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体育館の敷地を自分のものにすると、自治体から1,340万円もらえる?

体育館の敷地を自分のものにすると、自治体から1,340万円もらえる?

マイナス入札という最後の手段

自治体などの公的機関が何かを売るとき、入札という方法をとることがよくあります。売り出す物に対して、もっとも高値をつけてくれる人に、それを売るためです。税金で作られたものを、少しでも高く買ってもらえれば、税金の無駄遣いを減らせます。

ハコモノ行政と揶揄されるとおり、日本には、そうして買い手を求めている建物が多数あります。民間企業としても、入札を上手に利用すれば、安値で価値のある建物を取得できるのですから、悪い話でもなさそうです。しかしそろそろ、こうした入札も有効ではなくなってきています。

埼玉県深谷市の、廃校になった学校の体育館が、過去2回、こうした入札にかけられました。しかし、誰も買いたいという人が出てこなかったのです。そこで深谷市は、なんと、この体育館をもらってくれる人に、体育館を渡すだけでなく、加えて1,340万円を支払う、マイナス入札と呼ばれる活動を予定しているというのです。

もちろん、条件はあります。体育館をもらうことにした場合、その体育館はその人が解体し、その土地の上には、住宅を建てなければなりません。1,340万円は、そのときの解体費用や住宅建設費用の一部として利用されることを想定したものです。当然ですが、この1,340万円は税金から支払われます。

どうしてこんなことになってしまったのか

なんともおかしな話に感じられるでしょう。しかし、これと同じ話は、これから、日本全国で出てきます。背景にあるのは、人口減少です。現代の日本では、毎年500もの学校が廃校になっており、その建物の再利用が大きな課題になっているのです。

優れた再利用は表彰されたりもしていますが、基本的には、再利用に成功するのは、立地のよいところばかりです。しかし再利用が進まないと、誰も使わない校舎であっても、維持費がかかります。少なからぬ自治体には、この維持費を支払う体力さえ残されておらず、末期的です。

今回の深谷市のマイナス入札も、こうした背景を持っています。とにかく、お金を払ってでも誰かに所有権を移転しないと、財政が破綻してしまうのです。似たようなことは、温泉街に建てられたリゾートマンションなどでも起こっています。民間でも、維持費を嫌った、不動産の投げ売りが多数発生しています。

しかし、寂れていて、そこに行ってもなんの楽しみもない土地に、価値はつきません。かなりの維持費がかかる壊れたテレビを買う人はいないわけです。そんな、ババ抜きのようなことが、日本各地で発生しています。悲しいことですが、これが日本の現実です。

歴史は繰り返す?遺跡はそうしてできた

かつて、栄えた文明も、現代となっては、完全に遺跡として扱われているでしょう。いまの日本に起こっていることは、それと同じことです。これから、マイナス入札でも、誰も手をあげないということが発生していきます。そして、日本には廃墟としか呼べないところが増えていくことになるでしょう。

廃墟は、時間とともに遺跡になっていきます。遺跡として味を持てば、それは観光資源にもなり得ます。ただ、廃墟が遺跡と呼べるようになるまでは、少なくとも数十年という時間が必要です。その間は、こうした廃墟は肝試しに使われるくらいで、活用されることはないでしょう。そして、その地域から人がいなくなるわけです。

マイナス入札でも、もらい手が出てこなかったというニュースは、自治体にとって致命的です。そうしたニュースは、その地域の地価の下落と、人口の流出を加速させてしまうからです。それでもなお、マイナス入札に希望をもつしかないほどに、自治体の多くは弱り切っています。

問題は、廃校だけではありません。橋やトンネルの維持費も、自治体の衰退を加速させています。遠くない将来、少なからぬ自治体は、解散を選択することになります(実務的には他の自治体と合体することになる)。人口減少とは、そうして遺跡をつくっていくということなのでしょう。

※参考文献
・東京新聞, 『深谷市、マイナス入札へ 旧小学校の体育館敷地 予定価格「-1340万円」』, 2018年11月1日

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