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エンディングノートが普及していない?

エンディングノートが普及していない?
気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。

エンディングノートの実態

エンディングノートが活用されているかについての最近の調査報告(辰巳, 2019年)があります。調査は、86名の看護師と介護職より回答を得ています。まず、全体の91.8%(79名)が、エンディングノートという言葉を認識していました。認識率は、とても高いと言ってよいでしょう。

次に、エンディングノートを書きたいと思っている人は、看護師の75.6%(31名)、介護職の86.7%(39名)もいました。しかし、実際に(自分自身の)エンディングノートを書いたことがあるのは、わずか3.5%(3名)でした。特に、介護職では1人もエンディングノートを書いたことがなかったのです。

それだけ関心を集めているエンディングノートですが、そもそもエンディングノートを見たことがあるという人も、こうした介護のプロでさえ25.6%(22名)にすぎませんでした。

命の危険が迫っている状況では、70%以上の人が、自らの意思を周囲に示したりすることができなくなることが知られています。本人が希望する終末を迎えるには、エンディングノートのようなツールが必要なのです。それにも関わらず、エンディングノートは普及していないのです。

国民はどう考えているのか

エンディングノートの認知は、大規模な調査(4,181人)によれば、国民の63.5%が「知っている」「聞いたことがある」という状態です。これは、70歳代になると、76.6%にまで高まります。ちなみに、ACP(Advanced Care Planning)の認知は、22.5%にすぎない状態です。

エンディングノートは、それなりに知られているわけですが、それでも実際にそれを書く人は少ないのが現状です。背景として考えられているのは、エンディングノートは必要とは思いながらも、自分の死にゆくプロセスについて具体的なイメージを持って考えたくないと想っているということです。

どうしても暗いイメージが付きまとってしまうことが問題であるとするならば、その効果を伝えながら、プロによる指導のあるところで、明るいイメージでエンディングノートの作成を行うといった支援が必要になるでしょう。

多くの国民が、エンディングノートを知っており、そういう準備も必要だろうと感じてはいるのでしょう。特に看護師や介護職は、自分のエンディングノートを書きたいと考えてはいます。しかし、死にまつわるイメージが、エンディングノートの普及を妨げているのでしょう。

死を身近に感じることでエンディングノートを書く

この調査報告が伝えるところでは、エンディングノートを書いていた3名の看護師のうち2名は、死を身近に感じる経験から、エンディングノートを書いたそうです。要介護者や周辺にいる人が亡くなることで、死を身近に感じると、エンディングノートの必要性がより実感できるのかもしれません。

その意味では、高齢化社会とは、多死社会でもあることから、エンディングノートの普及は、放置しておいても、自然と進むものと考えられます。それに、無理に宣伝すると、押し付けがましく感じられて、返ってエンディングノートが嫌われてしまう可能性もあります。

かつての日本では、ガンの告知さえ、難しくてとてもできない時代がありました。それが今や、告知も当たり前のことになっています。ガンの告知と同じように、エンディングノートもまた、いずれは当たり前のものになっていくのでしょう。

誰もが当たり前にエンディングノートを書くようになるということは、単なる手続き上の話ではありません。それは、日本人の死生観に大きな変化が起こるということであり、ケアプランを自分で作る人が増えるといった形で、介護のあり方にも少なからぬ影響を与えることになります。

※参考文献
・辰巳 有紀子, et al., 『看護師・介護士におけるエンディングノートの認識』, 大阪大学看護学雑誌 25(1), 46-53, 2019-03-31

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