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過去の介護は、実質的に、ほとんど女性が担ってきたと言ってよいでしょう。しかし、こうした介護を、息子である男性が引き受けざるを得ない時代になってきています。理由は様々ですが、過去の介護世代と比べて(1)兄弟姉妹が少ない(2)未婚率が高い(3)結婚していても共働きが多い、という時代背景は無視できません。
本書の著者は、実際に親を在宅介護している男性28人から、ていねいな聞き取り調査をしています。著者によると、息子が「主たる介護者」であるケースは、介護者全体の12%ということです。これは今後、増えていくことはあっても、減ることはないでしょう。
男性は個人的な話、特に困難に直面していることを公にしたがらない傾向があることを考えると、28人もの人が率直に介護体験を話す意味は大きいでしょう。
今までも、男性の介護についてマスコミに取り上げられることはありました。しかし、それらはいわゆる「成功例」だったり、明るい面が強調されていたりして、本音や実態は見えにくいものでした。この本では、そうした「成功例」を超えて、介護する息子たちの本音から、社会的な問題を浮き彫りにしています。
著者の専門は、社会老年学、社会心理学です。主要論文は英文で、これが初めての日本語で書いた本ということです。やや論文調ですが、一般向けで、読みやすい文章です。
息子介護の現状を分析するだけでなく、介護者と妻や兄弟姉妹との関係が書かれていて、どの立場の人にとっても「あるある」と「なるほど」がつまった内容になっています。前書きと目次を読めば、おおよその内容がつかめるようになっています。順番にこだわらず、興味のあるところから読むことをおすすめします。
現在80代の両親と同居しています。KAIGO LABさんに本書を借りて読みました。
「きょうだいがいてもいなくても、介護は突然やってくる」(p132)「親の老いを感じていても、介護の覚悟があっても…突然やってくる」(p133)まさにその通りです。
いずれは親をみる覚悟はしていました。親が元気なときから最低年に3回、短くとも2週間ずつは帰省するようにしていました。実家の隣町に住む弟と姉は頻繁に両親を訪ねているようでした。
私から見ると、まだまだ両親だけで二人で暮らせる状態のときから、姉に同居をほのめかされる機会がふえてきました。独身で自由業の私なら、すぐにでも同居できるだろうと言うわけです。
独身はともかく、都会に住んでこそ成り立つ仕事なので、姉弟が考えるほど簡単なことではありません。地方の小都市で仕事をみつけるのは難しく両親にはぎりぎりまで頑張ってほしいと思っていました。
姉の「ほのめかし」が「非難」に変わり始めたころには、両親の状態がどうと言うより私の気持ちの方が参ってしまいました。「いずれ」が「今日」に変わるのはほんとうに突然です。今は、30年以上続けた仕事とは無関係の、パートに毛の生えたようなことをしながら同居しています。
姉は相変わらず頻繁に訪ねてきて、いろいろやってくれますが、「自分から積極的に助けにきてくれて、もう本当にうっとうしい」(p108)というあたり、そのまま私の気持ちです。
姉がうっとうしいだけでなく、友人関係は楽しい付き合いだけ―親の介護と友人関係(p238)など読むと、「俺もそうだな」と苦笑いするしかありません。息子介護=私の介護の問題点がみえてきた気がします。
夫の母が脳梗塞で倒れ、退院後は夫が実家まで通い介護をしています。「俺がやるから、お前は心配するな」と張り切っていますが、私としては、いまひとつ納得できない感じがありました。ですが、第2章の『親の介護と、「妻」との関係』を読んで、自分のもやもやの正体が分かりました。
確かに夫は親の介護をしていますが、夫自身の生活に必要なこと、衣食住子育てはすべて私がやっているだけでなく、夫が持ち帰る両親の洗濯物を洗ってたたんで整理するのは私、母がデイケアから帰る時間に合わせて夫の実家まで行くのは私、平日しかできない市役所の手続きなどは私…例を挙げればきりがありません。
夫にそのつもりはなくとも「俺は1人で介護している」という態度に嫌気がさすことがあります。『妻の貢献なしでは成り立たない「息子=介護者」』(p50)が、夫の意識に全然ないのです。「介護の基礎」は妻に頼っているケースが多い(p52)…そうです、あなたはその代表です!と夫に言いたくなります。
夫も私も一人っ子なので、私自身の親の介護も時間の問題です。今の生活に自分の親の介護が加わったら…と考えただけで恐怖です。実際に介護が始まる前の「俺の親はおれがみるから、お前はお前の親を」という夫のことばを優しさだと思っていた私も甘かった。
今後、子どもを含む自分たちの生活を中心にして、それぞれの親の主たる介護者と協力者としてタッグを組んで行けるようにするために、夫とじっくり話し合うつもりです。話し合いにもっていくだけで疲れそうですが、家庭崩壊を避けるためには目先の不快を避けてばかりはいられないと思いました。
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