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公営住宅への助成を増やすべき理由;貧困対策の本丸として(ハウジング・プア)

公営住宅への助成を増やすべき理由

日本の公営住宅は、そもそも数が少ないし、老朽化が進んでいる

国家施策としての貧困対策の大きなものとしては、公営住宅(社会住宅)の充実と生活保護の拡充の2本立てになります。このうち、日本の生活保護については、受給資格が厳格であり、本当に必要な人に届いていないという批判が多いことは衆知のとおりです。

生活保護は生活保護で重要ですが、ワーキング・プアと呼ばれるような、働いていても貧困から抜け出せない人々の救済が、どうしても必要です。ワーキング・プアであっても、仕事をしていれば、生活保護の受給資格を失ってしまいます。そうなると、期待の矛先は、公営住宅の充実に向かいます。

個人としても、生活保護の申請を行うのは気がひけても、お得な公営住宅に入居することについては、それほど抵抗がないでしょう。しかし残念なことに、日本は、公営住宅の数がそもそも少ないという特徴があります。

全住宅の戸数に対する公営住宅(社会住宅)の割合は、イギリスでは約20%、フランスで約17%となります。これに対して、日本の場合は、全住宅に対する公営住宅の割合は約7%程度にしかなりません。イギリス、フランスの半数以下です。

しかも、この約7%の公営住宅というのも、高度成長期に合わせて作られたものです。その多くが1960〜1970年代に建造されたもので、老朽化が進んでいるだけでなく、急な階段しかなかったりと、高齢者向けの配慮なども行き届いていないことが普通です。

「ハウジング・プア」という言葉をご存知ですか?

本来であれば、なんらかの理由で、収入が低くなってしまっている人に対して、しっかりとした住居をあてがうことが、公営住宅の存在意義のはずです。深刻な貧困化が進む日本においても、公営住宅は増えていくべきです。

日本の公営住宅は、質を無視したとしても、そもそも数が足りていないのです。本来であれば、まずは戸数の確保の議論が進むべきところですが、現実には、限られた戸数に対して、誰を入居させるかという話になってしまっています。

可処分所得(収入から税金などを引いた後に残るお金)に占める家賃の割合は、年収300万円以下の世帯では20%を超えてしまいます。さらに、低所得者であれば
あるほど、借家であることが多いのです。

一般化は難しいのですが、可処分所得に占める家賃の割合が20%を超える世帯に対しては、国土交通省による、1995年に行われた住宅宅地審議会において、それを家賃補助の基準にすべきという答申が行われています。

このように、ワーキング・プアの多くは、年収300万円以下であり、かつ、可処分所得に占める家賃の割合が20%を超えるという「ハウジング・プア」なのです。言うまでもありませんが、高齢者の多くも、この「ハウジング・プア」に含まれます。

高齢者の場合、本来であれば、介護予防サービスなどに支払われるべきお金が、家賃として徴収されてしまっているわけです。かといって、生活保護は条件的にも受けられなかったりします。これでは、要介護者も増えるし、要介護度も下がっていかないでしょう。

お金があっても、民営の住宅には入れない?明日は我が身の未来

民間の賃貸住宅における高齢者に対する入居制限は有名ですね。2006年の古いデータになってしまうのですが、そもそも、民間の賃貸住宅の約16%の家主が、外国人や高齢者に対する入居制限をしています。この中には、障害者や、一人親世帯の入居制限をしている家主もいます。

高齢者に限っても「単身の高齢者」(家主の8.4%が入居拒否)、「高齢者のみの世帯」(家主の7.1%が入居拒否)というのが現実です。要介護ともなれば、さらに入居が難しくなるのは想像に難くありません。そのくせ、空き家はどんどん増えているのです。

「自分は持ち家だから大丈夫」だと思っても、震災や熟年離婚などで、そこに住めなくなるケースは多数あります。こうした時に、最後の砦になるのが公営住宅なのです。高度成長期とは異なる理由で、今こそ、公営住宅の増設についての議論が開始されるべきでしょう。

※参考文献
・海老塚 良吉, 『英米独仏における社会住宅の供給組織の動向』, 都市住宅学 (23), 104-107, 1998-10
・松本 正富, 『階段室型公営住宅における住まい方の実態』, 福祉のまちづくり研究 16(3), A11-A20, 2014-11-15
・慶應義塾大学 山田篤裕研究会 労働・雇用分科会, 『生活困窮度軽減に向けた家賃補助政策の在り方』, 2015年11月
・国土交通省, 『地域に住まう/住宅に関する現状と課題』

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