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【危険】なぜいま「カジノ解禁法案」なのか?フリードマン・サベージ・モデル(Friedman=Savage Model)が教えてくれること

【危険】なぜいま「カジノ解禁法案」なのか?フリードマン・サベージ・モデル(Friedman=Savage Model)が教えてくれること

カジノ解禁法案が可決へ

カジノ解禁法案(統合型リゾート施設(IR)整備推進法案)が、衆院内閣委員会において、賛成多数で可決(2016年12月2日)されました。この法案の可決だけで、誰でもカジノを開けるわけではありませんが、流れの方向づけは決まった形になります。

国家戦略としては、海外から日本を訪れる外国人に、カジノを楽しんでもらうことを考えているのだと思います。しかし同時に、カジノに対してポジティブなイメージが宣伝されれば、国内においては、ギャンブル依存症の問題が大きくなってしまうでしょう。

ギャンブルは、人類史から見て、家族の生活を豊かにするものではなく、破壊するという性質を持ったものです。富裕層が「たしなみ」として遊ぶ分には問題ありませんが、現実には、不幸になる人のほうが多いことは、どうしても直視する必要があります。

本来であれば、富裕層からお金をとってきて、貧困層にそれを流さないといけないのです。しかし、ギャンブルはこの逆に働きます。本稿でも考えていきますが、ギャンブルは、貧困層からお金を巻き上げる形になってしまうことが問題なのです。

そもそも、カジノ解禁法案という名称には、イメージをコントロールしようとする意図が見えます。なぜこれを、ギャンブル解禁法案、賭博解禁法案と呼ばないのでしょう。カジノという言葉のほうが、なんとなく、ポジティブだからというだけのように思います。

ギャンブルに関する歴史的な事実を確認しておこう

そもそも、宝くじに代表される、すべてのギャンブルは、遊ぶ側が損をする仕組みになっています。特に宝くじは「社会的弱者の税金」と呼ばれ、生活費にも苦しむような社会階層にある人ほど、依存症になりやすいことが知られています。

宝くじは、紀元前206年の中国において、万里の長城の建設費用をまかなうために始められたと言われます。日本では、寺が、修繕費用を捻出するために宝くじを利用してきたという歴史があります。ここから、胴元が得る利益を表す「テラ銭(寺銭)」という言葉が生まれています。

増税は国民からの反発しか生まないのですが、ギャンブルからの税金の回収は受け入れられるというのが、歴史的な事実です。寺の修繕など、クラウドファンディングではお金が集められなくても、ギャンブルであれば、どんどんお金が集まるというのは、なんとも皮肉な話です。

ちなみに、日本の宝くじは、1,000円かけると470円しか返ってこないギャンブル(還元率約47%)です。テラ銭は530円という、恐ろしく胴元が儲かるモデルになっています。本当は、そんな宝くじを買うくらいなら、そのお金で本でも買ったほうがずっとよい投資なのです。

ギャンブルは、数学的には、損をすることが約束されています。しかし、ギャンブルに依存してしまう人も、そんなことはわかっています。それでもなお、ギャンブルにのめり込んでしまう背景には、いったい何があるのでしょう。

フリードマン・サベージ・モデル(Friedman=Savage Model)

ギャンブルが提供するものを「上位の社会階層に登るための手段」として説明したのが、フリードマン・サベージ・モデル(Friedman=Savage Model/1948年)です。いかにテラ銭が高くても、ひとつ上位の社会階層が得られるチャンスなら、それにかけることは合理的だという考え方です。

欧米では、より貧しく、教育レベルが低い階層にある人々ほど、より多くのお金をギャンブルに使うことがわかっています。特に、大当たりの金額が大きいものに、お金を使うのです。

この傾向は、社会階層を上に登る可能性が閉ざされている人に対して強く働く可能性も指摘されています(谷岡, 2002年)。この研究では、社会的なハンデによって可能性が閉ざされている人に、この傾向があることが認められました。要介護者こそ、危ないのです。

日本では、過去に44.2%(1988年)もいた「努力すれば報われる」と考えている人が、15.2%(2016年)まで減っています。逆に、日本の宝くじの当選金額は、年々上昇しています。ここに、強烈な相関性を感じずにはいられません。

多くの指摘があるとおり、日本の社会階層は固定化しつつあります。上位をめざす希望ではなく、下位に落ちる恐怖のほうが大きいくらいです。フリードマン・サベージ・モデルに従えば、当選金額が大きいギャンブルを解禁するタイミングとしては最高ということです。

ギャンブル依存症は、その約4割が50歳以上である

社会に希望が失われているときほど儲かるのが、ギャンブルです。今の日本にはもってこいなのかもしれません。しかし基本的に、ギャンブルは、参加者の不幸によって儲けるというモデルであり、倫理的な問題があります。

フリードマン・サベージ・モデルの拡張仮説(可能性が閉ざされている人の仮説)に従えば、若者よりも、昇進が止まっている会社員や、定年退職をして貯金の不安がある高齢者ほど、ギャンブル依存症になりやすいはずです。

恐ろしいのは、仕事と介護の両立に悩むような会社員と、介護の金銭的負担に悩む高齢者が、ギャンブル依存症になることです。そしてその傾向は、すでにはじまっている可能性があります。以下、日刊ゲンダイの記事(2016年12月4日)を一部引用します。

2日の衆院内閣委員会で「カジノ解禁法案」が可決され、今国会で成立する公算が大きくなった。いまから懸念されているのは、これでますます「老後破産」が増えるということだ。

日本はすでに世界最悪のギャンブル依存症大国だ。厚労省研究班は国内に計536万人いると推計している。そのうち全体の約4割を50代以上が占める。50代以上の男性が190万人、女性は7万2000人に上る。中高年や高齢者ほどギャンブルにのめりこみやすいという。

親の介護には、親の退職金を使おうとしていたら、それがギャンブルで国に吸い取られていたという話にもなりかねません。個別には、フリードマン・サベージ・モデルを認識することで、これを回避しないとなりません。

本来であれば、むしろギャンブルに対する規制を強化すべき局面です。しかし、日本はこれと逆に動こうとしています。それが実現したとき、マクロには、破産する高齢者の増加を止められなくなるでしょう。ここへの配慮がないままに、ただギャンブル解禁というのは危険すぎます。

※参考文献
・三辺 誠夫, 『生命保険の劣級財性について』, 生命保険文化研究所所報(37), p91-122, 1976-12
・谷岡 一郎, 『宝くじは社会的弱者への税金か?―JGSS-2000 データによるナンバーズ・ミニロトとの比較研究:「Friedman=Savage モデル」の日本における検証を兼ねて―』, JGSS研究論文集[1](2002.3)
・産経新聞, 『自民、カジノ法案成立を 採決強行「異常」と民進』, 2016年12月4日
・東京新聞, 『審議わずか6時間 カジノ法案を可決』, 2016年12月2日
・日刊ゲンダイ, 『依存症の4割が高齢者 カジノで「老後破産」深刻化の恐れ』, 2016年12月4日

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