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東京新聞シリーズ<年金プア 不安の中で>に注目したい

東京新聞シリーズ<年金プア 不安の中で>に注目したい

白井康彦氏について

白井康彦(しらいし・やすひこ)氏は、1958年、名古屋市生まれの新聞記者です。2010年8月より、中日新聞名古屋本社生活部編集委員になっています。中日新聞(東京新聞)の生活面に、綿密な取材をベースとした消費者問題や貧困問題の執筆しており、定評があります。

そんな白石氏は、現在、東京新聞にて<年金プア 不安の中で>というシリーズの執筆(2〜3週間に1本のペース)を行っています。無年金はもちろん、年金をもらっていても生活のための資金が足りない高齢者は、見えにくい貧困層です。このシリーズは、ここに光を当てるものです。

年金だけでは生活できないという意味からすれば、ここで書かれている内容は、未来の私たち自身の姿でもあるでしょう。さすがに年金がもらえないということはないでしょうが、それでも、私たち現役世代の年金は、現在の高齢者世代に支払われている年金よりも、実質的には減額させられるのは必至です。

年金プアが生まれてしまう構造

平均的な生活をするために必要な金額から、労働報酬や貯金からの切り崩しを引いた残りが、支給される年金でまかなえたらよいのです。しかし、支給される年金では足りない場合、節約を徹底して、生活を切り詰める必要があります。

香典やお祝いの席への出席を断るくらいは序の口です。国民健康保険を滞納していたりして、医療費の個人負担が膨らみ、病院で必要な病気の治療さえ受けない(受診控え)という高齢者が、全国で多数存在しているのが現実です。

それなりに貯金があったとしても、住宅ローンが残っていたりして、毎月その金額が減っていく状況だと、生活を過度に切り詰める高齢者も出てきてしまいます。背景には、大きな病気でもして、入院してしまえば、貯金がなくなってしまうという恐怖もあるはずです。

親を資金的に援助するということ

こうした背景から、年金プアとして生活している高齢者は、実態がつかみにくいという特徴があります。実態がつかみにくければ、支援もしにくいというのが現実です。そしてそれは、私たちの未来であると考えたとき、このままでよいということにはならないでしょう。

特に、親が年金プアの状態にある場合、親に対して自分の資金援助が必要になり、自分の人生自体が危なくなってしまいます。自分の生活に相当な余裕があれば話は別です。しかし、そもそもそうした人は少数派であって、大多数の現役世代にとって、親が年金プアになることは恐ろしいはずです。

過去記事『しっかりと生活保護の受給を考えよう』でも考えましたが、親の生活のために自分の貯金を切り崩すことには、慎重になるべきです。結果として、自分自身が生活保護になってしまうとするなら、本末転倒だからです。

現役世代の消費控えも年金プアが原因である

現役世代(60歳未満の勤労者)に関する調査レポート(廣野, 2016年)によれば、現役世代には、平均貯蓄率を高め、消費支出を減らす傾向があります。この背景には、将来不安があることもわかっています。

実際に、1966〜1975年以降に生まれた世代においては、貯金(金融純資産)の積み上げが、それ以前の世代と比較しても不十分であることが示されました。つまり、1966〜1975年以降に生まれた世代は、それ以前の世代よりも年金プアになる可能性が高いということです。

今後は、仮に日本の景気がよくなって賃金が上昇したとしても、その多くは、自分自身が年金プアになる恐怖から貯金されてしまうでしょう。そもそも賃金の上昇が、消費支出の改善につながらないとするならば、日本の景気がよくなるという想定自体が正しくないという負のサイクルが見えてきます。

国全体として、年金プアの現状を把握し、その改善に努めることは、景気対策という意味からも急務なのです。少しでも多くの人が、東京新聞の<年金プア 不安の中で>を読みながら、親と自分の未来について考えてみるべきだと思います。

※参考文献
・東京新聞, 『66歳男性 昼夜問わず働くしか』, 年金プア 不安の中で, 2017年6月29日
・東京新聞, 『60代夫婦 食費節約、香典も断る』, 年金プア 不安の中で, 2017年7月13日
・東京新聞, 『滞納で受給資格なく生活苦 治療できず手遅れに』, 年金プア 不安の中で, 2017年8月3日
・東京新聞, 『80代、認知症の母 遺族厚生年金7万円 援助する娘の家計圧迫』, 年金プア 不安の中で, 2017年8月24日
・廣野 洋太, 溝端 幹雄, 『現役世代の将来不安と消費』, 大和総研, 経済構造分析レポート, No.52, 2016年10月31日

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