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貧困化する高齢者に対応しながら、破綻していく介護事業者。この「絶望」は止められるのか

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必要な介護サービスを購入するお金がなくなるとき

介護には、お金がかかります。要介護認定を受ければ、その一部は介護保険が負担してくれますが、自己負担(1〜2割)もあります。そして国の財政難から、自己負担の部分はだんだん大きくなってきています。

ですから、必要な介護サービスがあるのに、どうしてもお金が足りないというケースも増えてきています。では、お金がない被介護者は、放っておいてよいのかというと、そういうわけにもいきません。

介護の現場にいるプロたちは、実質的に「持ち出し」となるようなサービスを強いられています。日本における介護は、こうしたプロたちの「善意によるボランティア」がなければ、成り立たないというのが現実です。

こうしたボランティアの存在によってなんとか成立しているのが日本の介護です。それなのに、破綻する介護事業者に対して「経営責任だ」と言う人がいるのは、どうなのかと思ってしまいます。そして、介護事業者の破綻は増えています。

「長生きするリスク」を考えるべき段階にきている

長生きすることは、いいことです。ただ、長生きすればするほど、医療や介護にかかる費用が膨らんでいきます。蓄えもいずれ底をつき「まさか自分が」という人が破綻し、生活保護が必要になったりもします。

「長生きするリスク」という言葉があります。蓄えから逆算して、あと何年は大丈夫だと思っても、医療費や介護費の自己負担部分は一定ではありません。国の財政難から自己負担分は、今後、大きくなることはあっても、小さくなることはないでしょう。

さらに、日本における国の借金(国債発行残高)はどんどん増えています。これを解消するためには、今後の日本経済には「インフレ」が必要です。「インフレ」というのは、要するに、お金の価値を下げるということです。そうなると物価が上がります。結果として「これだけあれば」と思っていた蓄えも、目減りすることになります。

「長生きするリスク」と「インフレ」から、今後、高齢者の生活保護受給者は増えていくでしょう。「自分はそうならない」とは、誰にも言えない状況になっています

介護業界で働く人々の「善意」について知って欲しい

現在、生活保護を受けている高齢者は、全国で80万人ちかくいます。高齢者は、生活保護受給者の4割を占めており、長く、社会問題として認知されてきました。しかし、あくまでも認知されているだけで、抜本的な対策はありません。

そして既に、生活保護のための国の財源も枯渇してきています。たとえば家賃分として支給される金額は、どんどん減らされています。そうなると、生活保護を受給している高齢者は、より家賃の低いところに引っ越さなければなりません。

当然、引っ越しのための費用はありません。費用だけならまだしも、そもそも要介護者は身体が不自由なのですから、自分で引っ越しをすることもできません。

こうした要介護者・生活保護受給者の高齢者の引っ越しを、介護現場にいるプロたちが無償で実施していたりします。人によっては、毎週だと聞きます。激務の中、せっかくの休日を返上して、こうしたボランティアをしている人々がいるという事実は、広く知られるべきです。

特に家族がいない、生活保護を受けている高齢者に対して、善意ある介護のプロたちは「契約外だから対応できない」とは言えないのです。しかし、こうした契約外のことに関われば関わるほどに、介護事業者のビジネスは圧迫されます。

結果として、貧困状態にある高齢者に、人間としての善意ある対応をボランティアで実施している介護のプロたちの人事評価は、低くなってしまいます。一人当たりの売上が低くなるからです。善人であればあるほど、損をするようなシステムが、現実として運用されているわけです。この現実は、必ず、改革されなければなりません。

ちいさな希望としてのNPO(非営利団体)増加

医療従事者、介護業界のプロにだけ、この状況を押し付けるのは、もはや無理です。そうした中、国内のNPO(非営利団体)の数や、なんらかのボランティア活動に参加している人の数は増えてきています。

NPOだけで、本質的な問題の解決にはならないかもしれません。ただ、この「人間の優しさ」を拡大するというアプローチは、ちいさな希望であることは間違いないでしょう。私たちも、自分に可能な範囲で、なんらかのボランティア活動に関わっていくことを検討すべきだと思います。

「人間の優しさ」だけでは無理という場合、たとえば誰かの介護を無償で行ったら、自分が介護される側になったときに、同じだけの無償のサービスが受けられるとか、そうした「金銭を介在させない社会サービスの仕組み」のようなものが必要かもしれません。

とにかく、本当に深刻なレベルにきています。
 

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