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気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
在宅での看取りの場面では、ヘルパーの存在はとても大きなものになります。終末期におけるヘルパーの関わりは(フェーズ1)要介護者や家族からのニーズ確認(フェーズ2)看取り支援の開始から亡くなるまで(フェーズ3)要介護者の死の直前から亡くなった直後、という3つのフェーズからなります。
このそれぞれのフェーズにおいて、ヘルパーが抱えている課題についての聞き取り調査結果があります(高橋, 2015年)。介護をする家族の側として、看取りにおいて、ヘルパーがなにに困っているのか理解しておくことは、少しでもよい終末を迎えるためにも重要なことでしょう。
今回は、この調査結果をベースとして、それぞれのフェーズにおいて、ヘルパーが抱えている課題について、まとめてみたいと思います。あくまでも一般論であり、すべての事例について全く同じ考えが通じるということはない点には注意してください。
要介護者には、いわゆる「看取り期」に入ったという判断がなされるときがきます。その後、要介護者や家族はもちろん、ヘルパーを含めた介護職とともに、今後の方針について決めていく必要が出てきます。
このとき、通常は要介護者も家族も、来たるべき死に対して動揺しています。そうした動揺している状況において、ヘルパーは、とても気をつかいます。誰にとっても、死は、受け入れがたい現実だからです。
本来であれば、ヘルパーには、要介護者や家族が、どのような最後を迎えたいかというニーズ調査が必要な段階なのです。しかし、心理的に不安定になっている要介護者や家族に対して、そうした具体的な質問をするのは、かなりストレスのかかる作業です。
辛い時期ではありますが、家族会議を開いて、ヘルパーに対して、自分たちが望む最後について、しっかりと意見を述べる必要があります。とはいえ、非常に重要な決断ですから、急いで無理やり決めるべきことでもありません。決められないときは、そのように、ヘルパーに対して伝えることも大切です。
残された時間も長くないのですから、とにかく、要介護者の希望が優先される時期ではあります。しかし、ヘルパーとしては、要介護者の行動一つひとつに「こうしたほうがいい」「それはよくない」といった意見があります。そのような意見が言いにくくなるのが、終末期でもあります。
特に、要介護者の意見と、家族の意見が異なるときは、ヘルパーのストレスも大きくなります。本心では、ヘルパーは、要介護者の意思を尊重するように訓練を受けていますが、それでも、家族の気持ちもわかるというところが、返って課題を難しくさせます。
これは、要介護者と家族という間だけでなく、医師や看護師、ケアマネといった他職種の間にも発生することです。ヘルパーは、最も長時間、要介護者と接することが多いというところから、要介護者の希望の代弁者である場合もあり、こうした多様な意見の調整に心を痛めることも少なくありません。
関係者の間で意見が大きく異なるとき、対応を間違えると、後の警察沙汰にもなりえます。特に、要介護者の意思の確認ができないとき(昏睡状態にあったり、重い認知症があったりする場合)は、注意が必要です。家族の中で、誰が決定権を持つのか、明確にしておく必要があります。
要介護者の死の直前から亡くなった直後という時期は、大きく言えば「痛み」の除去がヘルパーの大きな課題となります。この「痛み」は、要介護者のみならず、家族のものでもあります。またそれは、身体的なものだけでなく、精神的なものも含まれることは当然です。
ここで知っておきたいのは、ヘルパーは、要介護者の死の前後において、どのように行動すべきかということについて、しっかりとした訓練を受けているわけではないということです。仮に受けていたとしても、テーマがテーマだけに、解りやすい訓練というのはない世界です。
死の前後において、誰もが不安になり、また、混乱することになりますが、それはヘルパーも同じことなのです。ヘルパーは、プロとして多数の死に接することになりますが、何回経験しても、決して慣れることはないという人のほうが多いように思います。
家族としては、支えてくれるヘルパーもまた、誰かの支えが必要という点について、少しだけでも配慮しておきたいです。立ち振る舞いに違和感があったり、ときには無礼にも思える対応もあるかもしれません。しかしそれは、一人の人間として当然のことでもあります。
※参考文献
・高橋 幸裕, 『ホームヘルパーによる高齢者の看取り対応の実態と課題』, 尚美学園大学総合政策論集 21, 85-102, 2015-12-25
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