知症の人の多くが、口唇ヘルペスのウイルスに感染しているのです。アルツハイマー病の原因が、もし、本当にヘルペスウイルスであれば、ヘルペスの抗ウイルス剤が、その予防に使える可能性も出てきます。
まだわかっていないだけで、多くの病気は、未知のウイルスが原因である可能性もあるわけです。こまめな手洗いが予防する病気というのは、私たちが考えている以上に、たくさんあるのかもしれませんね。
※参考文献
・AFP通信, 『ノロウイルスによる損失、世界で年間約7兆円』, 2016年4月27日
・公益財団法人ひと・健康・未来研究財団, 『肥満はウイルス感染による?』
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