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高学歴の看護師、1年目から年収500万円を超えるケースも?(ニュースを考える)

増加しつつある高学歴の看護師

医療の世界にも経済原理が働きはじめている

学歴と収入に相関性があることは、経済学的には常識です。厳密には、人的資本論(勉強をすることで生産性があがる)とシグナリング理論(学歴がその人の生産性が高いことを他者に伝える)の論争もあり、その原因となるところは明らかとは言えないのですが、それでも、学歴は収入と相関するという点については疑えません。

日本の医療・介護は、建前として、医療職・介護職の能力には差がないというところを前提にしています。だからこそ、国民は、関わる医療職・介護職がベテランでも新人でも、同じ医療・介護サービスを受ければ、同じ金額を支払うことになっているのです。

とはいえ、それは建前であることは、誰もが知っています。誰もが、ベテランのサービスを受けたいと考えています。データとしても、高学歴の看護師の数と、患者の死亡率には相関があるというものも存在しているそうです。

こうした背景と、そもそも医療職・介護職が足りないという現実によって、高学歴な医療職の年収が上昇してきている(1年目から年収500万円を超える高学歴看護師が増えている)という報告がありました(dot, 2016)。これから、何が起こっていくのでしょう。少し、考察してみます。

医療職も介護職も足りなくなる2025年問題

団塊の世代は、他の年代と比較しても、人口ボリュームが極端に多い層です(約700万人)。この団塊の世代が、後期高齢者(75歳以上)に到達するのが2025年であり、それにともなって発生する諸問題を特に「2025年問題」と言います。

後期高齢者は、医療にも介護にも多大な税金がかかります。歳をとれば、健康を害することが多くなるので、これは仕方のないことです。厚生労働省の試算では、医療に使われる財源は現在の約40兆円から約60兆円に、介護に使われる財源は現在の約10兆円から約20兆円になると考えられています。

介護と医療で、2025年までの追加予算が年間で約30兆円も必要になるのです。しかし、現実には、この財源確保は間に合わないとみられています(詳細は過去記事を参照ください)。

財源が足りないと、医療職も介護職も、待遇が悪化していきます。それと同時に、確保できる人材の数も減っていくでしょう。医療・介護ロボットによる合理化や、ITによる効率化によってカバーできるところもあるでしょうが、それが本当に2025年までに間に合うのかというと、厳しいところがあります。

一般人は医療や介護が受けにくくなる?

もっとも恐ろしいのは、こうした背景を受けて、国の医療保険や介護保険に頼らないサービスが生まれてくるということです。国の財源に頼っている限り、医療も介護も崩壊してしまうので、医療や介護が生き残りをかけて進む道は1つしかないのです。それは、お金持ち向けのサービスとして生き残るという道です。

国の医療保険や介護保険に頼らない場合、現在は1〜3割程度の自己負担が、いきなり10割(100%)負担となります。10割負担でもよいという人は、いわゆる富裕層です。さらに、富裕層であれば、通常よりもレベルの高いサービスも希望するでしょうから、10割を超えて、2倍でも3倍でも支払うという方向に向かっていきます。

そうなると、高学歴な医療職や介護職は、どんどん下げられる待遇を嫌って、こうした富裕層向けの医療・介護サービスに従事するようになるでしょう。一方で、通常の医療・介護サービスに従事する医療職や介護職の待遇は、人数が足りていないにもかかわらず、悪化していきます。

端的に言えば、この状態は、これまでは経済原理とは(比較的)無縁で入られた日本の医療や介護が、いよいよ経済原理の内側に入ってしまうということです。アメリカは、すでにこの状態にありますから、アメリカの後を追いかけている日本の近代としては、想定できる未来ということでもあります。

何が起こっていくのか

病院に行っても、介護を受けることになっても、通常の価格で得られるサービスは、極端に悪化することになります。この段階で、医療職や介護職を非難しても、どうにもなりません。医療職や介護職としては、同じ仕事であれば、より待遇のよい組織に所属していくのは当然のことだからです。

厳しい話ですが、もはやこれ以上、医療職や介護職に負担を押し付け、犠牲を強いることは期待できないということでもあります。経済原理の中では、ニーズのあるサービスに従事している人々の待遇は「神の見えざる手」によって、それなりのレベルになっていくということです。

特に高度な医療は、高額化してきています。ガンの特効薬も非常に高価であり、日本の医療崩壊を早めると懸念されています。

保険外となる10割の自己負担に耐えられる人の数は少ないと考えると間違います。そもそも保険外であれば、日本人であろうと外国人であろうと関係がなくなるので、アジアの富裕層が、高度な日本の医療を求めて、ドッと日本にやってくることになるからです。そして、アジアの富裕層の数は増え続けています。

※参考文献
・dot., 『1年目で年収500万円超え “高学歴看護師”急増のワケ』, 2016年5月16日
・荒井 一博, 『学歴社会の法則』, 光文社新書(2007年)

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