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人口減少が与える介護への影響(国勢調査結果を受けて)

人口減少が与える介護への影響

国勢調査(こくせいちょうさ)結果が発表されました

総務省が、国勢調査(2015年)の結果を発表しました(5年に1度実施される)。結果として、外国人を含む日本の総人口は1億2711万47人でした。これは、前回の国勢調査(2010年)から、94万7305人の減少です。1920年の国勢調査の開始以来、はじめての人口減少として、ニュースになっています。

「94万人以上」という人口の減少数は、福井県(74万人)、山梨県(83万人)、鳥取県(57万人)、島根県(69万人)、徳島県(75万人)、高知県(72万人)、佐賀県(83万人)といった、一つの県がまるまる消滅する規模です。今後の日本では、5年ごとに100万人近い人口が減っていくわけで、このインパクトは相当なものです。

「そんなの、わかってたでしょ?」「日本の人口減少は、これまでにも発表されてきたのでは?」「いまさら、人口減少を騒ぎ立てるのはなぜ?」という疑問もあると思います。

国勢調査の結果が重いのは、国勢調査は他の各種統計とは異なり、統計法で「基幹統計調査」と定められた特別なものだからです。もう少し、詳しく考えてみます。

自治体の財政に直結する人口統計であることが重い

もっとも影響が大きいのは、国勢調査によって明らかにされた人口は「法定人口」とされることです。特に財政面で、この「法定人口」により「地方交付税」の配分が決まるところが重要です(地方交付税法12条3)。

「地方交付税」とは、いったん国に集まった税金を自治体に分配していくものです。特に、税収が減っていて、財源に苦しむ自治体にとっては「地方交付税」の分配が減ってしまうことは死活問題になります。

自治体は、それぞれに財政状態が違います。厳しいところは、財政の50%以上を、この「地方交付税」に依存しているのです。そして、今回の国勢調査で人口減少が明らかになってしまった自治体は、この、財源の根幹が消えていくのです。

今回の国勢調査では、全国1,719市町村のうち、1,416市町村(82.4%)で人口が減少していることが判明しました。こうした自治体では、今後、ますます財政難が進行していき、人口を増やすための施策のための資金もなくなっていきます。

今回の国勢調査は、人口が減少している8割以上の自治体にとっては「人口増加に向けた投資資金の確保ができなくなる」という意味を持っています。人を呼び込んだり、子供を生み育てやすい環境を整備したりするためのお金がなくなっていくのです。

人口減少は、政治の責任問題である

この国勢調査は、8割以上の自治体は消滅の危機にあること・・・というより、過去の人口対策のために使ったお金に意味がなかったことを露呈しています。ですから、その自治体を仕切ってきた政治には、経営責任があるはずです。

これは、多くの自治体にとって「投資の失敗」であり、なにか「ものすごく運のよいこと」が起こらない限り、すでに「消滅することが確約されてしまった」というところが恐ろしいのです。

もちろん、自治体のみならず、日本国としての人口が減ってしまっていることについては、国の政治に責任があります。特に、少子化対策が、もはや、時期を逸してしまったことは残念です。今から少子化対策をしても、人口減少は止められません。

これは、政治家の失敗であることは明らかです。同時に、そうした政治家を選出してきた市民としても、今後は考え直さないとならないでしょう。人間は、どうしても問題を先送りしてしまう生き物です。だからこそ、先送りをしない行動力をもった人物を政治に参加させないといけなかったのです。

人口が減少する自治体の介護はどうなるのか?

介護保険の財源は(1)介護保険料:50%(2)国からの税金分配:25%(3)都道府県からの税金分配:12.5%(4)市区町村からの税金分配:12.5%となっています。このうち「地方交付税」の影響が出るのは(3)と(4)です。これが厳しくなります。

自治体の財政によって、すでに介護への対応が大きく異なっていることは、過去に『住んでいるところで全然ちがう!介護サービスの地域格差で「損」をしないために』という記事でも言及しました。

こうした介護サービスは「地方交付税」の分配が増える自治体(人口が増えた自治体)では、より充実していくことになります。しかし「地方交付税」の分配が減る自治体(人口が減った自治体)では、悪化が避けられないでしょう。

介護サービスの地域格差は、これから、さらに広がっていくということです。たとえば、24時間365日の介護対応を定額で行ってくれる「定期巡回・随時対応型訪問介護」を受けられる自治体では、介護離職も減らせる可能性があります。しかし、こうしたサービスがないところでは、介護の負担を自分でなんとかするために、仕事を辞めざるを得ない人が増えるでしょう。

介護離職をした人は、次の仕事は、介護のための財源のない自治体で探すことはありません。介護サービスの充実している別の自治体に引っ越した上で、充実した介護サービスを受けながら復職するという選択をするはずです。

今後は、自治体の「介護力」のランキング情報も入手しやすくなっていきます。すでに、日経ビジュアルデータが「あなたの街の「介護力」は?」というサイトをオープンしています。

人口が減少する自治体にとって最後の希望になる「日本版CCRC構想」

介護サービスの地域格差は、人口が減少している自治体にとっては、さらに加速度的に人口を減らす要因です。こうした中、介護施設や介護職員の不足が深刻化している都市部から、高齢者に移住してきてもらうという「日本版CCRC構想」は(おそらく)最後の希望です。

この「CCRC構想」に対して積極的な自治体のリスト(75団体)は、すでに公表されています。このリストに漏れている自治体は、早急な対策が必要でしょう。

なんだかんだで、ここまでの国勢調査では、日本の人口は増えてきたのです。これが、今回以降は、確実に毎回、人口が減っていきます。結果として介護の財源がなくなり、さらに人口が減り、地域格差は広がっていきます。

外国人を受け入れてこなかった、よそ者を受けいれてこなかった、女性に優しくなかった、固定した社会階層を守ってきた・・・そうした自治体が消滅するのは、実は、自由を重視する民主主義だからこその結果です。

人口の変化とは、すなわち、その自治体に対する「真の投票」としての意味があります。だからこそ、人口の統計は、とても重要な指標なのです。

※参考文献
・総務省統計局, 『平成27年国勢調査 人口速報集計結果 全国・都道府県・市町村別人口及び世帯数 結果の概要』, 2016年2月26日

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