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終活の中心は旅行になる?自動運転技術への期待として

終活の中心は旅行になる?自動運転技術への期待として

気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。

「終活」に対して前向きな人は多い

高齢者の7割以上が「終活(=人生の終りに向けた具体的な活動)」に前向きであるという調査報告がありました。以下、調査を行ったマクロミルによるメディア(ホノテ)の記事(2016年11月29日)より、内容の一部を引用します。

『終活』という言葉の認知率は、60代・70代とも80%。半数以上が「時期が来れば『終活』を行いたい」。

『終活(にあたること)』を「すでにやっている」方は9%、「近いうちに始めようと思っている」方は9%、「時期が来たら行いたいと思っている」方は56%でした。合わせて74%の方が、『終活』に関心を持っていることがわかりました。

『終活』を行う理由、1位は「家族に迷惑をかけたくないから」71%。男女間で差が見られたのは「これからの人生をよりよく生きたいから」で女性の方が男性よりも5ポイント高い結果に。

60%が「人生でまだやり残したことがある」と回答。やり残した内容の最多は「旅行」。

まず「終活」という言葉の認知率の高さに驚かされます。そして、この年齢階層にある人々が「死ぬ前に旅行がしたい」という希望を持っていることも、大事な社会認識になるでしょう。マクロミルによる、非常に大事な調査報告です。

介護業界としての考え方

まず、介護業界としては、介護スタッフが見守りを担当する旅行の市場が大きくなるという認識が求められます。これまでも、トラベル・ヘルパーという考え方があり、そうしたサービスを提供する介護事業者もいました。

ただ、そもそも人材確保が難しい介護業界が、こうした旅行専門のヘルパーの数を確保していくことは困難だと思われます。それに、本来であれば、日常的に要介護者を担当するヘルパーが、その要介護者の旅行に同行するのがベストでしょう。

とはいえ、ヘルパーは1人で何名もの要介護者を担当していることが普通です。そのヘルパーが、旅行の期間の間、いなくなってしまうときのバックアップ体制について介護業界全体の課題として考えたほうが、効果的だと思われます。同時に、ヘルパーに対する旅行対応の研修なども必要になってきます。

これに成功すれば、経営環境の厳しさが増している介護事業者にとっても、売上の増加になります。その結果として、ヘルパーなどの介護職の待遇改善にもつなげられるでしょう。介護業界としては、ぜひとも実現したい案件になります。

医療業界としての考え方

終末期医療としての旅行を、どのように位置づけるか、難しい課題になりそうです。高齢者の、旅行先での急な容態変化に対応するのは、旅行先の医療機関になります。その高齢者が、せめて既往歴(病気の履歴書)を持っていればいいですが、現実には、そうしたケースは多くなさそうです。

医療業界としては、介護職が高齢者の旅行をアレンジするとき、持っていてほしい情報についてまとめ、介護業界に働きかけていく必要がありそうです。それでもなお、医療業界からすれば、面倒が増えることになります。そうした面倒に対するインセンティブ(ボーナスなど)についても、検討する必要がありそうです。

インセンティブを出す余裕などない、というのは早計です。介護業界と連携し、旅行にかかる費用のうちの一部を「緊急時対応費」として積み上げればよいはずです。いざということがあれば、そこから医療機関に対するインセンティブを支払うようにすればよいでしょう。

国としての考え方

日本に暮らす高齢者が、死ぬ前に、本人が希望する旅行に行けるような状態を作ることは、新たな旅行産業を生み出すことになります。それにより、介護事業者や医療機関の収益がプラスになるばかりでなく、地域活性化にもつながるのであれば、なおさら、進める意義も高まります。

この実現には、高度なITも求められるでしょう。そして、長期的には輸出産業として成立する可能性もあります。逆に、高齢者の旅行を、より安全に実現させるシステムがなければ、輸出産業として、他国のサービスに負ける可能性さえあります。

医療業界、介護業界、旅行業界、そして高齢の旅行者にやさしい地域づくりを担う官民が連携して、高齢者の希望が実現される社会を築いていきたいものです。要介護の状態にあっても、気軽に、誰かに迷惑をかけることなく、好きなところに旅行できるような社会を、経済的なメリットと同時に実現したいです。

自動運転の技術が、これを夢物語にしない

自動運転の技術、特に、ドライバーを必要としない技術の実現があれば、ここで述べたようなことは、夢物語ではなくなります。自動運転の自動車は、高齢者のバイタルサイン(脈拍、呼吸、血圧、体温)を取得しつつ、その高齢者の既往歴なども記録しているでしょう。

ヘルパーの同席も、旅行中ずっとではなく、必要なところで、必要なものを調達できるようになれば、プライバシーも守れて最高です。そもそも、こうしたレベルの自動車があれば、極端な話、定住も必要なくなります。世界を旅行しながら、人生を閉じるようなことも可能になるかもしれません。

最終的には、車椅子に匹敵するような小型の自動運転の自動車が、医療的にも介護的にも、高齢者を支援するような状態になるのかもしれません。そして、そうした高齢者は「元気に」世界中を旅行しながら、気ままに人生を終えるのでしょう。

※参考文献
・ホノテ(マクロミル), 『60代・70代のシニア世代1000名に聞いた!『終活』の意識と実態』, 2016年11月29日

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