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【介護の心理学23】カリギュラ効果とその超越について 『Fire and Fury(炎と怒り)』はなぜ売れたのか

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは?

カリギュラ効果とは、人間は、なにかを禁止されると、かえってその禁止されたことに興味を持ってしまうという現象を示す言葉です。特に、日本のマーケティングの世界ではよく使われる用語です。

たとえば、宣伝文句として「痩せたくない人は、絶対に見ないでください」「綺麗になりたくない人は、ご遠慮ください」「ライバルには、絶対に教えないでください」といったものを目にしたことがあるでしょう。これらは、カリギュラ効果が生まれることを期待して作られたキャッチコピーなのです。

カリギュラ効果という名前は、アメリカとイタリアの合作映画『カリギュラ(Caligula)』(1980年)から来ています。この映画は、かなり過激な内容となっており、アメリカ国内で公開禁止の騒ぎになりました。この公開禁止という措置が、かえって世間の注目を集めてしまったわけです。

実は「見てはいけないと言われるのに、結局、それを見てしまう」という物語は、世界中の古い物語(神話を含む)に共通するものです。パンドラの箱、玉手箱、鶴の恩返しなどなど、挙げればきりがありません。実際に「見たな〜」といった話は、誰もが子供のころから親しんでいるものでしょう。

今、トランプ大統領に関する暴露本と言われる『Fire and Fury(炎と怒り)』が話題になっていますね。内容の真偽はともかくとして、トランプ陣営から出された「出版差し止め請求」によって、この本は、かえって大きな話題になってしまったのです。これも、カリギュラ効果の発動と考えることが可能です。

カリギュラ効果を逆から考えると・・・

カリギュラ効果を逆から考えると、人間は「○○したほうがいいよ」「○○しなさい」「○○に行くべき」といった推奨には、興味を持ちにくいということになります。もちろん、それは発言する相手次第というところもありますが。

とはいえ、誰もが「勉強しなさい」という親の言葉によって、勉強への興味を失ったことがあるはずです。これと同じように、私たちは気づかないうちに、働きかけたい相手に対して、カリギュラ効果の逆を働かせてしまっていることはないでしょうか。

他者からの「タバコはやめないと」「お酒は控えないと」「運動をしないと」といった言葉は、親から「勉強しなさい」と言われるのと同じでしょう。ガミガミ言って行動が変わるくらいなら、子育ても介護も、もっと簡単なはずです。しかし、それは人間の現実ではないということです。

もしかしたら、他者から「酒を飲め!」と強制でもされれば、逆に酒が嫌いになることもあるでしょう。かといって高齢者に対して「酒を飲むのをやめないで」と言えばカリギュラ効果が働くかというと、そんなこともありません。

では、どうすればいいのでしょう。カリギュラ効果に、なんらかの意味があることは明白です。しかし、それだけでは、相手の、特に要介護者(利用者)のありかたに変化を生み出すことは難しそうです。あくまでも仮説にすぎませんが、ここは、もう一段深く考えてみる必要がありそうです。

人間は選択肢がなくなることを嫌う?

カリギュラ効果が示すのは禁止です。カリギュラ効果を逆に働かせる場合は強制でしょう。禁止と強制の共通点は、それによって、相手から選択肢が奪われるということです。『Fire and Fury(炎と怒り)』が売れたのは「出版差し止め請求」によって、その本が読めるという選択肢がなくなる可能性が生じたからです。

結婚を決めたとたんに、他にもっと良い人がいたのではないか、この人で本当にいいのか、といったブルーな気持ちになることをマリッジブルーと言いますね。こうしたマリッジブルーを回避するのが難しいのも、結婚という決断は、自らの選択肢を消してしまうからと考えると納得しやすいでしょう。

実は、介護の現場は、要介護者の選択肢を増やすということを大切にします。要介護者から「こんな身体では○○できない」と言われたら、特にプロの介護職は燃えます。そこには「○○したい」という欲求があるからです。介護職は、その欲求を満たす行為を選択できるように、リハビリを計画したり、代替となる行為を考えたりします。

このように、介護の現場には、相手の選択肢を大事にする価値観がすでに存在しています(そうでないところもありますが・・・)。であれば、タバコ、酒、運動などの場合も、禁止や強制ではなくて、その量をどうするのかを本人に決めてもらって、その目標達成を手助けしたほうが、よりよい結果につながりやすいはずです。

人間ですから、時にはどうしても不摂生をしたいこと(愚行権)もあります。相手からこの愚行権を取り上げるのではなく、それを尊重した上で、相手が理性的に考える手助けをしてあげられたらよいのかもしれませんね。

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