閉じる

怪しい金融商品に引っかかる高齢者が後を絶たない件について

期待値管理

自己責任の大合唱との厳しい戦いについて

そもそも、日本の社会福祉が堅固であれば、老後の不安は少なくなります。しかし、それがもはや不可能であることは、多くの日本人が認識していることでしょう。自己責任という冷たい言葉によって、日本はいま、お互いを支え合う社会から、我先にと危機から逃げ出すことが重視される社会になってきています。

それでも日本は、まだ、目の前で困っている人をみれば、なんとか手を差し伸べることができる状態にはあります。しかしそれが、顔も名前も知らない、どこか遠くに住んでいる人であればどうでしょうか。同じように日本に暮らす人だからという理由で、積極的になにかをする気持ちになるでしょうか。

この問いに対する日本人の回答として、先の東日本大震災は、世界を驚かせたのです。日本に限らず、世界中が自己責任の大合唱に包まれる中、日本人は、それとは異なる行動をすることができました。もちろん、個人差はありますし、そうした行動によって本当に救われたというケースも多くはなかったかもしれません。

ただ、日本人にはまだお互いの尊厳を考えることができるという希望があるのは確かだと思います。それが危機に瀕しているのも事実ですが、まだ、何かできることがあるというのも、多くの日本人が感じている「はがゆさ」ではないかと思います。

金融商品のカラクリ、その根本を支えているもの

怪しい金融商品に引っかかる高齢者が後を絶ちません。高齢者になると、認知症までいかないまでも、認知能力の低下は広く見られるものです。そうした高齢者は、将来の不安もあって、現役時代であれば決して引っかからないような詐欺まがいの話にも乗ってしまう可能性が高まっているのです。

本質的には、楽をして儲かるという話はありません。基本的に、金融商品は、売る人と買う人があって成立しています。たとえば株は、ある時点で「この会社の株はいらない」という人と「この会社の株が欲しい」という2人の人間がいなければ、売買が成立しないでしょう。このときは、どちらかが得をして、どちらかが損をします。

この2人の間の駆け引きにおいて、勝つ可能性が高いのは、その株を発行している会社について、より詳しく知っている人です。あまりよく知らない人が、よく知っている人に勝てる確率は、かなり低いと考えたほうがよいでしょう。それでも、あまりよく知らない人が勝負に出るのは、人間には楽をして儲けたいという気持ちがあるからです。

この楽をして儲けたいという気持ち自体を非難することはできません。それは、人間であれば誰もが抱く感情であり、別の角度から見れば、高い生産性を求めるということでもあるからです。働き方改革が目指しているのも、ある意味で、楽をして儲けることで生産性を高めようということでもあります。

必ずしも全ての金融商品が2人の間の駆け引きではない

もちろん、保険のように、最終的に儲かることを目的としていない金融商品もあります。保険は事故や病気など、いざとなっても大丈夫という安心を買うものであり、自分が事故や病気に苦しむことになって儲かることを期待しているわけではないからです。

また、生まれたばかりの会社(スタートアップやベンチャー)の未公開株のように、売買する双方が同時に儲かる(または損をする)可能性のあるものもあります。ただ、一般には未公開株の売買に関われる人は少ないのです。だからこそ未公開株の売買という金融商品も存在しており、そこには詐欺まがいのものも多くなってしまっています。

やはり基本的には、よく知らないものは買ってはいけないという話になります。逆に言えば、投資のための勉強をしないままに、営業トークを信頼して投資をすれば、ほぼ確実に損をするという意識が求められるのです。楽をして儲けたいのは人間の本能でもあるからこそ、付け込まれやすいと考える必要があります。

ここで、いわゆる「ネズミ講」や「マルチ商法」には注意してください。「ネズミ講」や「マルチ商法」の場合は、商品を売る人も、その商品を買っていることが多く、見かけ上は2人の間の駆け引きになっていないのです。この場合は、売る人が洗脳されていることも多く、非常に危険です。

ジャパンライフ事件の行方について

そうした中、磁気治療器の販売という金融商品を展開して倒産したジャパンライフの大掛かりなケースが注目されています。以下、そのジャパンライフを巡る訴訟について、福井新聞の記事(2018年3月21日)より、一部引用します。

弁護団によると、同社は磁気製品の預託商法で年6%の運用益をうたい、顧客に生命保険を解約させたり、自営業者の場合は事業用融資を受けさせたりして製品の購入費に回させていた。

原告の60代女性は、毎日のように家に押し掛けられて誘いに応じてしまった結果、老後の蓄えを全て失い「これからどうすればいいのか」と涙を流したという。原告は1人暮らしの高齢者が多く、子どもや孫に被害を知らせていないケースも多い。

ジャパンライフの手口は、高額の磁気治療器を購入させるというものです。その磁気治療器は、自分で使うのではなく、誰か必要な人にレンタルすることになっていました。そうしてレンタル収入を得ることを説明することで、高齢者を引っ掛けていたのです。

難しいのは、こうした金融商品自体は違法とは言いにくいことです。詳細な契約内容までは見ていないので言い切れないのですが、これは基本的に、投資用にマンションを購入して、それを誰かに貸すのと同じモデルです。おそらく、投資用のマンションが儲からなくなってきていることを営業トークとしていたのだと思います。

この金融商品を買ってしまった高齢者のうち、何人が、磁気治療器について正しく理解していたでしょう。この商品を売る人は「自分ではいらない」と考えるからこそ売っているわけです。そうした商品を買うからには、売る人が「自分ではいらない」と考えていても、逆に「自分は欲しい」と言える根拠がどうしても必要です。

もはや金融リテラシーの問題ではない

詐欺に引っかかりやすいのは、過去に一度も詐欺にあっていない人です。長年、詐欺とは無縁の人生を送っていれば、そうしたことは、自分には関係ないと感じられるのが自然なことです。しょっちゅう地震が起こっている日本で暮らす人が地震対策をするのに対して、地震が起こならない地域で暮らす人が地震を警戒しないのと同じです。

まだ自分の若さを自覚するような年齢であれば「社会には怖いこともある」と認識し、詐欺にも十分な警戒をするでしょう。しかし、高齢者になるまで、一度も詐欺にあっていない人はどうでしょうか。地震が起こらない地域で暮らす人と同じように、それを警戒することが少なくなるのです。

実際の統計では、詐欺に引っかかる人の約8割は高齢者です。しかし同時に、高齢者になればなるほど「自分は詐欺には引っかからない」という自信を持っているという統計もあります。これを高齢者の危機意識の問題にすることも可能ですが、本質的には、人間の本能に近い話でもあるわけです。

これを金融リテラシーの問題とすることは容易です。しかし、そう叫ぶことで本当に多くの高齢者が救われるかと言えば、それは別の話でもあります。これから、認知症に苦しむ人も激増していきます。そうした社会においては、国として金融商品をどのように扱っていくべきか、早急なる議論と環境の整備が必要なはずなのです。

※参考文献
・福井新聞, 『蓄え根こそぎ奪われ…涙の高齢者 弁護団「ジャパンライフ罪重い」』, 2018年3月21日
・福井新聞, 『「ジャパンライフ」全国からSOS 高齢者ら契約金返還求め相談』, 2018年1月10日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト