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脳内の「やる気スイッチ」が見つかる(ニュースを考える)

脳内の「やる気スイッチ」が見つかる(ニュースを考える)

介護におけるモチベーションの問題

介護において、一番苦労するのは、要介護者の自立に向かうモチベーション(やる気)を高めることです。いかなる介護であっても、介護をする家族や介護職だけが張り切っているだけでは成立しません。要介護者本人が、自らの老いと向き合いつつ、自立を守ろうとしてくれないと介護にならないのです。

介護の主役は、心身に障害を持っていても、それに負けまいとする要介護者です。要介護者が頑張ろうとしていればこそ、介護をする家族や介護職は、それを応援することが可能になります。これを専門的には、パーソン・センタード・ケア(person centered care)と言います。

しかし、モチベーションが低い要介護者は「何もしたくない」「誰とも関わりたくない」「放っておいてくれ」という状態にあります。特に、怪我をしたり、病気になったりして、介護が必要になった直後の要介護者は、絶望の気持ちから、モチベーションが低くなるのも当然です。

要介護者の周囲にいる人々は、そんな要介護者を勇気付け、なんとか前を向いてもらうように頑張ります。多くの要介護者が、それで徐々に元気になっていくものですが、それでも少なからぬ要介護者は、モチベーションを高めていくことに失敗し、孤立してしまいます。

そうした状態にある要介護者に対しては、パーソン・センタード・ケアが機能しません。そうなると、介護の目的である自立支援もできません。介護というよりも、身の回りの世話レベルの対応しかできなくなってしまうのです。

それでもいいと、要介護者は言うかもしれません。しかし、モチベーションが低いままに生活をすると、要介護者の要介護レベルは、維持・改善することができず、むしろ悪化していくことになります。結果として、家族の負担は増してしまい、介護にかかる費用も大きくなっていってしまうのです。

脳内の「やる気スイッチ」が見つかる

なんと、脳内の「やる気スイッチ」を見つけたという報道がありました。「やる気スイッチ」とは、要するに、低くなってしまっているモチベーションを高めるためのスイッチのことです。これをオンにできたら、それで、先のモチベーション問題は解決してしまうかもしれないのです。以下、マイナビニュースの記事(2017年2月2日)より、一部引用します。

慶應義塾大学(慶応大)と北海道大学、防衛医科大学校、生理学研究所(生理研)らは2日、マウスを用いた実験で意欲障害の原因となる脳内の部位を特定したと発表した。(中略)

意欲障害は、認知症や脳血管障害など多くの神経疾患で見られる病態で、認知症などの神経変性疾患、脳血管障害や脳外傷などの脳の障害ではいずれも高い頻度で認められる。だが、その原因は「脳が広範囲に障害を受けたときに起こる」ということ以外不明だった。(中略)

大脳基底核と呼ばれる脳領域の限られた細胞集団が障害を受けるだけで意欲が障害されること、この細胞集団が健康でないと意欲を維持できないことを発見した。「やる気」を生むにはそのほかにもいくつかの部位が必要であると推測されているが、同研究ではじめて「やる気」を維持する脳部位・細胞腫を特定した。

今回の成果を受けて研究グループでは、治療法が不明だった脳損傷後の意欲障害における治療法を探索することが可能になるとコメントしている。

この研究は、脳の損傷に原因のあるモチベーションの低下に関するものではあります。ただ、もしかしたら、一般的なモチベーションの低下であっても、ある種の脳の損傷(小さな損傷)が原因である可能性があります。その場合は、この研究から、治療法が見つかるかもしれません。

もちろん、物事はそんなに簡単には進みません。実際には、モチベーションの課題を解決するような治療法の確立には、何十年もかかるかもしれません。ただ、この課題は研究者たちにとっても重要なもので、今後の進展が期待できる分野であるということは、多くの人にとって希望になるでしょう。

※参考文献
・マイナビニュース, 『慶応大と生理研ら、脳内の「やる気スイッチ」発見-意欲障害の治療に展開』, 2017年2月2日

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