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身元保証人がいない高齢者は、介護施設には入れない?

身元保証人がいない高齢者は、介護施設には入れない?

意外とよく聞く、支払いが滞る高齢者の話

介護事業者とよく話をする機会があります。そこで意外とよく耳にするのが、支払いが滞る高齢者の話です。それは身寄りのない高齢者の話ばかりではありません。身寄りがあっても、その身寄りとなるはずの家族のほうが、親の年金に生活を依存している場合も多くあります。

では、介護事業者はこうした高齢者を無視するのかというと、人道的にそうもいきません。少なからぬ介護事業者は、お金が取れないとわかっていても、介護サービスを提供していることもあります。介護保険からもお金が出るので、一応、それでも無報酬ということにはなりませんが、やはり赤字になります。

現代の高齢者は、その約6割までもが「貯蓄が足りていない」と感じています。支払いが滞る背景には、そもそも、老後の貯蓄が不安ということもあるのでしょう。現役を退いていて、時間とともに減っていく銀行口座をながめていれば、そうした気持ちも理解できます。

介護事業者もまた限界にきている

しかし、いかに高齢者が不安だからといって、支払いがなければ、介護事業者は倒産してしまいます。実際に、介護事業者の経営は毎年過去最高の倒産件数を記録するような水準です。支払いが滞るような高齢者を善意から支援するような介護事業者から順番に倒産してしまっているわけです。

そうした中、身元保証人がいない高齢者の入居を拒否する介護施設が3割というデータが開示されました。とはいえ、これは昔から言われていたことではあります。注意したいのは、こうしたデータをもって介護事業者を糾弾するのは間違っているというところです。まずは以下、中日新聞の記事(2018年5月21日)より、一部引用します。

高齢者が介護施設に入所する際、身元保証人がいない場合は受け入れを拒否する施設が約三割に上ることが、厚生労働省の委託調査で分かった。単身者や身寄りのない人らが保証人を用意できないケースが増える中、国は入所を拒否しないよう求めているが、施設側には費用の支払いや死亡時の引き取りなどへの不安が根強い。(中略)

95・9%の施設が身元保証人や身元引受人などとして、入所時の契約書に本人以外の署名を求めており、このうち30・7%は「署名がないと受け入れない」と回答。成年後見制度の申請など「条件付きで受け入れる」が33・7%で、署名がなくても受け入れる施設は13・4%にとどまった。(後略)

支援が必要なのは介護施設だけではない

このニュースだけを見ていると、介護業界に知見のない一般の人は「介護業界は悪徳だ」と感じるかもしれません。しかし、先にも述べたとおり、介護事業者の多くは、むしろ、支払いの滞る高齢者もギリギリで受け入れており、被害者です。

過去には、日本ライフ協会という、こうした高齢者の身元保証人を代行するサービスもありました。日本ライフ協会は、内閣総理大臣、または都道府県知事の認定を受けている公益財団法人だったのですが、資金の流用が問題となり、破綻しています。

基本的には、この問題は、高齢者の多くが貯蓄不足にあることを根本原因としています。そもそも、いまの日本には、貯蓄がゼロという高齢者世帯が16.8%もいます。これは、一部の高齢者が介護施設に入れないという話ではなく、16.8%の高齢者世帯が、介護サービスも医療サービスも完全に利用できなくなりつつあるという話なのです。

この問題に対する打ち手はいくつもない

高齢者をひとくくりにせず、貯蓄が足りない高齢者と、貯蓄が十分にある高齢者を分けて考える必要があります。そして、若年層からお金を吸い上げるのではなく、高齢者の間で、お金を分け合うような方向で調整しないと、日本が滅びてしまいます。

まじめに貯蓄をしてきた高齢者世帯にとっては迷惑な話かもしれません。しかし、年金をはじめとして、日本には、社会福祉のための財源がもはやありません。「日本の借金(国債)は、日本人が買っている」というのはそのとおりです。しかしその借金は、本来の持ち主のところに返却されないという未来は、すぐそこにきています。

介護に関係がない日常を送っていると、よくわからないことかもしれません。しかし介護業界の問題は、今後はより大きく鮮明な形で、この社会に影を落としていきます。なんとか、それを食い止めようとしている人も多数いますが、この痛みは、好き嫌いに関わらず、国民の皆で分け合うことになるでしょう。

※参考文献
・中日新聞, 『身元保証人いない高齢者、介護施設3割が拒否』, 2018年5月21日

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