閉じる

プライミング効果(priming effects)を活用した、認知症に苦しむ人への対応について

プライミング効果(priming effects)を活用した、認知症に苦しむ人への対応について

プライミング効果(priming effects)とは?

プライミング効果(priming effects)は「前もって教え込まれた(priming)」+「効果(effects)」という意味の言葉です。認知心理学や脳科学において用いられる用語であり、近年では、認知症の状態にある人の記憶を助ける手法として期待が集まっています。

具体的に、プライミング効果とは、前もってなんらかの情報を与えられると、それに関連したことがらを思い出しやすくなる現象を指しています。たとえば、ある人が、前もって魚に関する情報を与えられていたとします。その人は「赤」という色から、タイ(鯛)などの赤い魚を連想しやすくなります。

優秀な教師は、生徒に記憶してもらいたいことがらの周辺情報を「面白い雑談」として伝えるものです。「面白い雑談」が記憶に残ることで、記憶すべきことがらもまた、その連想の範囲で記憶されるというわけです。この連想ゲーム的な記憶法の背景にも、プライミング効果があるのです。

プライミング効果を活用した認知症の状態への対応

このプライミング効果を活用した、認知症の状態にある人への対応に関する論文があります(相川・藤田, 2016年)。この論文は、認知症の原因として大きな位置を占めているアルツハイマー病(AD)に関するものです。以下、この論文の考察より、一部引用をします。

初期のAD患者において,潜在記憶が保たれることはAD患者の支援をする上で重要な示唆を与えてくれる.すなわち,あらかじめ生活に必要な情報を提示しておくことによって,後の行動がスムーズに行われる可能性がある.たとえば,前に対応したことのある介護者や場面は潜在的に記憶している可能性があるため,対応する人物や場所をあまり変えないようにすることで,AD 患者の安心感を得られると考えられる.このように,保たれた潜在記憶を利用してAD患者が不安に思う状況を少なくすることによって,患者のQOLを保つことができるのではないかと考える.

やや専門的すぎて意味がわかりにくいかもしれません。簡単に言えば、この論文が伝えているのは(可能性として)認知症によって新たなことは覚えることが困難でも、過去のことであれば、連想ゲーム的に記憶が活用できるということです。

「残されている能力」を用いて生きていくということ

介護においては、要介護者となった人物に「残されている能力」を用いて(できるだけ幸福に)生きていくことが目標になります。とくに認知症がある場合、プライミング効果という側面から考えて、この「残されている能力」とは、要介護者の歴史の中にこそ存在すると考える必要があるのです。

ここから、認知症に苦しんでいる人にとっては、住み慣れた地域を離れたりすることは、かなりの負担(リロケーション・ダメージ)になることも理解できます。また、昔から関わりのある人との関係性も、非常に大事になってくることもわかります。思い出の場所や音楽といったものも、大切でしょう。

馴染みの場所、馴染みの人物、馴染みの音楽といったことと、ある特定の人の能力は、切っても切れない関係にあるわけです。ここについての認識が甘く、能力はその人の心身にのみ宿っていると考えてしまうと、大きな間違いに至ってしまう可能性があります。

※参考文献
・相川 倫, 藤田 郁代, 『アルツハイマー病における潜在記憶-プライミング効果からの検討-』, 国際医療福祉大学学会誌 21(1), 36-43, 2016年3月31日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR