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混合介護の規制が緩和されつつある(貧富の格差が明確になる未来)

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混合介護とはなにか

介護が必要になったときのための保険が、介護保険です。原則として40歳になると、日本に暮らしている人は強制で加入させられる保険でもあります。保険ですから、いざという時には、それを活用して、メリットを享受することができる仕組みになっています。

とはいえ、無制限ではありません。保険でカバーされている介護サービスを利用する場合でも、1割の自己負担が発生します(所得によっては2割、今年の8月からは所得によって3割まで自己負担は上がります)。それでも、わずかなお金で、本来は高額になる介護サービスが利用できるのですから、ありがたい話です。

しかし、保険でカバーされていない介護サービス、すなわち保険外サービスについては、全額自己負担になります。財源に余裕のない日本の場合、介護保険は、必要最低限なところをカバーすることで精一杯です。「やや贅沢かな?」くらいのイメージになるサービスは、保険外であることが多いのです。

混合介護とは、このように介護保険でカバーされる保険内サービスと、カバーされない保険外サービスを組み合わせて使うことをさした言葉です。とはいえ、この切り分けが難しいケースが少なくないため、非常にわかりにくい状況が続いています。これが悪用されないよう、国も慎重な姿勢をとってきました。

しかし、介護事業者の経営状態は、毎年、過去最高の倒産件数を記録するほど悪化しています。背景には、介護事業者が、不足する国の財源と、増加する要介護者の板挟みにあっているという事情があります。この背景から、介護事業者は、なんとしても保険外サービスに進出しないと、生きていけないのです。

通所介護で、買い物の代行や付き添いもお願いできる

こうした事情を受けて、国の、保険外サービスに対する考え方も変化してきています。混合介護が解禁される流れが生まれているのです。以下、佐賀新聞の記事(2018年4月23日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

高齢者が日帰りで施設に通う通所介護(デイサービス)で、厚生労働省は全額自費の介護保険外サービスとして、利用者が滞在中に職員に買い物の代行や外出の付き添いなどをしてもらうことを認める方針を決めた。(中略)

通所介護利用中の保険外サービスとして新たに認めるのは、買い物代行などのほか、施設での商品販売やレンタルサービスの提供。巡回健診や予防接種も可能にする。ただし、(1)時間帯を明確に区分する(2)利用者の同意を得る(3)苦情・相談窓口を設ける―ことなどが条件。(後略)

これまでは、通所介護に行って、その帰りに買い物への付き添いをお願いするといった簡単なこともできなかったのです。通所介護は一般に送迎車があるので、重たい買い物をして持ち帰るのも容易なのです。にも関わらず、規制があって、これまでは買い物付き添いの保険外サービスを提供することはできませんでした。

ここには大きな問題も隠れているが・・・

しかし、ここには大きな問題が隠れています。こうした混合介護を利用するということは、全額自己負担の高額な介護サービスを買うということです。それは自然に、混合介護を利用できる富裕層と、利用できない貧困層をわけてしまいます。

介護事業者の気持ちになってみてください。赤字が積み上がっていて、銀行からの借り入れもマックスまで来ています。そしてまた、今期も赤字の見通しだったりするのです。それでも、介護保険からの収入は法律で決められており、利用者に、不必要なサービスを押し付けでもしないかぎり、売り上げは増えません。

そこに1人の富裕層の利用者がいたとします。この富裕層からは、買い物の付き添いを頼まれ、混合介護として、保険外のサービスを提供しました。これは、多くの介護事業者にとっては、唯一の売り上げを高める手段に見えるはずです。実際に、介護事業者の収益は改善されました。さて、次はどうしますか?

こうした状況にあれば、利用者を、貧富の差でカテゴライズして、富裕層をターゲットにして営業を開始するでしょう。そうすることで、介護職の給与も高めることができるのですから、その介護事業者の採用力や人材の定着力も上がります。しかし、富裕層ではない高齢者は、どうすればいいのでしょう。

残念だが、高齢者だけが貧富の格差から逃げられるわけもない

この問題があるから、国はこれまで、混合介護に慎重な姿勢をとってきたのです。しかし、いよいよ財源がなくなり、保険外の収益を得る道を解放しないと、日本の介護事業者の経営はさらに深刻な状況になってしまいます。介護事業者の廃業が止まらなければ、そもそも介護サービス自体が受けられなくもなってしまうのです。

特に介護業界のように社会福祉を扱うところでは、こうした貧富の格差によって受けられるサービスのレベルが異なる状況には嫌悪感が生まれます。しかし、その結果として介護職の悪すぎる待遇が社会的には肯定されてしまっていることは忘れるべきではありません。

すでに、子供の貧困という側面では、すでに日本はOECD諸国の中でも最悪の水準(7人に1人の子供が貧困状態にある)にあることが知られています。親の所得格差が教育格差になることも認識されているでしょう。すでに子供がそうした状態にあるのに、高齢者だけが、所得格差の影響を受けないというのは無理な話です。

子供や若年層、そして介護職たちの犠牲の上に、高齢者の生活が成り立つという図式は、もはや限界ということです。国民が等しく貧しくなる過程において、高齢者が、その最後に貧しくなりつつあるということでしょう。残念ですが、全体を見れば、他に選択肢がないというのが、国の結論なのだと思われます。

※参考文献
・佐賀新聞, 『通所介護で買い物代行OK』, 2018年4月23日

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