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気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
終末期の介護は、バタバタすることが多くあります。介護職の多くも、急に医師から連絡があって、そこから短期間だけ振り回されるということを経験しています。このとき、非常に面倒なのが、要介護認定の申請です。通常は、申請してから認定されるまで1ヶ月以上かかることが多く、その間に、本人が亡くなってしまうこともあります。
要介護認定が間に合わないと、介護保険が使えず、介護サービスを使うときは、全額となる10割負担になってしまいます。ただでさえ高額な出費の多い終末期にあって、こうした費用負担は、家族にとっても本当に厳しいものになりやすいのです。
静岡市は、こうした現状に対して、柔軟な対応を打ち出しました。他の自治体も参考にすべき事例になっているので、ぜひ、検討してもらいたいです。以下、毎日新聞の記事(2018年2月25日)より、一部引用します。
静岡市は、在宅介護の末期がん患者が、介護保険の要支援・要介護認定を受けていなくても、介護保険と同じ負担割合で介護サービスを利用できるよう費用の一部を助成する制度を新年度から始める。市は、助成費400万円を新年度当初予算案に盛り込んだ。
市によると、末期がんでも自立した日常生活が送れる人は珍しくない。このため、保険者である自治体に本人らが要介護の認定申請をしても、「非該当」と判定されることも少なくない。
ところが、末期がんは容体が急変することが度々ある。自立した生活が難しくなり、介護サービスが必要になっても、非該当のままでは1~2割の自己負担で済む介護保険で介護サービスを利用することはできない。(後略)
この静岡市の動きに同調する自治体も増えてくると思われます。なんらかの形で終末期に関わり、要介護認定の申請で困ったときは、この事例を思い出したいものです。その上で、自治体の窓口に対して、同様な仕組みがないかどうか確認しましょう。
いますぐには難しくとも、将来的には、こうした仕組みは標準化していくはずですし、そう願いたいものです。また、自分が介護業界で働く介護のプロである場合は、同様の仕組みが、自分が関与する自治体でも設立されるように、周囲に働きかけていきたいものです。
とにかく終末期は、緊急事態だからということで、お金のことは気にせず精一杯の対応がなされやすいものです。しかし後になってから、莫大な請求金額をみて、途方にくれてしまうことも少なくありません。大切な時期ですから、変な妥協はしたくないはずです。だからこそ、このような仕組みのあるなしは重要です。
先日の記事でも伝えたとおり、少なからぬ自治体は、高齢者に対して公共交通が使い放題になる「敬老パス」なる事業を行っています。この予算は、数億〜100億円以上という巨額なものです。こうした予算の全てが無駄とは言いませんが、その一部でも、今回の静岡市のようなものにあてられないものでしょうか。
本当に必要なところに、しっかりと再分配されるような仕組みが足りていないのです。同時に、そうしたことを調べたり、考えたりする体力は、もはや自治体だけでは無理だ考えたほうが良いと思います。それぞれの自治体の市民が、自分たちの自治体の運営に対して、より積極的に関与していかないと、おそらくは変わりません。
なんとなく過ごしていると、ある日、自分が暮らしている自治体が破綻します。そのときになって文句を言っても、その自治体のありかたを選挙で承認してきたという事実は揺らぎません。介護現場でも「こんなひどい話があるか」と憤りたくなるケースは、一般に知られている以上に多発しているのです。
※参考文献
・毎日新聞, 『介護サービス費助成へ 在宅末期がん患者対象/静岡』, 2018年2月25日
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