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年金受給開始の年齢が75歳に?任意の選択肢が増えるという話ではあるものの・・・

年金受給開始の年齢が75歳に?任意で選べる状況が広がるという話ではあるものの・・・

年金受給開始の年齢に関する議論

高齢者が増えるに従って、年金の不安は、広く社会一般に共有されてきています。日本の年金の場合は賦課方式(ふかほうしき)といって、現役世代が高齢世代の年金を支払うという仕組みになっていいます。賦課方式では、高齢者の数が急増する高齢化社会においては、現役世代の負担が大きくなりすぎるため、実質的に破綻してしまうのではないかと考えられています。

こうした背景をうけて、国は、あの手この手で、年金のシステムを維持するために頑張っています。ただ、そうした頑張りは、高齢者のためになるかというと疑問もあるのです。以下、朝日新聞の記事(2017年7月19日)より、最新の議論について、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LAB にて修正)。

公的年金を受け取り始める年齢を70歳より後にもできる仕組み作りを高齢社会対策大綱に盛り込む検討に入った。内閣府の有識者検討会が大綱の改定案をまとめ、政府が年内に決定する。年金の制度作りを担う会議ではないため、ただちには実現しないが、中長期的な課題として打ち出す。

年金の受給開始年齢は原則65歳だが、60~70歳の間で選ぶこともできる。70歳から受け取り始めると、受給額は65歳から受給するより42%増える。18日の検討会で、座長の清家篤・前慶応義塾長が「もっと先まで繰り下げ支給の幅を広げる可能性もある」と明かした。働ける元気な高齢者を支援する狙い。検討会では、繰り下げできる年齢について「75歳とか、もっと延ばしてもいい」との意見が出た。(後略)

年金受給開始の年齢を選べるということ

現在でも、60〜70歳の間で、年金の受給開始を選ぶことができます。できるだけ年齢が上がってから年金を受けたほうが、毎月の受給額は上がるという仕組みです。これだけ聞くと、なんとなく、こうした選択肢が増えることは、良いことのように感じられるかもしれません。しかし、ここには受け取れる年金の総額についての議論が入っていません。

先のニュースは、こうした年金の受給開始の選択範囲を75歳まで広げようという意見に関するものです。75歳まで年金を受給しないで、75歳から年金を受け取った場合、毎月の受給額はかなり増えることになるのでしょう。しかし・・・そうして年金が受け取れるのは、あくまでも生きている間の話です。仮に、76歳で死んでしまえば、年金を受け取れるのは1年ということになってしまいます。

嫌なのは、国が「お得ですよ」と示す話が、本当はそうなっていない可能性が高いという部分です。本当に、高齢者のほうが得をする制度は、年金の財源が増えていかないと成立させることが不可能です。今回の、75歳まで選べるという話もまた、統計的には高齢者本人ではなく、国のほうが得をするという話になっているところが、悲しいのです。

元本が保証されない年金という制度は限界ではないか?

本当に大事なのは、生きている間に、元本以上の年金が受け取れるということです。元本として収めたお金が、結果とて目減りして返却されるなら、それは年金ではなく税金です。今回の話も、背景に、元本割れが期待されているという部分に、どうしても、いやらしさを感じてしまいます。

仮に、75歳からの年金受給を選び、結果として元本割れしてしまう場合、残りの年金は遺族に渡されるなら、金融商品として成立します。しかし現実には、年金受給者の死亡(平均寿命)を織り込んでおり、結果として元本割れする可能性の高いところで設計されているのではないでしょうか。そう考えないことには、そもそも成立しない議論だからです。

もちろん、現代社会における最大のリスクの一つは、想像以上に長生きしてしまうことです。そのとき、毎月の年金が少しでも多ければ、とても助かります。年金が、元本以上にお金が返ってくるという約束ではなく、そうした人生のリスクに対応するものであるという合意が得られるのであれば、今回のような変更はむしろ有効です。

そろそろ、年金とはなんなのか、国民レベルでの議論が必要になってきています。どのみち、財源は足りないのですから、実質的な支給額が減らされていくことは避けようがありません。であれば、本当に必要な人しかもらえないような、生活保護に近い年金の形を模索していくしかないのではないかと思います。

※参考文献
・朝日新聞, 『年金受給開始「75歳とか…」 内閣府の検討会で意見』, 2017年7月19日

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