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タイタニック号の救命ボートが足りない(生活保護の現実)

タイタニック号の救命ボートが足りない(生活保護の現実)

生活保護を受ける人の約半数は高齢者という現実

生活保護の受給者は、65歳以上の高齢者が人数として45.5%(2015年時点)をしめています。また、生活保護を受けている高齢者世帯の数は約88万世帯あり、過去最高の記録を更新しつづけているような状況です。

東京新聞(2019年2月6日)が『高齢者生活保護、また最多』としてこれを取り上げています。とはいえ、このニュースを取り上げている大手メディアはほとんどなく、取り上げていたとしても、きちんと深堀りしているところは、ほぼ存在しません。

もちろん、現代の日本では、高齢者の数が相対的にも増えているのですから、この傾向は今後も続きますし、ニュース性は低いのかもしれません。ただ、少なからぬ人は、人生設計に介護を想定していないのが実情ですから、近未来は、生活保護を必要とする世帯が急増することが想定されます。

そして、広く知られている通り、日本は生活保護を受けにくい国です。生活保護を受けるべき人の中で、実際に受けられている人の割合を特に生活保護の捕捉率といいますが、日本の捕捉率が15〜18%程度なのに対して、ドイツは65%、イギリスは47〜90%、フランスは92%となっています。

現役世代の生活保護は減っている?

気になるのは、前年比として、生活保護を受けている世帯は、高齢者世帯において伸び続けているのですが、高齢者をのぞいた世帯では減少を続けているという点です。それだけ、高齢者以外の年齢層では、生活保護を必要としない世帯が増えているのであれば嬉しいのですが、別の見方もあるでしょう。

この別の見方とは、増え続ける高齢者世帯の生活保護のための財源確保に、高齢者以外の年齢層が犠牲になっているというものです。現役世代においては、本来であれば生活保護を受けるべきなのに、自治体の窓口などで「追い返されている人」が増えているのかもしれないのです。

そもそも、日本の捕捉率は、諸外国と比較してもかなり低い数字になっていることは、先に述べた通りです。しかし現役世代の生活保護の捕捉率といった数字は、なかなか入手することができず、現実が見えにくいのです。また、自治体の窓口で「追い返されている人」の割合も知りたいところです。

政府統計が話題になっていますが、統計の間違いだけでなく、必要なのに存在しない統計についても、考えていく必要があるでしょう。社会的弱者について、統計的に正しく理解することは、あらゆる政策の基礎となるはずです。もっと統計を重視する必要があることは明白なのです。

私たち自身の未来として認識する必要があるが・・・

生活保護は、どこかの誰かが必要とするものではありません。私たち自身の生活は、ちょっとした事故や病気などの不運によって、簡単に破綻します。そうした破綻は、確率の問題として起こっていくわけですから、そのセーフティーネットを充実させていくことは、他の誰でもない、自分自身のためにこそ必要なのです。

ただ、悲しいことですが、私たち人間は、実際に自分の身に起こっていないことを想像する力に欠けています。「自分は大丈夫だろう」というのは、心理学的には正常性バイアスと呼ばれる、認知上のエラーとして知られています。大丈夫ではないのです。

生活保護を必要とする高齢者が急増している影で、現役世代の生活保護がカットされている可能性があるのなら、この点を国に問いただす必要があるはずです。それでも、こうしたことは、人々の関心には登りにくいという傾向があるわけで、なんとも暗い気分になります。

日本というタイタニック号には、準備されている救命ボートが足りていません。私たちは、タイタニック号が沈まないことを祈るのではなく、救命ボートを増やす方向に対して当事者意識を高めていくべきではないでしょうか。

※参考文献
・厚生労働省, 『生活保護制度の現状について』, 2017年5月11日
・東京新聞, 『高齢者生活保護、また最多』, 2019年2月6日
・日本弁護士連合会, 『今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているの?』

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