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家族会への参加で得られる、一番大切なこと

家族会で得られる、一番大切なこと

介護に関する情報の海で溺れてしまわないように

介護に関する情報があふれかえる中、情報に翻弄されてしまう介護者(家族)も増えていると感じます。介護の負担を減らすため、少しでも要介護者が元気に暮らせるようになるためにと、真剣に調べれば調べるほどに、そうした情報の海に飲み込まれてしまう可能性も高まるのです。

介護は、突然はじまります。それまでは介護に感心などなかったという人が大半です。そこから短期間で介護について学ぼうとすると、介護の奥深さに圧倒され「自分には、とてもやれない」という具合に、自信を無くしてしまうこともあるでしょう。

しかし、誰にとっても難しく「正しくてお手軽な解答」など存在しないのが介護です。情報の海で迷ったり、悩んだりしたときは、ひとりで抱え込まないで、家族会に出席して介護の先輩の話を聞くことをおすすめします。介護の先輩は、先に、介護に関する情報の海を渡った人々だからです。

今回は、家族会にまだ参加できていない人や、他の先輩のケースについても知っておきたい人のために、2つの介護の実例を紹介します(個人が特定できないように、ここで紹介される内容には、あえて、真実とは違うものが含まれています)。

Aさんの事例;認知症となり、対処療法になり、拘束されて亡くなる

数年前に夫であるAさん(当時80代)を亡くした奥様からの話です。奥様は、Aさんが亡くなられた後に、ある家族会に出席しながら、今まさに介護に悩む介護者のために色々と動いています。

Aさんは生前、ある頃から、日課だった散歩や町内会のラジオ体操にいかなくなりました。そして、長年連れ添った奥様から見ても、活動的だったAさんらしくない引きこもりがちな生活になってきたのです。

奥様が、かかりつけの医師に相談したところ、精神科を紹介されました。そこでは認知症は疑われず、老人性うつと診断されました。診察のとき、Aさんは、医師となんら問題なく会話をしていました。このとき、医師からは、寝つきが良くなるようにと、睡眠導入剤と精神安定剤を処方されています。

しかし、Aさんは認知症でした。知らぬ間に認知症の状態は悪化していき、物とられ妄想(誰かに自分の物が盗まれているという妄想)が目立ちはじめます。温和だったAさんは、それから、奥様と口論になって興奮し、大声を出すことが増えていきました。

この状態になって、やっと、かかりつけ医から認知症専門医を紹介されました。アルツハイマー型認知症と診断され、認知症の治療薬が処方されました。専門医から介護保険の申請をすすめられ、要介護2と認定されます。

しかし、デイサービスは数回行ったきりで拒否があり、ケアマネも帰宅願望があるから難しいと相談がとどこおり、介護サービスは(ほとんど)何も使わない生活となってしまったのです。

そこから2年の間に、認知症治療薬も種類が変わり、量も増えました。Aさん自身は通院への拒否が強く、奥様がかわりに通院して医師に症状を伝えることの繰り返しでした。それでも興奮がおさまらないAさんに対しては、精神安定剤や鎮静作用のある薬を処方するという対処療法が繰り返されました。

最終的に、Aさんは薬を飲むことはもちろん、水分も取れないほどの状態になり、脱水症状で入院となってしまいます。そして、都心から車で2時間ほど離れた療養型の病院に転院し、拘束され、半年後に肺炎が原因で亡くなっています。

Aさんの奥様は、家族会では「他にやり方があったのかもしれない」「医師やケアマネに不満を表明すべきだった」と、後悔の気持ちを表現しています。

Bさんの事例;認知症になり、対処療法になるも、医師やケアマネを切り替える

10年も前から、夫であるBさん(現在80代)の介護をしている奥様からの話です。10年前に、認知症と診断されたときは、本当に戸惑ったそうです。そこから現在まで、基本的に奥様一人で、Bさんの介護をしています。

こちらも温和だったBさんは、物忘れが増え、しばしば奥様との口論になり、興奮して暴力を振るうような状態になりました。この頃に、かかりつけ医から認知症の専門医を紹介されました。そこで認知症と診断され、認知症治療薬を処方されはじめます。

Aさんと同じように要介護2の認定を受けましたが、この初期のころは、介護サービスの利用はやはり拒否されました。はじめにBさんを担当したケアマネからも嫌煙され、対症療法の薬も増えていきました。そしてBさんも、目に見えて衰弱していきました。

ここまでは、AさんとBさんはそっくりです。しかし、ここからBさんの奥様は、Aさんの奥様とは異なる行動に出ます。まず、Bさんを担当してくれていた認知症専門医を離れます。家族会から情報を仕入れ、驚くほど自宅の近くにあった精神科の病院へと通院を切り替えました。

新たに担当してくれることになった医師と相談し、リスクを理解した上で、認知症の薬や、精神安定剤などを一切やめました。さらに、認知症の要介護者対応に対して評判のよいケアマネを見つけ、ケアマネを切り替えました。そこから、介護サービスの利用が始まりました。

Bさんは、いまでは数分前にした話も忘れてしまうような認知状態ではあります。言っていることは支離滅裂で、奥様にも、ほとんど理解できません。しかし、興奮して暴力を振るうようなことはなくなり、生活はとても穏やかな状態です。

衰弱していたころからは考えられないことですが、今のBさんは、30分程度ならば、1人で散歩へ行って帰ってこられるようになりました。そして、失敗していまうこともありますが、排泄も入浴も食事も、基本的にBさん1人で出来ています。

Bさんの奥様は「色々と後悔することもあるし、今の状態も決して楽ではないけれど、それなりに満足」と言います。いまでは、Bさんの奥様は複数の家族会に出席しながら、多くの介護者の相談にのっています。

ある介護のプロによる考察;Aさんの奥様とBさんの奥様の違い

AさんとBさんの事例は、途中まではとてもよく似ていました。しかし、結果が違っています。もちろん、いくら外から見て似ているからと言って、厳密には、なぜ結果が違ったのかということはわかりません。それに、AさんとBさんそれぞれのケースの、どちらがよいのか、一概には言えません。

とはいえ、それぞれの奥様には、異なる点がありました。以下の考察は、この2つのケースに長期で関わっている、ある介護のプロによるものです。KAIGO LAB は、この考察を「正しい介護のありかた」と言うつもりはありません。ただ、ここから何かを学べるかもしれないとは考えています。

Bさんの奥様は、Aさんの奥様よりもずっと;

1. 家族会や地域包括支援センター、自治体窓口など、相談を多方面にしている
2. 情報を集めるときは、その情報に対する反論やデメリットまで集めている
3. 医師やケアマネなど意見に迎合することなく、自分で考えて判断している
4. 考えるだけでなく、実際に医師や介護サービスのところに足を運んでいる
5. その上で、インターネットを活用している(KAIGO LAB もご存知とのこと)

これらは事実ですが、こうしたBさんの奥様の活動が、本当に、今のBさんの状態の原因となっているかは、断言できません。そこには運の要素もあると思われます。しつこいですが、その点だけは、注意してください。

家族会では、情報に対するときの態度を学ぶ必要がある

介護者(家族)は、とくに介護がはじまった頃は、完全に介護の素人です。ですから、医師やケアマネといった専門職は、介護を進める上で頼みの綱になります。しかしながら、認知症の介護のことは、専門職でもわからないことが多くあります、そもそも専門職の育成からして、ニーズに充分追いついていないのが現状です。

ですから、自分が素人だからといって、受動的に入ってくる情報を信じたり、専門職の言うがままになるのはよくありません。医療の世界は日進月歩であり、専門職であっても、わからないことや、間違うことも多くあるからです。

大事なのは、認知症の要介護者の介護をする場合、介護の方針を決めるのは介護者(家族)だということです。いかにベテランの専門職であっても、介護の方針についてアドバイスはできても、その結果に対して責任は負えないのです。

であれば、介護者は、自分で介護の方針を決めるために、多角的に情報を集める必要があるでしょう。専門職は、あくまでも、情報源の1つにすぎません。むしろ、家族会で聞ける「認知症介護の経験がある素人」からの情報のほうが、役に立つこともあります。

介護には「正しくてお手軽な解答」などありません。だからこそ、情報の海を乗り越えてきた介護の先輩から、話を聞くべきだと考えています。そこからは、情報そのものも得られます。しかしそれ以上に「情報に対するときの態度」が学べるところが、家族会では、特に重要なのです。

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

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