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みんなの負担、介護保険料が上がります。これからも、まだ上がります(ニュースを考える)

介護保険料が上がる

ほぼ毎年、過去最高の介護保険料を更新しているような状態

日本の介護財源は、主に税金と、40〜64歳の日本人が負担している(支払っている)介護保険料によって成り立っています。これは「賦課方式(ふかほうしき)」と言って、現役世代が、そのときの高齢世代の社会福祉の負担をするという、日本のやりかたです。

40〜64歳の現役世代による介護保険料の支払いは、介護保険が始まった2000年度には月額2,075円でした。これが2016年の今年度は、月額5,352円になる見通しです。15年程度の期間で、月額にして倍以上の負担になっています。

この流れは、少なくともあと10年は止まりません。現役世代の負担は、これからも上がり続けます。そして、日本の社会福祉のレベルは、逆に下がり続けるでしょう。これは、現役世代の数が急速に減り、高齢者世代の数がその分だけ増えるからです。

現代は、介護保険を支払ってきた人が、もらう人になるという大きな転換点にあります。そうなると、賦課方式では、減る現役世代が、増える高齢者を支えるという図式になってしまうのです。

結果として、今は「まだ」月額5,000円程度ですが、あっという間に1万円に近づいていくでしょう(1万円で止まればラッキーです)。ですが、こうして現役世代の負担は増えても、高齢者の数も増えるので、高齢者1人あたりに使える介護保険の金額は減っていきます。結果として、受けられる社会福祉のレベルは下がっていくことになるのです。

消費税率が上がることにはうるさいのに、介護保険料にはうるさくない

不思議なのは、日本人の多くは、消費税率が上がることについては敏感で、メディアなども大きく報道します。しかし、介護保険料の上昇については、あまりなにも言わないのです。ですが本当は、介護保険料も、税金の一種なのです。

強制的に徴収されますし、集められたお金の分配については、国民からは見えにくいという意味では、税金そのものです。徴収されるときの論理は「介護保険料は、支払っている人に戻ってくる」というものですが、賦課方式を採用している日本では、これはウソです。積み立てているわけではなく、支払われたお金は全て使われてしまっていますから。

社会保険料には、この介護保険料以外にも、健康保険料(医療)、厚生年金保険料(年金)、雇用保険料(ハローワークなど)、労災保険料などがあります。これら社会保険料は、すべて、実質的には税金です。

消費税の増税が大きく議論される中で、上昇し続けるこうした社会保険料の総額は、なぜか話題になりません。この背景には、社会保険料は、自分のところに返ってくるという信頼があるのですが、それはもはや事実ではありません。

このままでは、日本の社会福祉は破綻する

破綻という言葉の意味するところは、その理想とするところが失敗に終わるということです。社会保険料は、本来、不運にも社会的弱者となってしまった場合の保険なのです。しかしもはや、増え続ける社会的弱者の数に対して、現役世代は負担できないところまできています。

このままのペースで社会保険料が上がっていくと、2050年には、私たちの「給与」の、なんと80%までもが、社会保険料として徴収されるという試算があります。たとえば、月給30万円の人の「手取り」は、6万円になります。これは、理屈を抜きにして、無理です。

そうなると、社会保険料の上昇はどこかで止まります。ここが止まると、今でもギリギリの(というか漏れはじめている)社会的弱者を救済するという理想は、維持できなくなります。社会的弱者になると、生きるための基本的なことすらサポートされなくなるのです。

解決策は、大きく言って2つしかない

できることは限られています。このまま、破綻を進めるというのが一つです。破綻が起こると、社会的弱者の数が増えます。すると、そうした人が政治活動に活発に参加するようになり、政治家は、この声を無視できなくなります。

一度、破綻させてから社会構造を変えるというのが「ハードランディング(地面に叩きつけられるような落下)」のシナリオです。このシナリオは、多くの犠牲者が出てからの変革になることが問題です。しかし同時に、改革は徹底的になり、既得権者は生き残れなくなります。

これに対して、破綻を回避するように社会構造を変えるというのが「ソフトランディング(軟着陸)」がもう一つのシナリオです。こちらのシナリオでは、犠牲者が出る前に社会構造を変革するということになります。

このほうが理想的ですが、同時に、危機感が広く共有されないので、課題への対応はそこそこになりがちです。既得権者も少なからず生き残るので、抜本的な対策にはなりにくい可能性が高くなります。

注意したいのは、過去の日本を鑑みるに「ハードランディング」の可能性のほうが高いということです。すると、これから20年程度の期間は、誰にとってもかなり苦しい時期になるということです。ここへの覚悟を持った上で、目の前の介護に向き合っていかなければなりません。

※参考文献
・東京新聞, 『16年度介護保険料 過去最高 月5352円』, 2016年2月20日
・橋本英樹, 『財政破綻は医療を破綻させるか?』, 東京大学金融教育研究センター, 2013年9月27日
・池田信夫, 『なぜアベノミクスで不況になったのか』, 2015年11月19日

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