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在宅介護の地獄(遺棄危機型)からは、抜け出るのが難しい

在宅介護の地獄(遺棄危機型)

在宅介護の負担を決めるのは2つの要素しかない

在宅介護には、様々な形があります。しかし、その負担を決めるのは、基本的に2つの要素しかありません。ひとつは、介護に使えるリソース(時間が自由になる家族が多い、お金がある、介護の知識があるなど)です。もう一つは、要介護者の要介護度(要介護度は、介護にかかる負担で決まる)です。

この2つの要素を2つの軸として表現したモデルがあります(関根, 2007)。このモデルを、KAIGO LAB にて修正したものを以下に示します。原典が気になる場合は、最後に示した参考文献から原典を当たってください。
在宅介護の地獄(遺棄危機型)

在宅介護の4象限モデル;その中身について

A. 限界対応型;ギリギリだが対応できている

要介護度が高い要介護者の介護が求められている。ただ、介護に使えるリソースが多いため、なんとか対応できている状態にある。お金でなんとかしているケースもあるが、家族がそれぞれに役割を分散させ、介護の危機を克服している。要介護者を含めた家族の関係性が良好な場合は、介護へのモチベーションもあり、疲労も少ない可能性がある。とはいえ、家族の誰かに海外勤務などが必要になるといった少しの変化で、状況は悪化する。

B. 遺棄危機型;対応できず虐待に近い状態になる

要介護度が高い要介護者の介護が求められている。しかも、介護に使えるリソースも限られており、介護が実質的に破綻している。リソースが限られているため、家族の中に、介護の犠牲になっている人物がいる。特に、家族関係もよくない場合は、要介護者の積極的な遺棄(捨てて置き去りにすること)に至る可能性も高い。仮に家族関係に問題がなくとも、そもそもリソースが足りていないため、消極的な遺棄(しかたがなく、無視せざるをえない)が行われる。

C. ゆとり対応型;介護をしつつも楽観的になれる

要介護度が低く、介護がはじまっているものの、対応に余裕がある。さらに、介護に使えるリソースも多いため、将来についても楽観的になれる。家族関係がさほどよくないものであっても、お金でなんとかなる状態でもある。介護をきっかけとして、家族関係がより堅固なものになれば、介護へのモチベーションも得られ、疲労のようなものは感じられない。在宅介護では、一番、介護負担の少ないケースである。仮に要介護度が高まっても「A. 限界対応型」に移行するが、それでもなんとか対応できる可能性が高い。

D. 潜在的危機型;ギリギリだが対応できている

要介護度が低いが、介護に使えるリソースが少なく、すでに限界に近い状態にある。なんとかこなせているのは、しかし、要介護度が低いからにすぎない。将来的に、要介護度が高まると、一気に危険な状態になる。その不安とともにあるため、介護に対する精神的な余裕も危機的状況にある。場合によっては、要介護度が低いため、自分たちが危険な状態にあるという認識がないこともある。要介護者の転倒など、ちょっとしたことで「B. 遺棄危機型」に移行してしまう。家族構成員が多い場合、家族間のきずなが強まれば「C. ゆとり対応型」への移行もありえる。

遺棄危機型という介護地獄から抜け出るのは難しい

恐ろしいのは、いちど「B. 遺棄危機型」に入ってしまうと、そこから抜け出るのは困難という点です。事実上、要介護者は虐待の状態(消極的には無視される形での虐待)にあります。

この状態にあると、要介護者が自分の力で救助を求めることもできません。また、介護をする家族としても虐待の状態を知られたくないため、公的にも私的にも、周囲に助けを求めにくくなります。このとき、周囲に知られたくないという家族の心理には、それが違法(高齢者虐待防止法)というだけでなく、介護をうまくやれていない「恥」の意識も入ってきます。

結果として、家族も、要介護者も、地域社会から断絶し、この状態が長期化します。これが行き着くと、昨今のニュースに取り上げられるような、悲惨な事件につながってしまいます。

現代は、過去のように、家族構成員が多いというケースはあまりありません。少ない家族が、それぞれに仕事をしながら、介護を担っているというのが現状です。そうなると、この「B. 遺棄危機型」というのは、一般に知られている以上に多数あると考えたほうがよさそうです。

ここに対して、社会的なアプローチが必要であることはもちろん、学術的・理論的なアプローチの構築も急務です。法律でなんとかなる世界でないことは、介護をめぐる悲惨な事件の多発から、すでに明らかになっていることです。

※参考文献
・関根聴, 『高齢者介護をめぐる家族危機』, 紀要37, 19-33, 2007
 

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