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ヘルパーの指名料が設定されるようになる?(ニュースを考える)

ヘルパーの指名料が設定されるようになる?(ニュースを考える)

介護サービスの品質問題について

介護サービスは、その内容に応じて、国が料金を定めています。ここで、介護サービスの内容とされるものには、品質の基準がありません。たとえば、ヘルパーに調理をお願いする場合、その調理の上手い、下手にかかわらず、料金は同じなのです。

こうした背景があるため、介護事業者には、自分たちの介護サービスの品質を高めようというインセンティブ(動機付け)が働きません。もちろん、まじめに介護サービスの品質を高めている介護事業者もいます。しかし、国の仕組みは、そうした介護事業者に、優しくありません。

医療も、これと同じです。国の建前としては、医療サービスの品質は、医師によらず一定です。しかし当然、医師にも優劣があります。一般の民間企業であれば、サービス品質の優劣は、そのまま、死活問題に直結しています。しかし、介護と医療の世界には、こうした市場の原理が働かないのです。

この常識をくつがえす取り組みが開始される?

こうした中、東京都が、ヘルパーの指名料の導入を検討しているというニュースが入ってきました。「この人がいい」という指名料には、市場の原理が働きます。指名されるヘルパーは、当然、高い品質で介護サービスが提供できる人だからです。以下、毎日新聞の記事(2017年2月10日)より、一部引用します。

(前略)東京都と豊島区が、利用者宅を訪問する介護職員の「指名料」の導入を検討していることが分かった。利用者は1時間当たり500円程度を追加負担する代わりに、看護師やあん摩マッサージ指圧師などの資格を持つ職員を指名し、施術や専門的な助言を受けられる仕組み。(中略)

現行制度では、保険内と保険外のサービスを同時に提供できないが、都などは地域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」の枠組みを利用し、2018年度をめどに混合介護のモデル事業を始めることを目指している。介護職員不足に対応するため、これまでは認められていない指名料の導入を10日の国との協議で提案する。(中略)

また、都や区などはヘルパーの需要が集中しがちな食事の時間帯は利用料を上げる一方で、需要が少ない時間帯は下げ、需給バランスを調整することで人手不足を補うことも協議している。(後略)

介護サービスを利用する要介護者(利用者)に人気のあるヘルパーは、より多く稼げるようになり、待遇も改善されるでしょう。しかし、誰からも指名がかからないヘルパーは、その逆で、稼げなくなり、介護業界から去っていくことにもなります。

介護と医療に市場の原理を導入するリスク

このようにして、市場の原理が働くことは、まじめに仕事をしてきたヘルパーにとっては嬉しいことです。しかし、こうした市場の原理が導入されると、優れたヘルパーの価格はどんどん高騰していきます。そうなると、お金のある人だけが、優れたサービスが受けられるという未来に行き着きます。

市場とはそういうものなのですが、社会福祉という意味からすると、これはおかしなことです。本来の社会福祉は、貧富の格差に関係なく、誰もが等しく受けられるべきものだからです。国も、ここを警戒しているからこそ、1時間500円程度の追加負担という制限を設けているのです。ただ、こうした制限は、いつまで持つかわかりません。

そもそも、今の時点でも、十分なお金がある人は、介護保険外で、高度なサービスが受けられる状態にあります。そう考えると、ヘルパーに指名料が設定されることは、お金持ちの環境をますます良くするだけで、全体の社会福祉のレベルは下げてしまうかもしれません。

本質的には、ヘルパーなどの介護職は準公務員として、その待遇は、能力によって変化させるという改革が必要なのです。ここを避けて、その場しのぎのような対応をしても、長期的には問題の解決にはならない可能性があります。

※参考文献
・毎日新聞, 『東京都と豊島区が指名料 1時間500円程度』, 2017年2月10日

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