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気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
終活は、一般には、残される家族に迷惑をかけないという文脈と合わせて、ポジティブな活動とされることが多いでしょう。しかし実際に終活をしない人も多いことからも明らかな通り、当事者からすれば、そんなに単純なものではないということもわかります。
研究(木村・安藤, 2019年)によれば、有効回答数242人の高齢者調査で、なんらかの終活をしている人が142人、終活をしていない人が100人ということでした。この割合が、そのまま日本全国でも同じかどうかはわかりませんが、それでも、意外と多くの人が終活をしているという印象です。
同研究によれば、終活をしていない独居高齢者が終活をした場合は生活満足度(QOL)が高まる可能性もあるものの、逆に、終活が不安や恐怖をあおってしまう結果として生活満足度が下がる可能性もあることが指摘されています。
終活をするということは、自分の死について考えることとセットです。誰もがいつかは死ぬのですが、だからと言って、誰もが自分の死と向き合う必要があるかというと、一概には言えません。死について考えたい人もいるかもしれませんが、考えたくない人もいることは当たり前ですし、悪いことではありません。
周辺環境は、確かに、全ての高齢者が終活を通して、自分が受けたい介護の形や、延命治療への考え方などを固めてもらうことが求められます。そうした終活がないと、特に、本人が認知症になるような場合は、こうした、元気なうちの終活の結果が非常に重要な情報になります。
ただ、だからと言って、高齢者に対して終活を強要することはできません。特に、この研究では、終活が不安や恐怖をあおる可能性が指摘されており、不安や恐怖をあおることでの「不安商法」のようなものが増えてしまうことにもつながりかねません。
そもそも論としては、こうした終活も、あくまでも高齢者の生活満足度を高めることを目的とした手段であるべきでしょう。背景として世間一般に終活の重要性が高まっているとしても、それが高齢者の生活満足度を下げてしまうなら、本末転倒です。
そう考えた場合、それによって生活満足度が高まるような終活と、逆に低くなる終活の内容が、相手によって変化しそうだというところに注意する必要があります。この点についての研究が進むことは、誰が、どのような終活をすべきなのかという重要な事前予測に貢献するでしょう。
逆にいうなら、終活という一般にはポジティブに受け入れられるような活動は、死を扱うということを思い出せば明らかな通り、それほど無邪気に進められるものではないという認識が求められます。今回ご紹介した研究のようなものを積み上げていくことが必要でしょう。
※参考文献
・木村 由香, 安藤 孝敏, 『独居高齢者における終活への取り組みと生活満足度との関連』, 技術マネジメント研究 (18), 1-17, 2019-03-31
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