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高齢者が、高齢者のサポートをする事業が必要になっている理由(ニュースを考える)

高齢者が高齢者のサポートをする

介護保険制度ではカバーできないところを元気な高齢者が担う

要介護1、2の要介護者は、今後、調理や買い物といった介護サービス(生活援助)が介護保険の枠内では受けられなくなる可能性が高いです(記事)。社会保障費の財源が枯渇してきており、とてもまかないきれないからです。

要介護1、2という状態は、日常生活をおくる上で介護が必要というレベルです。ですから、調理や買い物といったことを、自分一人で行うのは非常に厳しいのです。ここが、介護保険の適用外となると、約30万人の要介護者が困ることになります。

同時に、ここを削減すると、年間約1,100億円のインパクトがあります。もちろん「はい、そうですか」と、容認はできません。しかし、厳しいことですが、財源がないのですから、介護保険の枠外で生活援助サービスの利用を考えていかないとなりません。

長崎県諫早市「くらし応援隊」の事例

こうした背景がある中、生活援助サービスを1時間当たり1,500円から提供する企業が、長崎県に現れています。サービスの利用世帯は、現在400を超えているとのことです。以下、長崎新聞の記事(2016年2月16日)より、一部引用します。

福祉事業を展開する諫早市幸町の企業、思想念は元気な高齢者らが、体の不自由な高齢者のいる世帯などに出向き、身の回りの世話をする「くらし応援隊」の取り組みを進めている。隊員は現在、60~80代の約30人。3月からは報酬を引き上げて増員を図り、対象エリアも現在の諫早から将来は県内全域に広げたいという。国が介護保険の家事援助の在り方を見直す方針を固める中、民間の柔軟性を示したい考えだ。

同社によると、くらし応援隊は、2013年5月に始めた。健康で時間にゆとりのある高齢者らに隊員登録してもらい、体が弱ったり、1人暮らしの高齢者などからサポートの依頼があると、日時などを調整して隊員を派遣。隊員は、料理や掃除、買い物代行、植木の剪定(せんてい)、ペットの散歩、大工などさまざまな作業をこなす。植木の剪定などを除き、サービス料は原則1時間当たり1500円。利用世帯は400を超えている。

元気な高齢者にとっては、社会の役に立ちながら、仕事として報酬を得る機会になります。これに対して、介護保険による生活援助サービスが受けられなくなった高齢者にとっても、比較的安い利用料でサービスが受けられるので、大助かりです(もちろん、もっと安いほうが助かりますが)。この「くらし応援隊」の活動は、多くの福祉事業者が真似をすべきビジネスモデルと言えるのではないでしょうか。

もはや、日本の社会福祉の財源は、限界にきている

お気づきの読者も多いと思いますが、日本の社会福祉はどんどん悪化してきています。社会保険でカバーされる医療・介護サービスは減らされてきています。自己負担の割合も上がってきています。同時に、徴収される社会保険料や税金も、さらに上がっていきます。

この背景にあるのは、日本の社会福祉財源の枯渇です。もはや、これまでのように潤沢な社会福祉は維持できないのです。もちろん、公務員の総人件費抑制や、世界的にみても高すぎる地方議員の報酬の削減など、財源確保のためにやるべきことは(まだ)あります。

しかし、こうしたことを実施したとしても、そもそも国の借金(国債発行残高)はどんどん増え続けています。このままでは、生活保護なども打ち切りとなり、多くの失業者も出て、路頭に迷う高齢者が激増するという未来に至ってしまいます。

ギリギリの状態にあるのが今の日本であり、本当はもはや待ったなしなのです。日本の社会福祉が悪化していますが、まだまだ序の口です。これから、びっくりするような日本の社会福祉の「後退」がニュースになっていくでしょう。

実のところ、他に手がないということ

高齢者がどんどん増えていきます。そうした高齢者の中には、まだ元気で働ける人もいます。むしろ、働いているほうが元気(社会的な役割があったほうが元気)なので、こうした高齢者には仕事をしてもらったほうがよいのです。

同時に、増え続ける高齢者を支える介護のプロ(介護職)の数は、全く足りていません。この領域に、元気な高齢者に入ってきてもらうことは、理想的・・・というよりも、他に手がないというのが現実です。それでもなお、多くの人が、社会福祉から漏れてしまうでしょう。

世界トップレベルの医療、世界トップレベルの安全・衛生、世界トップレベルの栄養摂取が生み出したのは、世界トップレベルの長寿国、日本です。結果として、世界トップレベルの経済を持ってしても、社会福祉の財源が枯渇するという状況になっています。

マスコミや政治家は、宿命として、こうした事実に強く言及することができません。なぜなら、それをしてしまうと、一般の消費が抑制され、景気が後退し、ただでさえ足りない財源(税収)がさらに足りなくなってしまうからです。

※参考文献
・長崎新聞, 『高齢者が家事をサポート』, 2016年2月16日

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