KAIGOLABの最新情報をお届けします。
気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
福祉教育というのは、まずは、医療や介護のプロと、その予備軍たる学生が受けるものです。しかし、これだけ高齢化が進んでいる現在、その道のプロとはいえない一般の人々も、広い意味で福祉教育を受けることになるでしょう。
そのとき、私たちは、こうした福祉教育が、死生観にどのような影響を与えるかを理解しておく必要があります。
福祉教育を受けている学生の死生観に関する研究(河村, 2015年)によれば、死の教育、介護に関する教育、高齢者福祉の教育を受けたことがあると「死への関心」は高まります。こうした教育が「死」を考える機会を与えるのは、よいことでしょう。
ただ、気になるのは、福祉教育の中でも特に、介護に関する教育を受けると「死への恐怖・不安」も高まってしまうということです。「死への恐怖・不安」は、死にゆく人のケアを回避する傾向につながることが指摘(河野, 1988年, 孫引き)されているので、これでは、福祉教育も本末転倒になってしまうでしょう。
こうしたことから、今後の福祉教育においては「死」をネガティブに捉えるばかりではなく、自然なこととして、その受容プロセスなどと合わせていく必要があることが理解できます。また、医療や介護のプロではない一般の人々が福祉教育を受ける場合、この点への配慮がないと、逆効果になる可能性も否めません。
ここから見えてくるのは、福祉教育は、ちょっとかじると、かえって「死への恐怖・不安」をあおってしまうというリスクです。そして、介護のプロではない一般の人々のほうが、近年はセミナーなどが増えているだけに、注意が必要だということでしょう。
福祉教育は、スピリチュアルケアへの理解を進めないという結果も出ているので、この点も不安です。本来であれば、福祉教育の中には、スピリチュアルケアも含めた、包括的な「死」の受容に関するものがなければならないはずです。
とはいえ、誰か他者に対して「こうして欲しい」ということも重要ですが、自分でも、足りないところを補うことも大事です。そうなると、私たちは、介護に向き合うとき「死学(サナトロジー)」を独学する必要があるという結論が導かれます。
自分自身も含めて、介護に関わる人の中で「死への恐怖・不安」が高まってしまっている人を見かけた場合は、それ自体へのケアも必要になってくるということです。もちろん、介護のプロは、こうした点も理解していることが多いですが、自分でも、ここを意識する必要がありそうです。
※参考文献
・河村諒, 『福祉教育を受けている学生の死生観及びスピリチュアルケアの評価についての検討』, 尚絅大学研究紀要. A, 人文・社会科学編 (47), 29-37, 2015-03-31
KAIGOLABの最新情報をお届けします。