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高齢問題研究家である作家・ジャーナリストによる、働きながら介護する人のためのガイドブックです。介護のために仕事を辞めてはいけない、自分の生活基盤がしっかりしていてこその介護だという考えかたです。
筆者自身が、働き盛りの35歳から16年間両親の介護をしています。その、自分自身の体験だけでなく、さまざまな年代の現役介護者に取材してまとめています。本書は、KAIGO LABの過去の記事でも、何度か引用させていただいています。
年間10万人もの人が、介護のために離転職している現実があります。これをふまえて、突然降ってわいた介護に、パニックに陥らない心得から、具体的な方法(例えば、遠距離介護には絶対に欠かせないケアマネージャーとの良い関係の作り方など)や利用すべき公的支援、情報が分かりやすく書かれています。
想像しているだけではわからない介護の厳しさや閉塞感が書かれています。しかし、そうした介護の厳しさを深く理解した上で解決策を示し「だからこそ仕事を続けなさい」というアドバイスで背中を押してくれます。
目次でおおよその内容がつかめ、自分に必要な章を拾い読みすることができます。ほとんどの章に問題点を把握するためのチェック表や公的支援のリスト等の資料が添えられていて、本当に便利です。
公的支援、介護の費用、高額療養費や医療控除についてなど、知らないと損をしそうな情報が満載です。出版が2010年なので、現在とは違っているものもありますが、「使える情報」を選んで、現時点の数字や規定をネットなどで調べることをおすすめします。
母親が脳梗塞で倒れ現在入院中、父親は近くに嫁いだ妹が様子を見に行ってくれていますが、母の退院までに介護体制を整えなければなりません。
妹も高齢の義父母と同居しているので、ずっと頼るわけにはいかず、私が「主たる介護者」として、仕事をしながらの遠距離介護を覚悟しています。
覚悟だけではなんともならないので、勉強中ですが、利用できる制度の紹介だけでなく、仕事や気持ちの問題まで、自分の状況を把握するのにとても役に立ちました。
同居していた独身の弟が亡くなり、あいついで母も亡くなったために、90歳の父が一人残されました。体は丈夫で頭もはっきりしていますが、すべて母任せの「昔ながらのお父さん」でしたので、突然の一人暮らしは、本人も周りも不安でいっぱいでした。
私は管理職になったばかりで、正直パニックに陥りそうでした。片道2時間かけて毎週金曜日の深夜実家に帰り、月曜日の早朝に実家から出勤する生活を続けました。
父は高齢でも健康で介護保険が適用されるような状態ではないため、平日は近くの親戚に様子を見てもらうしかありませんでした。親戚には助けられましたが「娘がいるのに…」「女がいつまでも仕事しなくても…」という無言の圧力も感じました。
職場の人たちも友人も仕事を続けるようにと励ましてくれましたが、結局半年で仕事を辞め、父との暮しを選びました。いろいろ悩みましたが、父の哀しみを分かってあげられるのは娘の私しかいないと思い仕事を辞める決心をしました。
介護保険のことも真剣に調べたわけではなく、父のようなケースはどうなのか、ほんとうのところは分からないままです。健康で「かかりつけ医」もいませんし、申請の段階でつまずきそうです。
後悔はしていませんが、この本を読んでみようと思った心のうちには、仕事を続けたかったという想いがあるのかもしれません。ようやく落ち着いてきた今になると、この生活があと何年続くのだろうか、私自身の老後はどうなるのだろうかという不安が心をよぎることもあります。
男でも女でも若い人や、家族を養わなければならない人は、何としても仕事と介護を両立させてほしいと思います。
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