閉じる

要介護度の改善があると、自治体にお金が流れる仕組み?ポイントは、そこじゃないよ!(ニュースを考える)

要介護度の改善があると、自治体にお金が流れる仕組み?ポイントは、そこじゃないよ!

もはや介護のための財源はない

現在、自己負担分を除いて、約10兆円かかっている介護のための費用(税金+介護保険料)は、2025年には、倍の約20兆円になると言われています。医療のための費用はもっと深刻で、現在、約40兆円かかっているものが、2025年には約60兆円になるそうです。介護と医療だけでも、30兆円もの追加費用が必要になるのです。

当然、少しでもこうした費用を抑えようと、様々な施策が打ち出されています。その多くは単純な改悪であり、これまで受けられていたサービスが受けられなくなったり、高額になったりしています。抜本的な改革がなければ、この流れは今後も続き、個人にかかる介護の負担は、どんどん増えていくのは間違いありません。

要介護度が上がると、介護の負担が高まります。そうなると、介護にかかる費用も上がり、国の財源も痛みます。本質的には、介護の必要性が低い、健康な高齢者が増えていくことが、誰にとってもハッピーなことなのです。しかし、ここには大きな落とし穴があります。

要介護度が下がると損をする人々がいる

誰にとっても得なことであれば、自然と、その方向に進みます。要介護度が下がると、要介護者もできることが増えて嬉しいでしょう。家族は、介護の負担が減って助かります。国も、介護にかかる税金が減らせるので、願ったり叶ったりです。

ここで、1人、取り残されているプレーヤーがいます。介護事業者です。介護事業者だけが、要介護度が下がると、売上が下がり、利益も下がり、従業員の給与も下がるという宿命を負っています。介護事業者は、要介護者の要介護度が下がると、損をするのです。

介護事業者の多くは善人です。ですからもちろん、損をするからという理由で、無理に、要介護度を高めるような活動はしません。しかし、その結果として、介護事業者がバタバタと倒産しているという現実は無視できません。以下、東京商工リサーチの記事(2016年1月13日)より、一部引用します。

介護報酬が2015年4月から9年ぶりに引き下げられたが、2015年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」の倒産は76件に達した。前年に比べて4割増になり、介護保険法が施行された2000年以降では過去最多になった。介護職員の深刻な人手不足という難題を抱えながら、業界には厳しい淘汰の波が押し寄せている。

いうまでもありませんが、介護事業者が儲からないと、新規参入がない中で倒産が増えていきます。そうなると、介護サービスが受けられない「介護の空白地域」が増えてしまいます。これは、介護サービスが必要ないから空白なのではなく、必要なのに空白という状況なので深刻な問題です。

要介護度の改善があると、自治体が得をする仕組みが検討されている

こうした状況にもかかわらず、国は、さらに介護事業者を痛めつけるような施策を検討しはじめています。要介護度が下がると、自治体が得をするように仕向けようとしているのです。以下、共同通信の記事(2016年9月16日)より、一部引用します。

厚生労働省は16日、高齢者の要介護度が改善した自治体を財政支援する仕組みを導入する方針を固めた。要介護度が悪化すると介護費用が膨らむため、増え続ける費用の抑制を図り、高齢になっても自立して生活してもらうのが狙い。(中略)介護保険は、市区町村ごとに運営。高齢者の健康維持に向けた自治体の取り組みが進めば財政負担が減り、地域住民の介護保険料が下がる可能性がある。

本来、公務員の賃金削減など、内部の無駄を絞るべき存在である自治体に対して、さらにお金を流そうというのです。そのお金の出所は、介護事業者の売上を減らすことで作るというのですから、おかしな話です。

もちろん、要介護者の要介護度が下がるのは良いことです。しかし、そのためのインセンティブ(意欲を引き出す仕組み)が必要なのは、介護事業者であって、自治体ではありません。介護事業者にとっても、要介護度を下げることが、売上につながるような仕組みがないと、本当に大変なことになります。

このまま行けば、自治体は、介護事業者に対して、さらに、要介護度を下げるような圧力をかけていきます。そうなると、介護事業者は、ますます儲からなくなります(特に在宅介護に関わるビジネスが厳しい)。すると、ただでさえ酷い介護職の待遇は、ますます悪くなります。介護職になりたいという人も減るでしょう。

日本の介護の行く末を決めるのは、介護職です。その介護職の待遇を下げるような改革によって、介護が良くなるはずはありません。ここの待遇を下げて、自治体にお金を流すようなことを、認めることはできません。なんとか、考え直してもらいたいです。

参考文献
・東京商工リサーチ, 『2015年「老人福祉・介護事業」の倒産状況』, 2016年1月13日
・共同通信, 『介護度改善の自治体支援』, 2016年9月16日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

介護に強い保険に見直しませんか?