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カナダのベーシック・インカム実験が中止に追い込まれた

カナダのベーシック・インカム実験が中止に追い込まれた

ベーシック・インカム制度への期待

ベーシック・インカム制度とは、年齢や性別、仕事のあるなしによらず、とにかく、そこで暮らす人々に対して、毎月定額のお金を配ってしまうという制度です。これにより子育て世帯の教育費は充実し、社会保障制度が簡素化され、犯罪の防止や医療費の削減など、とにかく様々な効果が生まれると期待されています。

特に、これからの人工知能の発展は、今後、日本だけでも2030年までに730万人の雇用を奪うと試算されています。大量に生まれるであろう失業者への対応として、ベーシック・インカムが整備されていたら、優れたセーフティーネットとしても機能するでしょう。

そうした期待から、このベーシック・インカム制度の実験は、世界中で行われています。しかし、ここ最近になって、こうした実験の結果が思わしくない方向で露出してきました。世界最大規模の実験とされていたカナダのケースが、大きな転換点を迎えてしまったのです。

カナダでは世界最大規模の実験が行われていた

カナダで行われていた、世界最大規模のベーシック・インカム制度の実験については、これまで多くの報道がなされてきました。その制度について、まず、MIT Technology Reviewの記事(2018年7月27日)より一部引用します。

カナダのオンタリオ州ではベーシック・インカム(最低所得保障制度)の大規模な実験が実施されている。4000人を対象に年間1万3000ドルを3年間支給する世界最大規模の実験だ。シリコンバレーが考えるユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)とは異なるこの取り組みは、人々の不平等を減らし、働き方や暮らしを変え始めている。(中略)

この実験にかかる費用は、年間約5000万カナダドル(約3800万米ドル)だ。これをカナダ全土に広げると、年間430億カナダドル(約326億米ドル)かかるだろう。だが、この実験を計画した保守派のヒュー・シーガル元上院議員は、政府にとって長期的にはコスト削減になると考える。(中略)

このカナダでのベーシック・インカム制度の実験が中止に・・・

しかし残念なことに、先のMIT Technology Reviewの記事が日本で公開されてわずか数日後に、Business Insiderが、このカナダでの実験が打ち切られたことを報道(2018年8月2日)しています。以下、その報道から一部引用します(改行位置のみKAIGO LABにて修正)。

カナダ・オンタリオ州の新政権は7月31日(現地時間)、ベーシックインカムの導入実験を打ち切った。導入実験ではオンタリオ州の4000近い人が毎月、無条件でお金を受け取っていた。実験は前首相キャサリン・ウィン氏が始めた。(中略)

新政権の子ども・コミュニティー・ソーシャルサービス大臣、リサ・マクラウド(Lisa Macleod)氏は、導入実験は費用がかかり過ぎで「オンタリオ州の家庭に対する施策に明らかになっていない」と取材に答えた。(後略)

世界は恐ろしい方向に行こうとしている

人工知能は、人間から仕事を奪わないという意見もあります。先の730万人という試算も、大げさなものかもしれません。しかし、少なくとも自動運転は、国内で約135万人もいるプロのドライバーから(そのすべてとは言わないまでも、かなりの程度)仕事を奪うことは確実でしょう。

まずは、自動運転が実現したとして、この約135万人はどうなるのでしょう。いかに介護業界が人手不足だからといっても、2025年の時点で不足する介護人材は約38万人です。これから、日本企業がどんどん設けて、こうした人々を労働力として吸収するのでしょうか。本当に?

人工知能の台頭によって生まれる新たな仕事は、高度なデジタル技術を必要とする職種だと考えられています。自動運転によって失業するプロのドライバーの中には、プログラミングを学習して、そうした新しい仕事を得る人もいるかもしれません。しかし大多数は、そうではないと考えられます。

ベーシック・インカム制度は、そうして失業してしまったとしても、いきなり飢えたりすることもなく、贅沢さえしなければ、楽しみながら人生を謳歌できるという希望の制度です。しかし、そんなベーシック・インカム制度は、国際的に見ても、成立していかない可能性が高くなってきたのです。

※参考文献
・MIT Technology Review, 『ベーシック・インカムは人々を幸せにするのか?世界最大の実験で見えた変化』, 2018年7月27日
・Business Insider, 『カナダ・オンタリオ州の新政権、世界最大規模のベーシックインカム実験を打ち切る』, 2018年8月2日

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