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老後は一人暮らしがよい?少し意外な調査結果(ニュースを考える)

老後は一人暮らしがよい

調査結果からは「幸せな一人暮らし」が見える

ある医師が、1,000人以上の高齢者から集めた調査結果が話題になっています。ある意味で常識をくつがえす結果であり、それぞれに、親との関わり方を再考する必要があるかもしれません。以下、産経新聞の記事(2016年1月21日)から引用します。

「1人暮らしの高齢者も家族同居と同じぐらい満足度が高いのではないか」。診察の際のやりとりなどを通してこう感じていたという大阪府門真市の耳鼻咽喉科医院の辻川覚志医師(64)は平成25年、同市医師会の相談電話や日々の診療を通じて聞き取り調査を開始。27年までに60歳以上の約1千人に生活への満足度などを尋ねた。

その結果、独居の生活満足度の平均は73.5点。同居の68.3点を約5点も上回り、悩みは少なかった。子供の有無や男女による差はなかったという。家族と同居する人の満足度が低い理由について、辻川医師は「家族への対応に苦慮するため」と分析する。家族とうまくいかなかったり、コミュニケーションが取れなかったりすれば、生活の満足度は急激に下がる。

一方独居なら、体調が悪くても自分のペースで動けて家族に配慮する必要もない。ただし、満足度の高い1人暮らしの条件としては、(1)自由で勝手気ままに暮らせること(2)信頼できる同世代の友人や親類が2~3人いてたまに話ができること(3)住み慣れた土地に住んでいること-と辻川医師は指摘する。

多くの研究結果は「孤独」のネガティブな効果を伝えているが・・・

しかし、過去の多くの研究によれば「孤独」は、人間にとって最悪の状態の一つであり、健康にも重大な悪影響を持っていることがわかっています。そうなると、今回の医師による調査が示しているのは「一人暮らし」とは、必ずしも「孤独」を意味しないということなのでしょう。

もしかしたら、家族と同居しながらも、ほとんど無視されている人のほうが「一人暮らし」よりもずっと「孤独」なのかもしれません。若い家族に邪魔者扱いされるくらいなら、「一人暮らし」で、たまに友達と交流するくらいが丁度よいという可能性もあります。

実は「老後の暮らしを子どもに頼るつもりですか」という質問に対して「頼るつもり」と答える人の割合は、1950年には 59.1%と過半数だったものが、2000年には 10.8%にまで減少しているのです。高齢者自身が、子供世帯との同居を望んでいないという事実は、重く受け止めるべきでしょう。

介護のプロの世界では有名な話として「親を、子供の暮らす都会に呼び寄せての介護はうまくいかない」というものがあります。これは、今回の産経新聞による報道にもある「住み慣れた土地に住んでいる」という条件を壊し、また、本来は同居を望まないはずの高齢者を同居させるというあたりに、その原因がありそうです。

家族が息苦しいものにならないラインを見つけたい

「老後は、家族が面倒をみるべき」という「家族幻想」は、親の側からも、子供の側からも、なくなりつつあるのでしょう。他にも、昔ながらの家族的なものは、それが家族の構成員全員にとって息苦しいものになっていないか、検証が必要なのかもしれません。

日本の介護は、少しずつではありますが、家族責任から、社会責任へと重心を変えつつあります。血縁によらない、他人との支え合いを、それぞれが主体的に構築していくことが求められています。

こうした状況を悲しみ、古い価値観を懐かしがるのもよいですが、現実は、変化してきているということです。科学的にみたとき「孤独」はよくありません。しかし「孤独」をもたらすのは「一人暮らし」ではないし、「孤独」を癒すのは血縁者である家族とは限らないという視点は、今後ますます重要になってくると思われます。

※参考文献
・産経新聞, 『老後は「1人暮らし」が幸せ 家族同居より生活満足』, 2016年1月21日
・野尻雅美, 『高齢者の孤独死と満足死,「一人」と「ひとり」からの考察』, 日健医誌24(2), 2015年
・木脇奈智子, 新井康友, 『日本における家族パラダイムの変容と高齢者の孤立』, 藤女子大学人間生活学部紀要, 第52号, 平成27年
 

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