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【いよいよ末期】介護職の代わりにボランティアを配置

【いよいよ末期だ】介護職の代わりにボランティアを配置すべきという提案

日本の財政は先進国では最悪という状態

日本の介護には、現在のところ、年間で約10兆円の公費が投入されています。予測には様々なものがあるのですが、これは、2025年には2倍の約20兆円という試算があります。そして2041年には30兆円を突破するとも言われているのです。すでに、日本の財政は先進国では最悪と言われているのに、これだけの金額をどこから出すのでしょう。

理屈では、これだけのお金を確保し、日本の未来に投資する方法もあります。税金の使い方を見直し、富裕層への課税を増やし、そしてベーシックインカム制度への移行が実現できたら(まだ)希望もあります。とはいえ日本はすでに、少子化対策には失敗しており、人口を増やすという戦略は(しばらくは)難しそうです。

本当は、人口を増やし、それによって税収を増やしていけたらよいのです。しかし人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代が、生物学的に出産が可能な年齢を超えてしまったいま、本当の意味で有効な少子化対策は残されていません。いまはまさに、日本の高齢者福祉が、そんな少子化対策の二の舞になるか、それとも大きく改善されるかの分かれ道にあります。

おかしな方向に議論が向かってきている

この状況を受けて、案の定、おかしな方向に議論が向かってきています。なんと、介護を地域住民によるボランティアで行うことで、コスト削減をしようというのです。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年4月13日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

先進国で最悪の水準の日本の財政を立て直すため、財務省は、医療費や介護費の膨張を抑える制度の見直し案をまとめました。(中略)介護の分野では、掃除や調理などの身の回りの世話をする生活援助のサービスについて、ホームヘルパーの代わりに地域の住民やボランティアを活用できるようにして費用を抑えることを提案しています。(中略)

今の制度では介護を受ける人が、生活援助サービスを利用する場合でも、介護士の数など国の基準を満たした事業者のホームヘルパーなどを利用しなければなりません。財務省は、介護費の膨張を抑えるためには、自治体の判断で地域の住民やボランティアを活用して安い費用でサービスを提供できるようにするべきだと提案しています。ただ財務省は、サービスの質の低下につながらないように仕組み作りも必要だとしています。

質の高いサービスを、地域住民から無償で提供させるための仕組みを作るとのことです。正直、なにを言っているのか意味がわかりません。おそらくは、先の大戦における特攻隊も、このような議論から生まれたのではないでしょうか。恐ろしいことですが、本当に末期的です。

介護のボランティアをしたことがありますか?

こうした議論をしている人々は、地域住民によるボランティアという言葉の中に、自分自身が含まれていることを認識しているでしょうか。こうした議論に出ている人の何割くらいが、ボランティアで介護をしたことがあるのでしょう。大いに疑問です。

以前『介護ボランティアの功罪』という記事でも指摘しましたが、ボランティアが成立するところには、全く別の問題が発生します。それは、ボランティアがいるところでは、民間の事業が成立しないということです。良かれと思ってボランティアをすれば、その地域からプロの介護職はいなくなってしまいます。

ボランティアであっても、継続的に、人数も専門性も確保できるなら、それで問題はないかもしれません。しかしそもそも人口が減っていく社会において、そんなことが可能でしょうか。自分の人生でさえままならない時代が来ているのに、負担の大きな無償のボランティアに、進んで従事する人が多数いるのでしょうか。

ありえそうな着地としては、学生が強制的に介護のボランティアに駆り出されるとか、それを単位として認めるとか、まさに学徒出陣でしょう。就職に有利になるとか、社会性が養われるといった不思議なロジックで押し通されてしまえば、本当に、そうした学徒出陣の制度が生まれてしまいそうです。

いつか来た道、これから行く道・・・

そういえば、日本の少子化対策においても「子育てを地域で支え合うためのボランティア」がずっと募集されてきました。もちろん、部分的には素晴らしい成果もあったとは思います。しかし国家全体の大きな戦略として、ボランティアの無償労働に期待するようなことが、どういう結果を生み出すかは考えなくてもわかることです。

マクロな問題については、投入するリソース、もっとはっきり言えば、投入する資金次第で、結果は決まってしまいます。日本は、先の大戦から何を学んだのでしょう。工夫次第でなんとかなるのは、ミクロな問題だけです。マクロな問題については、資金が確保できないということと、悲惨な未来というのは、確実に直結しているのです。

このままでは、いざ自分に介護が必要になったときは、ボランティアの奪い合いをしなければならなくなります。これは結局、個人として、ボランティアに支払える「お礼」の勝負になるでしょう。相当なお金がないと、介護が必要になれば死ぬしかないという社会が、すぐそまで来ています。

こうした悲惨な未来を避けるためには、いま、根本的な対策を議論し、実装していかないと間に合いません。介護職の待遇を改善し、人数と専門性を確保するには、時間もかかります。それが間に合わないとき、まずは公務員が介護をすることになるでしょう。そしていずれは、介護の現場から誰もいなくなります。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『軽いかぜは患者の自己負担上乗せ 医療費など抑制へ提案』, 2018年4月13日

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