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【介護の心理学5】カラーバス効果(color bath effect)

ツァイガルニック効果(Zeigarnik effect)

「カラーバス効果」とは?

英語で「カラーバス」は「カラー(色)」と「バス(入浴)」ですから、意訳すれば「色を浴びる」という意味になります。これだけでは、なんのことかまったくわかりませんね。

「カラーバス効果(color bath effect)」とは、もともとは「定の色を意識したときに、自然と、その色への注目が高まる」という心理的な効果のことでした。

たとえば、テレビの占いコーナーには「本日のあなたのラッキーカラー」のようなものがあるでしょう。そこで、自分のラッキーカラーが「赤」と指定されたとします。すると、通勤しているときに、自然と「赤」を探すようになります。普段は見向きもしないようなポスト、自販機、女性の口紅などが、勝手に目に飛び込んでくるような感覚です。

もともとは、色に関する心理的な効果として広まった概念なのですが、応用できる範囲は、色に限りません。一般に「カラーバス効果」とは「人間は、なにかを意識すると、それに関連する情報を自動的に集めるようになる」といった意味で用いられる用語になっています。特に、マーケティング分野では、よく参照されます。

介護の文脈に「カラーバス効果」を応用すると?

介護の文脈でも「カラーバス効果」はたくさん存在しています。以下、3つほどその例をみてみます。少し例を知れば、私たちの周囲には、多くの「カラーバス効果」があることがわかると思います。

1. とにかく介護のニュースが目につくようになる

介護の世界で、最近ずっと話題なのが「老老介護」や「虐待」のニュースです。話題なので、私たちの意識にも刷り込まれています。すると、私たちは、自分の周辺で「老老介護」になっている夫婦がいないかどうか、積極的に探すようになっていると思います。ちょっとした言い争いをしている老夫婦などを見ると「虐待」に発展しないかドキドキして、気になって仕方がなくなります。

2. 要介護者が、同じ不安をずっと口にする

要介護者が、なんらかのことに不安を抱いたとします。すると、その不安が現実になってしまうことを恐れます。結果として、周囲にそうした不安のタネがないかどうか、常に探すようにもなってしまいます。それが病的になることもあるようです。いちどこうした不安にとらわれると、その不安を裏付けるような情報を無意識にも収集してしまい、もっと不安になってしまうという負のループにはまってしまうのです。

3. 介護のプロが、亡くなった要介護者とモノを結びつける

介護のプロは、多くの別れを経験します。別れの後、その要介護者が生前に使っていたモノ、好きだった食べ物、よく聞いていた音楽などを、普段の生活の中に見つけるようになります。「◯◯さんが好きだったやつだ・・・」という具合にして、こうしたモノを見つけるたびに、その人のことを思い出します。これも、いちど意識すると、関連する情報を探してしまうという「カラーバス効果」の一種でしょう。

「カラーバス効果」は、どうして人間に備わっているのか

人間の脳には、処理能力にも、記憶容量にも、限界があります。そうした状態では、この世界を構成している全ての情報を集める(学習する)ことはできません。逆に言うなら、私たちは、自分に関係のないことに注意を払っている余裕などないということです。

しかし、普段は気にしないことも、いったん「自分との関連性」が意識されると、脳がそれを求めるようになります。喫茶店で、隣の席に座っている集団が、自分の知っている人の話をしていたりすると、その集団を観察するようにもなります。これは、その集団に対して「自分との関連性」が意識されたからです。

こうした傾向が備わっていることによって、私たちは、自分がより良い人生を生きていくために必要になりそうな情報を自然に学んでいけるのです。「カラーバス効果」は、そうした人間の学習に関するメカニズムの一部を説明している概念でもあります。

「カラーバス効果」が生み出す危険性について

逆に言えば、私たちは「自分に関係がなさそうだ」と感じる情報については注意を向けることができないということです。本当は将来必要になるのに、どうにも勉強が進まないということはたくさんあります。

私たちは、子供のころから「英語は、いつかは必要になるから、勉強しておいたほうがいいよ」と言われていたりします。しかし、実際に自分の仕事などでそれが必要になるまで、勉強が進まかったりするのも、その典型でしょう。

同様にして、あらゆる予防的な活動が、なかなか真剣に取り組まれない原因もここにあります。「準備をしておかないと、将来困ることになる」と言われても、私たちはどうしてもそれを「今の自分には関係ない」と感じてしまうのです。

政府でも、企業でも、個人でも、あらゆる行動が後手後手になるのも、これで説明がつきます。人間は、とにかく大変なことになってからでないと、どうしても、物事を真剣に考えることができないわけです。

このリスクを避けるためには、今の自分が学んでいることを棚卸しして、そこに「本当なら、準備として学んでおくべきことはないか?」と考えることです。そうして、勉強すべきテーマが見つかったら、気が向かなくても、それに取り組んでいかないとなりません。

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