閉じる

自治体が終活支援?不安を減らすために(熱海市)

自治体が終活支援?不安を減らすために(熱海市)
気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。

終活セミナーが活況らしい

自分が死んだ後のことが気になる人が増えていると言います。いわゆる終活と呼ばれる活動は、セミナーを開催すれば、参加希望者でいっぱいになるそうです。ただ、そうした終活セミナーは、必ずしも良心的な組織によって運営されている訳ではありません。その見極めがとても難しいという話を聞きました。

そうした中、自治体が主体となって、こうした終活セミナーを含めた終活のアレンジに乗り出すというケースが出てきています。自治体が主体であれば、高齢者もより安心でしょう。以下、中日新聞の記事(2019年8月1日)より、一部引用します。

熱海市は、一人住まいの高齢者が生前から葬儀の段取りを契約する「終活支援事業あんしん」を一日、スタートさせる。市の高齢化率は47%で県内の市で最も高く、市民の終末期に対する不安を緩和し、安心して老後を暮らせるようにするのが狙いだ。市によると、こうした取り組みは県内初という。(中略)

契約した人には登録証が交付される。登録証は「救急医療情報キット」に入れ、自宅で保管してもらう。市が高齢者などを対象に二〇一二年度から配布しているプラスチック製の容器で、医療や介護に関する希望や緊急連絡先などを記載した情報用紙を入れる。(後略)

死後の準備も大事だけれど・・・

こうした、自らの死後について準備をすることは、とても大切なことです。同時に、死ではなく、介護が必要になったら、どのような介護を受けたいかといったACP(Advanced Care Planning)も、非常に重要になってきています。認知症になってしまってからでは、遅いことも多いからです。

さらに言えば、本当は、成人であれば誰もが「自分はどう生きていきたいか」ということを考え、いざという時のために、他者が読んでわかるような文書として残しておけたら良いでしょう。ただ、終活もそうなのですが、こうした将来の自分のあり方について文書化することには、大きな弊害もあります。

それは、こうした取り組みは、宿命として「人間は置かれている環境の影響を受けて変化する」という事実を組み込むことが困難であるということです。実際に、過去の自分が、未来の自分を規定してしまうことは、それだけ、自由を失うということにもつながるでしょう。

私たちは、誰もが、多かれ少なかれ、そうした部分を持っています。理系を選んだけれど、本当は文系にしておけばよかったといった嘆きは、誰にでもあることでしょう。ただ、こと終活やACPとなると、過去の選択が、取り返しのつかない結果に直結する分だけ、これを弊害として認識しておくことが重要です。

いざ自分に不幸があると変化しやすい

よく聞く話としては、元気だった頃は「延命治療はやめてほしい」と言っていた人も、いざとなると、むしろギリギリまで頑張りたいという180度反転した考えになりやすいということがあります。これは、本人が強がっていたとか、そういうことではありません。置かれている環境の影響を受けて変化しただけです。

当然ですが、これは恥ずかしいことではありません。自分の人生を自分で決めることは、人間の尊厳に関わる問題です。環境が変わったことで、自分の人生の選択を変えるということは、むしろ勇気が必要なことでもあります。

だからこそ、終活やACPをアレンジする側にある人々は、その内容は180度変化する可能性があるということを、常に心がけておく必要があります。また、ちょっとしたことでも、後になって「違ったかな?」と感じることがあれば、いつでも変更ができるようなプロセスもつくっておかなければなりません。

いかなる選択であったとしても、後悔するところがゼロという選択はありえません。機会費用(Opportunity Cost)と呼ばれるもので、何かを選ぶということは、それを選ばなければ得られた他の利益を捨てることでもあるからです。この分野には、こうした心の柔らかい部分への、十分すぎる配慮が求められています。

※参考文献
・中日新聞, 『高齢者の不安緩和へ 熱海市が終活支援事業』, 2019年8月1日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由