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介護サービスに関する家族の期待と、介護のプロが大事にしていることの「ズレ」について

介護サービス

介護サービス、上手に活用できていますか?

要介護者を抱える家族にとって、その要介護者が介護サービスを利用してくれるか否かは、とても重要なことです。サービス利用中であれば、家族は自分の用事を済ませたり、ほんの少しであっても、自分の時間をもつことが出来ます。

こうした介護サービスを活用することは、家族の負担軽減だけが目的ではありません。当然、介護を受ける要介護者にとっても、よいことがあるからこそ利用するわけです。

具体的には、不自由な身体機能をおぎなってもらうことで日常生活を充実したものにできたり、もう無理だと思っていた旅行に付き添ってくれたり、家族や自分では気づかない心身の問題を専門的な見地から見つけ出し、医療機関などにつないでくれたりもします。

家族にも要介護者にも有益なはずの介護サービスですが、これを上手に活用できていない家庭も少なくないと聞きます。今回は、この原因の中でもとくに、介護サービスに対する家族の期待と、介護のプロが大事にしていることの「ズレ」について考えてみたいと思います。

家族は、介護サービスを「要介護者の監視」のために活用しがちである

特に、介護がはじまって間もない要介護者や家族は、介護サービスに大きな「幻想」を抱いていることも少なくありません。「プロに任せているんだから安心」「医療体制や人員がしっかりしているから安全」というときの安心・安全は、少し危険なのです。

家族という立場からは、要介護者に怪我をさせたり、ご近所に迷惑をかけてはいけないからと考えて、出来るだけ介護の目が行き届くように介護サービスを盛り込みたいと考えるものです。日中、一人でいたら危ないかもしれないと感じるのも、当然かもしれません。

しかし、これがエスカレートすると、結局、毎日が介護サービス利用ということになります。極端なケースでは、24時間365日の「監視」がないと落ち着かないという心情になってしまう家族もあるようです。この場合は、いずれ「施設に入れるしかない」という、多くの要介護者が望まない結果に行き着くでしょう。

「転んだらどうするんですか!?」という不安があるのもわかります。ですが家でも、デイサービスでも、施設でも、転ぶときは転びます。それが生活することのリスクです。それが怖いなら、ひと昔前の介護のように、要介護者をしばりつけておくしかありません。

「徘徊して行方不明になったらどうするんですか!?」という不安も理解できます。もちろん、GPSなどの端末による「監視」も大事でしょうが、同時に、ご近所や地域の認知症サポーター、警察の方々などのネットワークづくりも大切です。

介護のプロは「自立支援」「本人主体」「地域支援」を大事にしている

介護のプロの世界では「自立支援」「本人主体」「地域支援」という理念が重要視されています。これは過去、要介護者の意思が無視され、選択の自由さえも与えられなかった時代があり、その反省から生まれたものです。

ですから、現代の介護のプロは、基本的に、要介護者が自分で出来ることは、できるだけ自分でやってもらうようなケアします。さらに、今はできないことでも(可能性があれば)リハビリなどを通して、できるようになるように応援します。そして、家族のことよりも、要介護者の意思を最も尊重するように教育されています。

要介護者が「毎日デイサービス行ってたら疲れちゃう」「ヘルパーさんに頻繁に家に上がって欲しくない」という意思を示した場合、介護のプロは、できるだけ、これが実現されるように動く人々なのです。

ここで、実際に介護サービスが減らされると、家族としては不安になります。このあたりの感情のギャップから、介護事業者のところにクレームを入れる家族も少なくありません。介護のプロからしたら、要介護者の希望どおりにしたつもりでも、家族からすれば「監視」が減らされて危険だと思えるのでしょう。

生きることは(ある程度の)リスクを受け入れること

生活にともなうリスクを、ある程度までは許容できなければ、要介護者をしばりつけておくしかなくなります。しかし、そうした状態は、人間として「生きている」と言えるものでしょうか。

ある程度までは、要介護者のことを信じて、リスクを許容するという態度も大事です。その上で、要介護者が幸せに暮らせるように、必要最低限の介護サービスを考えていく必要があります。

逆に、リスクを受け入れない介護を実現しようとした場合、その費用は膨大なものになるでしょう。介護保険を使う介護サービスは、要介護度別に保険適用になる点数の上限が決まっています。

それを越えると保険がきかない状態になるので、全額自費となり、経済的には大きな負担になります。日本の介護保険自体が、限られた枠内で、必要最低限の介護サービスを考えなければならないようになってるのです。

介護サービスを実際に利用するのは要介護者です

介護サービスを実際に利用するのは、家族ではなく、要介護者です。要介護者は、自分の「監視」を増やすような介護サービスを望むでしょうか。もちろん、そういう人もいるかもしれませんが、本質的に、人間が求めているのは「自由」なのだと思います。

介護のプロは、自分の思うように暮らしたいと願う要介護者の意思を大事にします。そもそも、要介護者が「yes」と言わなければ、いかなる介護サービスも活用できません。

もちろん、家族が助かるからという理由で、介護サービスを利用すること(レスパイト)も、時には大事です。家族の介護負担が大きくなりすぎて、家族の幸せが完全に失われてしまってはなりません。

しかし、介護サービスは、家族の負担軽減のため「だけ」に存在しているのではありません。本来は、要介護者が、少しでも自分らしく幸せな生活をおくるためにこそ介護サービスが存在しています。家族として介護に向き合うとき、この視点が抜け落ちることがあるので、注意したいところです。
 

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