KAIGOLABの最新情報をお届けします。
気持ちに余裕がない場合は、この記事は読まないでください。「看取り」に関する内容になります。
介護に向き合っていると、人間の人生とはなんなのか、色々と疑問に思うことも増えてくると思います。そうした疑問と向き合ってきた人々が生み出したのが、鏡の裏側から人生を考えるという哲学、すなわち「サナトロジー」です。
「サナトロジー(thanatology)」とは「死」を意味するギリシャ語「thanatos」を語源とする言葉です。現代的には「死」に関する科学の総称として使われています。
より具体的には「死(death)」そのものに関することのみならず「死にゆくプロセス(dying)」について、本人とその周辺にいる人々を対象とした研究がなされています。
「サナトロジー」が日本語に翻訳されると、なぜか「死生学」とされることが多いのですが、厳密には「死学」です。終末期医療、ターミナルケアや尊厳死といった分野の根底に流れる学問です。
当然、介護の文脈にも「サナトロジー」の見解が影響を持っています。介護には、まぎれもなく「死にゆくプロセス(dying)」を問うという側面があるからです。
そもそも「死」について語ることがタブーとされてきたのが日本です。そんな日本で、欧米に遅れながらも、終末期医療といったことが普通になってきた背景には、一人のドイツ人の活躍がありました。
日本で「サナトロジー」が開始されたのは、今からおよそ40年前、1970年代初頭の上智大学においてだと考えられています。担当したのは、アルフォンス・デーケン(Alfons Deeken)氏(wikipedia)です。
「死の哲学」と題された彼の授業は、当時の人気講座となり、毎年800人にも登る生徒が履修したそうです。後に「死の準備教育(Death Education)」として発展していき、日本におけるホスピス(終末期における緩和ケア病棟)の広がりの基礎になっています。
昔と違って、今は「ガン」は本人に告知する病気となりました。この背景にも、デーケン氏が広めた「サナトロジー」が非常に大きく影響していると考えられています。
まず、デーケン氏の思想の多くが、日本語で出版されています。特に好みがない場合は、そこから入るのがよいでしょう。たくさんあって選べないという人のために、以下、1冊ピックアップしておきます。
KAIGO LAB編集部の周辺では、デーケン氏による本書『よく生き よく笑い よき死と出会う』が「サナトロジー」の入門書として最適という人が多いです(あくまでも周辺にすぎませんが)。
もちろん「死」という重大なテーマに関するものなので、好みもあると思います。まずは、図書館などで手に取ってみることをオススメします。
KAIGOLABの最新情報をお届けします。