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年金の受給開始年齢が、70歳以降にも後ろ倒しできるようになる?

年金の受給開始年齢が、70歳以降にも後ろ倒しできるようになる?

年金の財源不安と受給開始年齢の引き上げ

年金が危ないということは、誰もが知っていることでしょう。危ないというのは感情的な話ではなく、要するに、支払った年金ともらえる年金のバランスが、どんどん悪い方に偏っていくということです。かつての年金は、おトクな金融商品でしたが、それはもう維持できないということです。

いまのところ、年金の受給開始は、65歳からということになっています。この受給開始年齢を遅らせる(後ろ倒しする)と、年金の財源問題は、少しは緩和します。そこで政府は、年金の受給開始年齢を、なんとか後ろ倒しさせる施策を考えてきました。

現在も、年金の受給開始は原則65歳からですが、本人の希望によって70歳まで後ろ倒しすることが可能です。後ろ倒しすると、もらえる年金が増える可能性があるという触れ込みになっています。しかし、実際にこれを66歳以降に後ろ倒ししている人は1%程度にすぎず、政府の思惑どおりにはなっていません。

当然、政府はこれに焦っています。また、若い世代も、年金の世代間格差について認識しており、年金をめぐる議論についてシラけてしまっています。年金を納めていない未納者は全体の5%程度ですが、これは年々増えてしまっています。

年金の受給開始年齢70歳以上も選択可能に

こうした背景がある中、政府はさらに、年金の受給開始を70歳以降にまで後ろ倒しできるようにする方針を打ち立てています(朝日新聞, 2018年)。70歳まで後ろ倒しできるというものを、75歳、80歳という具合に、その上限を上げていくという話です。

しかし、現時点でも、66歳以降に後ろ倒ししている人が1%程度にすぎないのに、この上限だけを上げても、効果があるとは考えにくいところです。当然、政府もその点には気づいているはずで、ただ、70歳以上にまで、選択範囲を広げるということにはならないはずです。

ここで、少し怖いのは「高齢者は75歳から」という、高齢者の定義の見直しが進んでいることです。たしかに、現代の65歳の多くは、まだまだ元気で活躍できる状態にあります。年金というのは、言い方を変えれば、終身の失業手当でもあります。ですから、年金の受給開始は本当に65歳からでいいのか、というのは、議論できるところでしょう。

年金の受給開始が後ろ倒しされるのは、国民からすれば大きな不利益であり、受け入れがたいものかもしれません。しかし、国の財源問題を直視すると、この限られた財源は、本当にお金のない社会的弱者のために利用されるべきもので、余裕のある高齢者が受け取るべきものでもありません。

年金をめぐる今後の見通しについて

政府としては、本音では、年金の受給開始を75歳からにしたいはずです。ただ、いきなり75歳からとしてしまうと、大きな反発があるだけでなく、少なからぬ人々の生活が破綻してしまいます。そこで考えているのが、仕事をしている高齢者の年金支給額を減らすということです。

これは、在職老齢年金として、すでに制度化されている話です。ただ、その中身は、今後、国民にとって厳しい方向に変更される可能性が高いと考えられます。これは、年金だけでは足りないけれど、仕事をしていると、ほとんど年金がもらえないといった方向です。

ここで、本当に年金がもらえないということになってしまうと、反発が大きくなりすぎるでしょう。そこで、そうした年金はもらえないのではなくて、後ろ倒しの強制的な選択にすぎないということにすれば、納得感も得られる可能性が高まります。

つまり、65歳以降も仕事をしていると年金はもらえないのですが、仕事をやめた後は、過去もらえなかった期間が長ければ長いほど、受給できる年金が増えるという仕組みになると考えられます。もちろん、こうして実際にもらえる年金の総額という視点からは、もしかしたら損をすることになります。

総額だけで考えれば、65歳で仕事をやめて年金生活に入ったほうがおトクかもしれません。しかし、仕事を通して社会とつながり、現役を引退したあとは、毎月余裕のある生活ができることを選ぶ人も少なくないと考えられます。

※参考文献
・朝日新聞, 『首相、年金開始70歳超「3年で」 金融緩和出口も言及』, 2018年9月14日

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