閉じる

2人以上の世帯の貯蓄額が過去最高に?平均だけだと現状認識を見誤る危険が(ニュースを考える)

2人以上の世帯の貯蓄額が過去最高に?平均だけだと現状認識を見誤る危険が(ニュースを考える)

高齢者世帯の平均貯蓄は2,385万円?

総務省が16日に発表したところによれば、2人以上の世帯の平均貯蓄額が、過去最高を記録したとのことです。特に、高齢者世帯の平均貯蓄は2,385万円となり、全体の平均を押し上げたのは高齢者という報道です。以下、朝日新聞の記事(2017年5月16日)より、一部引用します。

総務省が16日発表した2016年の家計調査報告によると、2人以上の世帯の平均貯蓄は前年比0・8%増の1820万円だった。増加は4年連続で、同様の調査を始めた59年以来、3年連続で過去最高を更新した。(中略)

調査対象の過半数を占める世帯主が60歳以上の高齢者世帯の平均貯蓄は2385万円の一方、全体の3分の2の世帯の貯蓄額は1820万円を下回っており、高齢者など一部富裕層が平均を押し上げている構図だ。総務省統計局は「年齢が高いほど貯蓄が多い。高齢化が進んだ影響で平均貯蓄が増え続けている」という。

ここで、どうしても注意したいことがあります。この報道だけをみると「なんだ、日本の高齢者はお金を持ってるじゃないか」という印象を受けてしまうということです。そうした印象が定着してしまえば、高齢者のための福祉財源が削られる根拠にもなるでしょう。もしかしたら、それを狙っている人がいるのかもしれません。

たとえば、貯蓄がゼロの人が9人いて、残りの1人が富裕層として10億円の貯蓄を持っていたとしましょう。この場合、貯蓄の平均は1億円ということになります。では、平均1億円の貯蓄があるからということで、この人たちへの福祉財源をカットしてよいものでしょうか。そんなことはありませんね。

厚生労働省のデータを見てみる

以下、少し古いデータなのですが、厚生労働省が発表(2013年)している、高齢者世帯の貯蓄額の分布を見てみます。貯蓄額が1,000万円以下という高齢者世帯が過半数(58%)です。そしてなにより、貯蓄がないという世帯もかなり(16.8%)あります。

高齢者世帯における貯蓄額の分布

これと合わせて考えたとき「なんだ、日本の高齢者はお金を持ってるじゃないか」という印象が間違いであることが認識されると思います。要するに、一部の富裕層が、全体の平均を押し上げているというところが真実なのです。ですから「高齢者が〜」という一般化は、非常に危険な認識ということになります。

高齢者には、年金があるから大丈夫だろいうというのも、違います。過去に『高齢者の貯蓄はモデル世帯でもギリギリという事実について』という記事でも示したとおり、貯蓄が足りないと考えている高齢者は、全体の57%にもなるのです。

2013年からの4年間で、改善している部分もあるのかもしれません。しかしそもそも、平均の貯蓄額からしても、総務省と厚生労働省の調査には大きな乖離があります。しっかりと、平均だけでなく、分布(分散)まで考慮した最新の調査と報道が必要です。

※参考文献
・朝日新聞, 『世帯貯蓄、過去最高1820万円 高齢者が平均額上げる』, 2017年5月16日
・厚生労働省, 『グラフでみる世帯の状況』, 2013年

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR