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後見人の設定に注意;弁護士や行政書士が不正を働くことも(ニュースを考える)

後見人の設定に注意

認知症の要介護者には、後見人の検討が必要

認知症によって、要介護者が、自分で貯金や不動産といった資産管理をするのが困難になることがあります。それほど状態は悪くないように思えても、詐欺師たちは、認知能力の低下した高齢者をターゲットにしてきます(過去記事『高齢者を狙う詐欺師たちが知っている、3つの心理学的なテクニック(注意)』も参照ください)。

そこで、安全のために考えたいのが、後見人(事実上の保護者)の設定です(過去記事『要介護者の認知能力が低下;後見制度の活用を検討する』も参照ください)。後見人には、法律で定められた欠格事由(未成年者や破産者など)にがなければ、誰でもなることができます。とはいえ、実際には、親族か、弁護士や司法書士といった専門職が選ばれることが多いです。

意外かもしれませんが、この後見人としては、親族以外の専門家を選んだほうがよい場合もあります。それは、特に関係する親族が多く、遺産となる資産が多い場合などに、親族の誰か1人を後見人として設定してしまうと、遺産をめぐって、他の親族にとって不利な資産管理がなされてしまう可能性もあるからです。

また、手続きなども素人には分かりにくいことも多いため、後見人として、専門職である弁護士や司法書士を選ぶケースも増えてきています。しかし、ここには大きな落とし穴があることがわかってきました。

専門職だからというだけでは、信頼できない時代になっている

あろうことか、弁護士や司法書士といった専門職が、後見人として管理を任されている財産を着服するという事件も増えているのです。以下、共同通信の報道(2016年4月13日)より、一部引用します。

認知症などで判断能力が十分でない人の財産管理を行う成年後見制度で、後見人を務めた弁護士や司法書士ら「専門職」による財産の着服といった不正が、昨年1年間に37件(被害総額約1億1千万円)確認され、件数としては過去最悪だったことが13日、最高裁の調査で分かった。後見人全体の不正件数は、2010年の調査開始以降初めて前年を下回った。

まず、後見人全体としてみた場合、不正件数は前年から減っているというのは、嬉しいニュースです。しかし、これに対して、弁護士や司法書士といった専門職による不正は過去最高になってきているのは、非常に残念です。

注意したいのは、被害金額の平均が300万円程度だという事実です。着服された側からすれば、300万円というのは高額です。しかし、弁護士や司法書士といったエリートが、専門職としての自分の資格を失うリスクを負ってまで働いた不正金額としては、非常に小さいと感じないでしょうか。

こうした不正を行えば、弁護士も司法書士も、資格を剥奪されます。不正によって取得した300万円よりも、誠実に専門職として働いたほうが、もっと大きなお金を稼ぐことができるはずなのです。

実は、弁護士や司法書士の世界にも二極化が起こっている

実はもはや、弁護士や司法書士といった職種にあるというだけでは、高収入かどうかはわからない状況が生まれています。簡単に言えば、競争の激化によって、こうした専門職の世界にも二極化が起こっているのです。

ここで強調しておきたいのは、ほとんどの弁護士や司法書士は、不正など犯さない、まじめな善人であるということです。いかに後見人をめぐる不正が増えているとはいえ、こうしたケースは、全体からすれば、まだ珍しいものです。それでも、注意しないといけない状況になりつつあることも事実です。

以下、弁護士の場合と司法書士の場合のそれぞれについて、厳しい現状についてまとめてみます。

弁護士の場合

弁護士の平均年収は約1,200万円と、かなりの高収入です。しかし、中には年収300万円を切り、極端な例では、年収が100万円に満たない弁護士もいます。この背景には、弁護士間の厳しい競争があります。

実は、弁護士の数は増えています。それに対して、弁護士を必要とする案件は、せいぜい横ばいです。そうした中で、弁護士が大きく稼げるような大型案件の世界は、ほんとうに一部の、経験と実績に定評のある大手の事務所が牛耳っています。そして、こうした大手の事務所で働けるのは、エリート中のエリートだけです。

そこから漏れた弁護士は、自分で営業をして案件を獲得し、それを自分でこなさないとなりません。営業もしないといけないし、同時に、弁護士としての仕事もしなければならないため、1人でこなせる案件の数にも限界があります。かといって、大きく稼げる案件は、大手の事務所に取られてしまっているのです。

そしてなにより、弁護士は、年間60〜100万円もの登録料(弁護士会に所属するための費用)を支払い続けないとなりません。この支払いができなければ、弁護士を名乗ることはもちろん、弁護士としての業務を続けることができません。

年収が300万円を切るような弁護士にとって、登録料を支払い続けることは、非常に困難です。そして、なんらかの理由で、この登録料の支払いが難しくなった弁護士には、後見人となっている要介護者の財産に手をつける「理由」ができてしまいます。

行政書士の場合

司法書士は、弁護士ほどには一般には知られていない専門職ですが、平均年収は1,000万円を超えます。司法関係の複雑な書類仕事をこなすプロであり、今回とりあげた後見人以外にも、不動産登記をはじめ、会社の登記、法務アドバイザー、裁判業務、債務整理なども行います。

司法書士には、ミスが許されない書類仕事が多く、細部を見逃さない能力と、正確な法律知識が求められます。司法書士試験の合格率は、3%にも満たないもので、資格の世界でも、難関資格の1つとされています。

実は、優れた司法書士は、ほとんど営業をしません。司法書士を探している企業としては、ミスの許されない仕事をお願いするだけに、慎重に司法書士を選びます。この場合、企業は、信頼できる人脈からの「紹介」を頼って、優れた司法書士を見つけます。逆に、この「紹介」がなければ、仕事を受けてくれない司法書士も少なくありません。

これは、実績も名声もない司法書士や、過去に大きなミスをしてしまった司法書士のところには、まず、大きな仕事は入ってこないということでもあります。そうなると、司法書士の世界でも、大手企業からたくさんの仕事が入る人と、全く仕事が入ってこない人に二極化してしまいます。

さらに、司法書士の仕事は、弁護士の仕事とかぶることもあり、近年増えている弁護士と競合しています。あまり有名でない、評判も聞いたことのない司法書士にお願いするなら、同じ仕事なら、弁護士にお願いしようという人も多いのです。

こうして、難関資格を突破しているにも関わらず、儲からない司法書士も少なくありません。そうした司法書士の中には、残念なことに、不正を働く「理由」ができてしまうこともあるのでしょう。

弁護士や司法書士に後見人をお願いするときに注意したいこと

一番安全なのは、評判のよい、実績のある弁護士や司法書士にお願いすることです。こうした流れは、結果として、さらなる二極化を生み出してしまいます。そこがなんとも心苦しいのですが、大切な財産を守るためですから、これも仕方のないところです。

先に考えたとおり、弁護士や司法書士にとって、評判というのは命綱です。評判があればこそ、そうした弁護士や司法書士のところには、多くの仕事が入ってきます。つまり、評判のほうが、目先の300万円といったお金よりもずっと重要と思える専門職を選ぶ必要があるということです。

注意したいのは、こうした評判の良い弁護士や司法書士というのは、見た目からはなかなか判断できないということです。実績と実力のある弁護士や司法書士でも、薄汚れた事務所にいて、ボサボサの髪の毛をしていたりすることがあります(もちろん、清潔な弁護士や司法書士のほうが多いですが)。

これは、評判さえあれば、優れた弁護士や司法書士は、営業の必要がないからです。逆に、必要以上に外面を気にしており、しつこい営業トークをしてくるような弁護士や司法書士は、要注意だと思います。

どうしても後見人を選ぶことが恐いというときは、自治体が運営する「日常生活自立支援事業」も検討してみてください。これは、公的なサービスなので、安心感という意味では、後見人よりも優れている可能性があります。

※参考文献
・共同通信, 『成年後見、弁護士らの不正最悪 認知症患者から財産着服』, 2016年4月13日

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