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資格のあるなしだけでは、介護技術が優れているかどうか、完全にはわかりません。たとえば、無資格でも、要介護者のところで糖尿病向けの調理を多数こなせる人もいれば、有資格者でも調理さえままならない人もいるからです。
とはいえ、特定の介護事業者のサービス品質を測定する基準も必要です。そこで注目されるのが、介護福祉士の有資格者数に関する調査です。ここに着目して介護業界を見てみると、結局のところ、民間介護事業者ではなくて、自治体が運営している社会福祉法人(特養や老健)のほうが、サービス品質が高い可能性が推定できるのです。
繰り返しになりますが、介護福祉士の資格を持っていないからといって、それだけでサービス品質が低いと言いたいのではありません。そうではなくて、介護サービスの品質を比較するための一つの客観的な指標として意味がある(可能性がある)ということです。
まず、介護業界で働く人々の80%以上(常勤換算)が、社会福祉法人(約40%)と民間介護事業者(約45%)のどちらかに属しています。ですから、それで全てにはならないものの、介護業界全体を考える上では、この2つを比較していくことが大事です。以下、調査結果(水野・吉田, 2016年)を元にして作成した表で見てみましょう。
◯介護福祉士の有資格者割合について
経営主体 | ||
訪問入浴介護 | ||
通所介護 | ||
短期入所生活介護 | ||
特定施設入居者生活介護 | ||
小規模多機能型居宅介護 | ||
認知症対応型共同生活介護 |
◯その他の一般データ比較について
経営主体 | ||
平均年齢 | ||
平均勤続年数 | ||
男性比率 | ||
新規学卒比率 |
◯介護福祉士の有資格者割合について
経営主体 | ||
全体の有資格者割合 | ||
常勤に限った場合 | ||
非常勤に限った場合 |
いろいろと気になるところはありますが、結論としては(1)社会福祉法人のほうが、民間介護事業者よりも、介護福祉士の有資格者の割合が高い(2)社会福祉法人のほうが、民間の介護事業者よりも、勤続年数が長い(3)学卒者は、社会福祉法人のほうに多く入社する、という3点になるかと思います。
これだけでは、社会福祉法人のほうが、民間介護事業者よりも優れているとは言い切れません。ただ、資格取得も一つの指標であり、また、その組織における知識レベルを一つの角度から表現するものであることは疑えません。
そうした意味では、民間介護事業者が、さらに頑張らないといけないところも見えてきます。この数字をベンチマークとして、それぞれが、お互いに負けないようにしていくことが大事でしょう。
また、介護をする家族としても、自分たちが介護サービスをお願いしているところが、果たして、この表と比較して、介護福祉士が多いのか、少ないのかは評価の一つになると思います。ここの数字は平均ですが、平均よりも勝っているのかどうかは、気になるはずです。
※参考文献
・水野利英, 吉田和夫, 『民間営利介護事業所の介護福祉士は少ないか』, 商大論集 67(3), 49-75, 2016年
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