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社会学者で「フェミニスト」の上野千鶴子の本を3冊紹介します。「フェミニスト」と聞いただけで、引いてしまう人もいるかもしれません。ただ、そこは冷静になる必要があります。
著者は、社会的に弱い立場の人(女性に限らず、子供、心や体に障害を持つ人、高齢者)が、もっと生きやすい社会であるべきだという立場から一貫して発言しています。とはいえ、時に極端な主張によって、批判と支持のどちらも受ける著者ではあります。
こうした背景をもつ著者は、最近よく聞かれる「ピンピンコロリ」という言葉に対して「それは弱い人を切り捨てる思想ではないか」と繰り返し反発しています。ここは「辛い思いをしながらも、生きること」を頑張っている要介護者を支え見守る立場からすれば、うなづける部分も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する3冊は、そうした優しい視点から、どれも「いかにして自分らしくひとりで老いて死ぬか」ということを追求したものです。自分が、優しさをかけられる側にまわると、こうした視点のありがたみが感じられるものです。
もちろん、ここでいう「ひとりで」とは「孤立して」という意味ではありません。著者は、両親の介護、特に母親の死後に父親を遠距離介護した経験をもっています。それを全面に押し出してはいないものの、介護を経験した人にしかわからない視点が生きています。
単身女性の老後について、心構えや金銭的なことまで、具体的な対策が分かりやすく書かれています。単身女性といっても、生涯独身を通した女性だけでなく、離婚した人や離婚を予定している人、子どもに頼れない人、頼りたくない人も含めて「ひとりで老後を生きる」女性というくくりです。
では、親の介護をどうしようかと思っている人には関係ないかというと、大いに参考になる情報がつまっています。ひとつ例を挙げると、親と同居することが親にとってもあなたにとっても本当に良いことなのかどうかという視点です。
著者は『「いっしょに暮らそう」という悪魔のささやき』という小見出し(p23)で子供との同居について書いています。子供が同居を誘う理由は「火でも出されたらこまる」「遠くまで介護に通うのがたいへん」「独りで置いておく私は親不孝なのではないかという自責の念」など、子ども側の都合だけではないかというのです。
だからといって、今、介護を必要としている親に「独りのほうがいいよ」と、かんたんに言えるわけではありませんが、ここには同居について考える大事な手がかりがあるのではないでしょうか。
KAIGO LABでも何度か記事にしていますが、介護において、男性の要介護者は、女性の要介護者とは異なる難しさがあります。そうした点について把握し、かつ、可能なら要介護者にも読んでもらうことで、そうした課題を把握することができるかもしれません。
この本も、直接「親の介護」に役立つわけではありませんが、父親を「高齢の男性」として、客観的に見直すための指針になります。親の介護をする世代の男性には、自分自身をふりかえって将来を考えるきっかけにもなります。
先に取り上げた『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』のベースとなった研究調査の成果を一般向けにまとめたものです。介護の最中の人にも、これからの人にも貴重な情報が詰まっています。
目次で内容が分かりやすく整理されていますので、関心のあるところの拾い読みから入って行けます。たとえば、長男の嫁というだけで介護を押し付けられそうという人なら、夫の親と養子縁組をして相続権者になること、および夫の兄弟姉妹に相続放棄に同意してもらうことの二つの契約が必要だと言っています。
そのまま実行できるるかどうかは別として、義理や意地で動いてしまって後で後悔しないために、立ち止まって考えるきっかけになるでしょう。
介護は24時間フルタイム年中無休の重労働です。たとえ契約したとしても、労働に見合うだけの財産が相続できるとはかぎらないと、もっともなことも書かれています。
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