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気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
私「もしも病気で倒れていよいよ難しいとなったら、どうして欲しい?」
母「面倒はみて欲しいな。うーんでも、迷惑はかけたくない。もしお父さんがそうなったら(お菓子ばっかり食べている)自業自得だから放って置く。」
私「迷惑か・・・。迷惑って具体的にはなんだろ。あっ、お父さんは放って置こう(笑)」
父「(ばつが悪そうな表情)・・・」
こちらは、とある日に筆者が家族とした実際の会話風景です。みなさんは、このように死について家族やその他の誰かと語ることはありますか?「まだ若いから、早いよ!」「縁起でもない!」と、思う方もいらっしゃるかもしれません。今回はそんな、忌み嫌われることの多い死についてきちんと触れる機会を持っておきましょうというお話です。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉は聞いたことはありますか?簡単に言うと「人生の最期について元気なうちに話し合っておきましょう」というものです。「自分は絶対に最期まで意思決定するから大丈夫」と言う方もいらっしゃるかと思います。
しかし、ある論文には、終末期においては約70%の患者で意思決定が不可能である(Silveira MJ, NEJM 2011)とあり、多くの方は十分な意思決定がなされず、最期を迎えていると言われています。
アドバンス・ケア・プランニングについて盛んに言われる前にも、アドバンス・ディレクティブ(AD)やもっと分かりやすいものですと遺書、エンディングノートなどで意思表明がなされてきました。
しかしながら、これらは、1人称の意思表明であることが多く、なぜそうなのか?いつの時点の意思なのか?など立体的な意思表明ではありません。ですから、いざと言う時には意外と参考にならないのです。
1995年からは、1人称で意思表明するだけではなく、家族や友人など代理意思決定する者や医療・介護従事者など、他の方も巻きこむことが大切とされています。結果だけではなく価値観や話し合いの継時的変化なども重要です。こうした背景から、アドバンス・ケア・プランニングが推進されるようになってきました。
アドバンス・ケア・プランニングは、これから一般の方にも浸透をという動きも出てきています。しかしながら、まだまだ当事者や家族側としてはなんとなく難しそうなイメージがあります。また、実際問題、医療や介護従事者側など提供側には浸透はしておらず、理解できていないケースも多くあります。
とはいうものの、人間は将来必ず亡くなるのですから、当事者や家族として「縁起でもないハナシ」はしておきたいところです。なかなか難しいことですが、そのきっかけになるようなツールがあります。その一つに「もしバナゲーム」というものがあります。
「もしバナゲーム」とは、アメリカ発祥の医師・患者のコミュニケーションツールである「Go wish game」を改良したものです。日本の医師である蔵本浩一氏・原澤慶太郎氏が中心となり、監修・翻訳をしています。詳細は、参考文献にリンクを貼っておくので、そちらを参考にしてもらえたらと思います。
この「もしバナゲーム」では、人生の最終段階で言葉にする大事なことがカードに書かれています。ゲームを通じて、自分にとって大事なことを優先度づけをしたり、なぜその順番なのか?絶対に譲れないのは?などなどその人にしかない答えを導き出せる仕組みになっています。
筆者も体験してみましたが、このゲームの面白いところは、意思決定することそのものではなく、ゲームを通じて、人生の最終段階について自分ごと化できることです。普段言語化していない自分の大事な思いを引き出せること、一緒にプレイしている人の価値観を聞けることなのだと思いました。
もしものときに備えて「私って(この人って)こんなこと大切にしてるんだ」と意思決定のきっかけとなるのにとても良いツールです。ツールを使うもよし、直接話をするのもよし、皆さんもぜひ大切な人たちと「縁起でもないハナシ」してみてください。
※参考文献
・Maria J. Silveira, et al., “Advance Directibes and Outcomes of Surrogate Decision Making before Death”, N Engl J Med 2010; 362:1211-1218
・iACPもしバナゲーム(https://www.i-acp.org/game.html)
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