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介護にかかる費用はいくら?親のお金だけでは対応できそうもない現実について

介護にかかる費用はいくら?親のお金だけでは対応できそうもない現実について

平均は初期費用80〜90万円、毎月7〜8万円

介護にかかるお金(介護保険でカバーされない自己負担部分)がいくらくらいになるのか、誰もが不安に思っています。これを実際のデータ(生命保険文化センター, 2015年)でみると、バリアフリー化や介護ベットといった初期費用(一時費用/自己負担)は、平均で80〜90万円程度でした。また、毎月かかっている費用(自己負担)は、平均で7〜8万円でした。

ここで、世帯主や配偶者に介護が必要になった場合、それが継続する期間の見積もり(想定される介護期間)平均は169.4カ月(14年1カ月)でした。実際にこれだけの期間がかかるかどうかは、それぞれに事情が異なるため、なんとも言えないところではあります。ただ、平均的には、それだけの期間の見積もりをしているという点には意味があります。

毎月の実質的な費用(自己負担)となる平均7〜8万円が、169.4カ月間、かかり続けることを想定する必要があるからです。これは、単純計算で約1,186〜1,355万円になります。ここに初期費用が乗ってきますから、1,266〜1,445万円を準備(貯金+期待される年金)しておきたいということになります。これは、かなりの大金です。

この想定では、介護が必要になる人が1人という計算になっていることは、注意してください。両親が同時に介護を必要とするケースも多数あり、その場合は、単純に2倍とはならないものの、2,000万円以上の準備が必要になるのは想像に難くありません。

実際の貯金額はどれくらいある?

高齢者の貯蓄額は、世帯平均で1,268万円(常陽銀行, 2015年)です。この数字だけを見ると、意外と貯蓄があるように感じられるかもしれません。しかし現実には、富裕層がこの平均の貯蓄額を押し上げています。実際に、貯蓄額が1,000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。

親が大企業に長期勤務していた過去があり、高額の年金が支払われている場合は、貯蓄が少なくてもなんとかなる可能性もあります。しかし、企業の年収ランキング(2015年/東洋経済)で第8位(平均年収1,299万円)という朝日新聞に、新卒から定年まで35年間勤務したという柳博雄氏でさえ、著書の中で、経済的な不安をつまびらかにしています。

ここまでの話を総括すると(1)親が大企業に長期勤務していた過去があって、年金もしっかりもらえている(2)両親が同時ではなく、どちらか一方の介護だけが必要、という条件が成立するときだけ、ギリギリではあるものの、親の介護のために、子供がお金を持ち出す必要はない可能性もあります。

ただ、この2つの条件が当てはまる人は少数のはずで、現実には、親の介護のために子供がお金を持ち出すことになるケースのほうが多くなるでしょう。では将来、いざ自分や配偶者に介護が必要になった場合、その費用は大丈夫でしょうか。親の介護にお金を使いながら、十分な貯金ができているようには思えないのです。

国家としての衰退に直結してしまう

2025年以降、団塊の世代が75歳を超え始めるころから、この問題は目立って顕在化してきます。団塊の世代にあたる親の介護を、団塊ジュニア世代が行います。いわゆる、仕事と介護の両立です。

親の介護のために、団塊ジュニア世代の労働時間は、どうしても今よりも短くなります。週休3日制などを利用することになるのでしょうが、それは、年収ダウンにもつながります。年収がダウンするのに、親の介護のために自分のお金を持ち出すような生活です。そうなると、団塊ジュニア世代は、日常の贅沢品はもちろん、ついには、子供の教育にかけているお金を削るようにもなるでしょう。

個人消費が落ち込むことはもちろんなのですが、子供の教育にお金がかけられなくなると、日本を支えてきた教育産業へのダメージも大きくなります。私立のみならず、国公立でも資金難が進み、教員が雇えなくなり、学校の統廃合が加速度的に進むでしょう。塾の多くは、営業が続けられなくなります。

教育は、国家に限らず、あらゆる組織において、長期的な栄枯盛衰を決める、最重要の投資ターゲットです。ここに投資ができなくなると、必ず、暗い未来に行き着きます。団塊の世代がいなくなり、今度は団塊ジュニア世代にも介護が必要になったとき、その子供たちには、親の介護のために出せるお金はないでしょう。

どう考えても、いまと同じやりかたを続けていくことはできません。社会構造レベルでのイノベーションが必要なときです。そのためにも投資が必要なのですが、そうした投資ができる体力を持った企業が、どれほどあるでしょうか。ただ不安になっていても仕方がないのですが、なかなか解決策は見えてきません。

※参考文献
・生命保険文化センター, 『生命保険に関する全国実態調査』, 2015年
・常陽銀行, 『年代別貯金総額の平均と毎月の貯金額目安』, 2015年4月21日

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