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介護職は、ストライキを(実質的に)起こせない。社会がそれに甘えている。

介護職はストライキを起こせない

介護職がストライキを起こしたらどうなるか?

介護職は、多くの要介護者にとって、生きるために必要な存在です。介護職がいなければ、食事も風呂も排泄もできず、生きていけない要介護者も少なくありません。そんな介護職がストライキを起こしたら、どうなるのでしょう。

たとえば、介護施設の介護職全員がストライキを起こせば、その施設に入居している要介護者の中に死者が出る危険性さえあります。訪問介護で独居の要介護者のサポートをしている介護事業者の介護職全員がストライキを起こせば、やはり非常に危険です。

要介護の度合いにもよりますが、要介護者にとっての介護職は、ダイバーにとっての酸素ボンベのような存在です。そんな重要な立場にある介護職が、労働条件の改善を求めてストライキを起こすことは倫理的にできません。

もちろん、介護職であっても、組合を結成して、経営者に労働条件の改善を訴えることはできます。しかし、ストライキを起こすとなると、多くの介護職は、どうしても踏み切れないはずです。掲示板などでも、介護職のストライキが話題になることがありますが、基本的に「それはダメ」という意見が大半です。

国や、一部の経営者は、要介護者を「人質」にしている

現在の介護職の待遇は、ほんとうにひどい状況です。年収ベースでは、全産業平均よりも100万円以上も安い状態にあります。この状態を生み出しているのは、介護保険制度を設計している国・政府です。また、介護事業の経営者にも問題がある場合もあります(全ての経営者が悪い訳ではありません)。

通常であれば、国や経営者に問題があれば、労働者はストライキを起こすことができます。しかし、介護職の場合は、ストライキを起こせば、要介護者の命が危なくなるわけです。

これは、要介護者が「人質」に取られているのと同じことです。介護職の多くは善人ですから、要介護者の命を危険にさらしてまで、賃金を上げたいという気持ちにはなりません。こうした介護職の立場に甘えているのは、私たち一人一人(社会)でもあります。

介護職に助けられ、それに感謝をしながらも、介護職の待遇改善について具体的なアクションを起こせないでいるのは、決して良いことではありません。ブログ、SNS、投票、政治活動などで、介護職の待遇改善に言及していくべきだと思います。

公務員はストライキを起こすことを禁止されている

日本の公務員は、ストライキを起こすことを禁止されています(国家公務員法第98条、地方公務員法第37条)。その理由の1つが「社会機能の麻痺」です。警察、消防、自衛隊などがストライキを起こせば、この社会を構成する基本的な機能が麻痺してしまうからダメという論理です。

ストライキを起こせない代わりに、日本の公務員には、安定した雇用、高い賃金、充実した福利厚生が認められています。「社会機能の麻痺」が起こってしまわないように、ストライキが必要ない条件を与えているのです。

先に考えたとおり、介護職も(実質的に)ストライキを起こせません。その理由は、警察、消防、自衛隊などと同じように、ストライキを起こしてしまえば「社会機能の麻痺」が起こってしまうからです。麻痺どころか、死者が出る可能性も高いのです。

やはり、デンマークのように、日本も介護職を公務員にすることを検討すべきだと思います。それができなくても、ストライキが起こせない分だけ、労働条件を有利なものにする必要があるでしょう。

マクロに考える必要のある問題を、ミクロにすり替えるのは間違っている

2025年までには、介護職を、今よりも約80万人増やさないとなりません。しかし、今の介護業界よりも、労働条件の悪い業界で働いている人は、ほとんどいません。そんな介護業界に、別の業界から新たに転職してきて定着する人が、毎年10万人以上もいるでしょうか。

約80万人の人員確保とは、マクロな問題です。マクロに考えれば、福利厚生も含めて、待遇が良い業界に人材が集まります。実際に、今の大学生の就職先人気のトップは、だいたい公務員です。

本気で、約80万人という規模の人材不足を解決していくには、マクロには待遇の改善しか打ち手がないはずです。一番良いと思われるのは、やはり、介護職を公務員にすることです。公務員は、日本で人気トップの職種ですから、人材の確保にも困らないでしょう。

「介護職には、お金を求めない人もいる」という意見もあります。それは事実ですが、あくまでもミクロな事実です。ブラックな環境でも頑張れる人がいるのはミクロな事実ですし、ブラックではない優良な介護事業者がいるのもミクロな事実です。

このとき、ブラックな環境でも頑張れる人材の特性を明らかにして、そうした人材を採用・教育しようとする方向性は間違っています。ミクロな精神論で、マクロな問題を解決しようとするのは、先の大戦を振り返るまでもなく、日本の悪い癖です。

あまり言いたくありませんが、介護業界全体をマクロに見た場合、その労働条件はブラックそのものです。しかも、介護職はストライキを起こすことができない状態にあります。本当に、介護業界の人材不足を解消するつもりがあるのなら、国は、介護職の待遇に手をつけないとなりません。

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