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認知症が進んで施設に入った母との交流を描いたマンガとエッセイ『ペコロスの母に会いに行く』『ペコロスの母の玉手箱』の作家が、両親との同居を描いたものです。同居に至る経緯、認知症が進んで行く母との生活、施設に入ってからの母の様子と息子としての気持ちが表現されています。
随所に『ペコロスの母に会いに行く』『ペコロスの母の玉手箱』から抜粋したマンガも掲載されていて、読み進むのが楽しいです。
著者の母親は、比較的穏やかにボケて行きます。しかしそれでも、思わず母親に手を上げそうになったエピソードなども記していて、現実の厳しさがうかがえます。マンガ同様、ユーモアと哀愁の漂う、抑制の利いた文章もすばらしいです。
巻末近くでは、町永俊雄(福祉評論家・ジャーナリスト)との対談が収録されています。こちらも、認知症への理解と対策の手がかりになって、ありがたいです。
この取材をもらう前から、既読の本でした。きっかけは、歯医者の待合室で『ペコロスの母に会いに行く』を開いたのですが、きっちり予約時間通りに順番がきたので、このときは2、3ページしか読めませんでしたが、印象に残っていました。それから1年以上たってから、図書館で同じ著者のこの本を目にして、かりて読みました。
私の母は、車で15分の実家に独りで住んでいますが、話がくどくなり、物忘れも多くなってきて心配です。でも、この本を読んで、ボケととらえて泣いたり笑ったり怒ったりで良いのかな、と思えました。忙しい合間を縫って行くので、母と言い合いになることが多いのですが、確かに後で思い出すと笑ってしまうようなことがたくさんあります。笑い事ではないあぶないことも同じくらいあるのですが。
いろいろ事情があって、いずれはグループホームにと考えているのですが、やることはぼろぼろになってきても、気の強さは変わらない母が納得するかどうか、今から心配です。この本のお母さんは、脳梗塞で入院してそのままグループホームに移ったため、入院の続きのように受け入れたとのことですが、母の入院を期待するわけにもいかず、頭の痛いことです。
第42回日本漫画家協会賞優秀賞受賞を受賞した、ベストセラーです。もともとは、自費出版した二冊の本から、両親を描いたものを選んで新たに編集したものとのことです。自費出版したものが、詩人・伊藤比呂美の目に留まり、広く知られることになったという経緯があり、伊藤比呂美が帯文と「生きる切なさ」という文章を寄せています。
年季の入ったマンガ読みを自任する伊藤のことば通り、絵もとてもすばらしいです。一見ほのぼの系の絵なのですが、優れた目と腕が無ければ描けない絵だと思います。エピソードの切り取り方、扱い方も温かくて、読んでいて辛くなりにくいです。
著者の家族史にもなっていますが、適度な距離感があり、読者が共感しながらそれぞれの家族史をさかのぼる入り口にもなると思います。それでも、8編のエッセイは、やや情緒的で好みの別れるところでしょうか。
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